第8話 空色の流星
「なんだ!?」
フェインの視界に斜面を下ってくる漆黒のドムがこちらに向ってくるのが入った。
次々に飛んでくる砲弾を避けつつ、そのドムに近寄ろうと試みる。
突然目の前で爆発が起きた。
「なにぃ!?」
漆黒のドムがこちらにバズーカを向けているのが見える。
「なめた真似しやがって!!」
ビームライフルを向けて、移動しながら撃つ。
ドムはそれを巧みにかわし、機関砲を放ってきた。
何発か当り、ガンダムの頑強な装甲に傷をつける。
横でマシンガンを放っていたうるさいザクを片付け、ドムに急接近した。
サーベルを抜き、斬りかかる。
相手もヒート剣を抜いて、応戦する。
「あんた、強いな。」
回線を開き、ドムのパイロットに呼びかける。
「お前もな。名前は?私は・・・。」
「漆黒の嵐、フォレスト・ハスだろ?あんた、こっちでは有名なんだぜ。機体が目立つからな。ちなみに俺はフェイン・ストーンだ。」
「それはどうも。それより、変わった名前だな。」
「あんたもだろが!」
「ははは。そろそろ世間話は終わりにしようか。」
「おうよ!」
言い終わると同時にドムがサーベルをはじく。
「せっかちだな。だが、漆黒の嵐の首は俺が頂く!」
「やってみろ!!」
ガンダムが横にサーベルを振るが、軽々と避けられてしまった。
今度は縦に斬り裂くが、それも横ステップで回避された。
「速い!!」
今度は突き。それも避けられる。
「なんてこった。俺が一太刀どころか掠らせる事もできないなんて・・・。」
突然ビームが横切り、ドムに向っていった。
ビームの飛んできた方向を向くと、ガンキャノンが一機、ドムにライフルを向けている。
「シスか・・・。」
「大丈夫か?フェイン。」
「ああ。それより、気をつけろ。あいつ速いぞ。」
「分かった。行くぞ。」
「おお!」
一気にガンダムを突撃させる。
「来たか。」
それに応対するように、ドムを走らせる。
スピードに強弱をつけ、飛んでくる砲弾を避けつつガンダムに斬りかかる。
「当たらない!?そんなばかな!」
シスがコックピット内でうめく。
その間にもサーベルとヒート剣がぶつかり合い、火花を散らす。
「くっそぉ!」
ガンダムが押されていた。
「これがジオンのエースの力か。」
次第にドムのスピードについていけなくなってきた。
今では防ぐので精一杯だ。
「当たれぇ!」
ガンキャノンがライフルを撃ちながら、近づいてきた。
「邪魔だ。」
フォレスト少佐がバズーカの標準をガンキャノンに合せる。
「お前の相手は俺だろがぁぁ!!」
叫び、バルカンを掃射する。
そのことごとくが避けられるのが、余計に屈辱的だった。
「この部隊は良いのがそろっているな。」
バズーカの砲弾を避けながら反撃してくるガンキャノンを眺めながら、フォレスト少佐は満足げに呟いた。
ドムをガンキャノンに急接近させ、ヒ−ト剣で斬りかかる。
「まてぇ!」
ガンダムがライフルを構え、撃つ。
今のフェインには、冷静な判断ができなかった。だからドムが避けるとガンキャノンにビームが当たるという事も分からない。
ドムが横にステップして、ビームを避ける。そのままビームはガンキャノンの足に当たった。
「ぐわ!」
そのチャンスをフォレスト少佐が見逃す筈が無い。ガンキャノンのバックパックにバズーカの砲弾を浴びせ、爆発させる。
「なっ、シス!?」
親友の生はあっけなく終りを迎えた。
「もう一匹!」
ガンキャノンを破壊したそのままの勢いで、ドムが近づいてくる。
「しまった!」
フィリップは一瞬それに気付くのが遅れた。
急いで機体を後ろに下がらせるが間に合わない。
「ぐおっ!?」
機体が横に飛ばされたかと思うと、尻餅をついた。
そこに機関砲の弾丸が襲ってくる。
ドムの左腕でカチン、という音が鳴り、鉛弾が出なくなった。
「ちっ、弾切れか。」
その隙にフェインはガンダムを立たせ、ビームライフルを撃つ。
そのビームはドムの脇腹の装甲を溶かした。
「なめた真似を!」
今度はドムがバズーカを発射させ、近づいていく。
その弾を避けると、ライフルを捨ててビームサーベルを抜き、ヒート剣とぶつける。
ガンダムが後ろに後退し、ドムは弾の無いバズーカを切り離した。
「うおおおお!!」
一瞬の沈黙の後にガンダムを突撃させる。
「良い度胸だ!男はそうでなければ!!」
フォレスト少佐もコックピット内で吠え、ドムの大柄な機体を走らせた。

