序章 一冊の本
人の作りし宇宙都市「スペース・コロニー」に人が移住する様に成ってから、既に半世紀。
人類の新天地に成る筈の「スペース・コロニー」は、希望に満ち溢れていた。しかし、希望が 絶望に変わる時には、皮肉にも宇宙と地球を二つ分けた戦争が起き、多くの命を飲み飛んでいった。
血で血を洗う戦争は、何時しか過激さを増し取り返しの付かない状態にまで発展した。

時に宇宙世紀0093年、この年の出来事は地球に住む人々に新たな恐怖と悲しみを 植え付ける年に成った・・・世に言う「シャアの反乱」で有る。彼の大質量隕石による 「地球寒冷化計画」も去る事ながら、人類の革新でも有る「ニュータイプ」が起し た戦争が地球に向けられた事に対する恐怖心の方が、日に日に強まって行った事は言 うまでも無い。彼が起した戦争は結果として何をもたらしたかが一目で解かる一冊の 本が発売されたのは、それから二年後の事で有る。

その本タイトルは「人類危機説」
内容は、ニュータイプは優れた人種で有るが、長き戦争に有っては道具でしかなく、 又彼らもそれに甘んじ使われ続けた。彼らが不満に気づいた時、二年前の惨劇を起し たで有る。このままでは、人類の敵に成るのは明白で有る。私は、この本を通じて全 ての人にニュータイプと何かを考える切っ掛けに成れば幸いで有る。 作 地球連邦 軍 中将 レンズ
この本は、地球内部ではそれなりに好評を呼んだ。しかし、宇宙の人々はニュータイ プを批判する事は我々を批判するのと同じ事だとして、出版社並びに作者に対し賠償 責任を取るよう通告して来たので有る。コレに対して、出版社側は即時回収を宣言 し、作者は軍内部の事なので非公式にいくらかの資金の提供と中将の発言権のはくだ つと遠方に飛ばす事で決着が付いた。この時、彼に対する人事移動が過ちで有る事に 誰一人気づく事は無かった・・・・

時に宇宙世紀0095年、地球連邦軍は軍備縮小を進めていた。宇宙政府との和解が 成立した事で、兵器の必要性が無くなったからだ。しかし、職業軍人にとって、この 行為は死活問題で有った。彼らは、部隊の解散命令を無視する形で各地の拠点で立て こもり抵抗していた。そんな中、ある人物がレンズ中将に面会を希望する手紙が届い た事から、この話しは始まる。
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第一章 手紙