第5話 基地
 〜三日前〜
ストーム隊への補給を終えた「クナシリ」は、戦火に巻き込まれていた。
「艦長、駄目です。御止し下さい。」
「うるさい!!この艦が沈むのを黙ってみていろというのか!?」
「無茶です!」
「勝手に決め付けるな!!これでもわしはかつてフォレストの上官だった男だぞ!並大抵の奴にわしの首は渡さん。」
「艦長!!」
「黙ってみていろ。ヒューストン・シイン、出るぞ。」
ヒューストン艦長は通信回線を閉じ、ザクUを出撃させた。
外に出るなり脚部のミサイルを放ち、目くらましにする。
「いやぁ!」
ヒートホークを抜き、近くのジムに斬りかかる。
ビームサーベルを構えていた右手を両断し、ボディを蹴る。
「遅いわ!」
倒れたまま左手でマシンガンを構えようとするが、コックピットにミサイルをぶちまけられるのが先だった。
次の敵を探そうとするヒューストン艦長の目の端に、穴だらけになったザクが倒れ込むのが見えた。
そのザクを破壊した奴を探すと、隊長機らしき陸戦型ガンダムがマシンガンを構えているのが見えた。
そのマシンガンが吠え、こちらがわに鉛弾をぶちまけてきた。
その弾を避け、こちらもマシンガンを撃つ。
壮絶な火薬の破裂音や凄まじい衝撃も、今は心地よく思える。
(MSで戦闘をするのは久しぶりだ。)
戦場の緊張感が堪らなく好きな自分が、そこにいる。
「ふん!」
間合いを詰めて、ヒートホークを構える。
相手もビームサーベルを抜く。
横でザクがビームサーベルに貫かれているのが分かった。
戦局は、極めて不利な状態だった。
「ぬぉぉぉ!!」
叫び、突っ込む。
横に斧を振るが、手応えはない。
更に斧を振り上げ、振り下ろす。
ガンダムがサーベルを振り、ヒートホークごと右腕を切り落とした。
「ぬう。」
後ろに後退し、ミサイルを放つ。
それらがこと如く避けられ、徐々に距離を詰められる。
「うおおお!!」
左肩を前につき出して突撃した。
ガンダムは無情にも屈み込んで、コックピットにサーベルを突き刺した。
「おおおぉぉ・・・。」
サーベルはバックパックをも貫き、ザクを爆発させた。
その後戦闘は圧倒的なまでの実力の差で連邦側が勝利し、戦艦「クナシリ」は沈んだ。
ヒューストン・シインは彼の船と共に戦場の露と消えた。

「ファイン、腰が引けてるぞ!そんなことで立派な兵士が勤まっていると思っていたら大間違いだ!!」
「すいません。」
ハリスたちは甲板で銃剣術を使った模擬戦闘訓練をやっていた。
「ほらほら!MSパイロットだといってもただMSを操縦していればいい訳ではない!!肉弾戦のプロフェッショナルが兵士なんだ!!」
一日の中で少佐が一番厳しくなる時間が、これでもあった。
「よし、そろそろ時間だ。全員即座に止め、整列!」
終了の声に兵士達が集合し、列を整え始めた。
「全員休止を取れ。もうすぐ基地に付く。各自、解散。」
その言葉と共に各々が甲板を後にする。
「おい、聞いたか?もうすぐ基地入りだってよ。」
カシスが嬉しそうに話し掛けてくる。
「そうだな。」
「所で、マッケイを知らないか?」
「知ってるよ。」
「へぇ、どこだよ?」
「格納庫だよ。」
「なんで?」
「来ればわかるよ。」
カシスを促し、ハリスはMS格納庫へと足を向けた。

格納庫には思ったとうりマッケイがいた。
「お〜い、マッケイ。」
「よっ、ハリス。カシスも一緒か。」
「よっ。」
「こんなとこで何してんだよ?」
「MSのシュミレーションでどっちが多く落とせるか勝負しようと思ったんだよ。」
そのマッケイの言葉にカシスが目を光らせた。
「俺も入れてくれ。」
「いいぜ。ただし、負けたからって吠え面かくなよ。」
「そりゃお前だろ。で?誰からいく?」
「こういう時はジャンケンだろ。」
「最初はグウ、ジャンケン、ホイ!」
「よっしゃあ!!」
ジャンケンによりマッケイが先手になった。
「相変わらずジャンケンは異様に強いな、あいつ。」
「そうなのか?」
「俺なんか何百回とやっても二桁台しか勝ったこと無いもん。」
ザクに乗り込むマッケイを見ながら二人は世間話に突入していった。
〜数分後〜
「全員回ったな?じゃ、誰が一番落としたか、勝負・・・。」
カシスが途中で言葉を止めたのは、「ちょっと待った!!」という声が下から聞こえたからだ。
「あんた達、そこで何してんの!!」
その声はメイアだった。
「なんだようるせえな。いいだろべつに、何したって。」
「よくないわよ!勝手にいじられたら、直すのが大変なんだから!ちょっとはこっちの事も考えて行動してよね!!」
「はいはい。じゃ、勝負の続きだ。」
「人の話しはちゃんと聞いてなさい!!」
いよいよマッケイとメイアの喧嘩が始まってしまった。
こうなると誰にも止められない。
「おいおい、二人とも、こんな事で喧嘩すんなよ。」
勇敢にもカシスが止めに入った。隊長、カシス軍曹が勇敢にもマッケイ曹長の救出に向ってくれました。
「うるさい!!」
何気にハモッタ二人の「うるさい」と同時にカシスの顎を二人の拳がクリ−ンヒット。
「がはぁっ・・・。」
カシスはそのまま床に倒れ伏してしまった。
隊長、カシス軍曹が戦闘不能です。いかがいたしましょうか? ふむ、カシス軍曹を救出せよ。 了解!
ハリスがカシスに駆け寄ると、艦が少し揺れた。
続いて「基地に着いた。全員、外に出ろ。」という少佐の連絡が無線機を通して聞こえてきた。
「基地に着いたようだな。」
「そうだな・・。にしても、本気で殴る事ねえじゃんかよ。」
カシスが頼み込むように呟くが、生憎当事者の二人はまだ言い争いを繰り広げている最中だった。
「いい加減にやめろ。マッケイ、さっき少佐から命令がでただろ。外に出るぞ。」
「ぐっ。そうだな。メイア、この続きは又後だ!!首洗って待ってろ!」
そういってマッケイは格納庫を後にする。それに続こうとしたハリスの耳に、「バカマッケイ・・。」というか細い声が聞こえた。
振り返ってみると、そこには赤い顔をしたメイアがいた。
その表情には、怒りではなく他の特別な感情が交ざっていることにハリスは気付いた。
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第6話 基地内にて