シューンのガンダムを破壊したハリスにいきなりジムコマンドが斬りかかってきた。
「シューンの仇!」
コックピットでは、そう叫んでいるのだが、厚い鉄の壁の御陰でハリスには聞こえない。
「ちぃっ。」
ザクを後ろに下がらせ、それを避ける。
そのままの勢いで突きを食らわそうとしたジムコマンドに、ヒートロッドが巻き付き、電流が流れる。
「うわぁぁぁぁ!!」
そのまま目の前で爆発した。
もうもうと立ち上る煙の中から空色のグフが姿を表した。
「ザクのパイロット、誰だ?」
グフのパイロット、マクロア大尉が接触回線を通してハリスに話し掛けてきた。
マクロア大尉は、ハリスの憧れのパイロットでもある。
「はっ、はいっ。俺・・いやいや、私はストーム部隊のハ、ハリス・クルンプです!」
がちがちに緊張し、呂律も回らない。
「そうか、フォレストの部隊の人間か。道理で巧い訳だ。良くやった。」
「あっ、ありがとうございます!」
「躾も良いようだしな。だが、そんなボロボロのザクでは戦えんだろう。戦線を離脱しろ。」
「了解しました!」
「じゃあな。」
「御武運を。」
回線を切ったグフが去っていく様を見詰めながら、ハリスは基地に向けてバーニアを吹かした。

MSハッチにザクを納めると、床へと足をつける。
そのままメイアに話し掛けた。
「よう。ザクの整備、いつ頃までかかるかな?」
「これだけぼろぼろなんだから、一週間ぐらいかかるかもしれないわ。」
「分かった。できるだけ早く直してくれ。」
「努力はするけど。」
「ありがとう。」
お礼を言ってハッチを出て行こうとしたハリスに、突然無線が喋り出した。
だが、ミノフスキー粒子の濃度が濃いのはここでも一緒で、何を言っているのかはまるで理解できない。
「・・・なんだ?」
不信に思ったハリスは管制室へと足を向けた。

「大佐。どうなされたのですか?」 ハリスは基地の管制室に入ると開口一番に欧州戦線の司令官、ホールド・サア大佐にそう尋ねた。
「君は、確か・・ストームの・・・。」
「ハリスです。先程無線に何か連絡が入ったのですが、聞き取れなかったため出向きました。」
「大変だ。ここに連邦の連中が侵入したんだ。先程の連絡はそのためだ。悪いのだが、君もネズミ退治に行ってくれ。人手が足りん。」
「分かりました。あの、武器は?」
「馬鹿者!普段から持ち歩いていろ!!」
「すいません、うっかりしておりました。なにぶん、MS戦から帰ってきたばかりでして。」
「言い訳はいい!武器庫でも、どこでも良いから武器を調達し、直ちに片づけろ!」
「はっ!」
ハリスは急いで管制室を出る。
すると、視界の隅に連邦の制服らしきものを着た男達が通り過ぎていったのが見えた。
「あっちか。」
ハリスはそちらに向って走り出した。
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第9話 敵軍壊滅