序 十月一日
これを手に取ってくれたあなたに、私は感謝の気持ちを伝える。
では、これを読んでいただく前に、少々私の話をしておこう。その方が、読みやすいだろうから。
私は、十五年前、地球連邦軍の士官であった。今私が筆を下ろす今日の日付は、宇宙世紀0094の十月一日だから、十五年前はちょうどあの一年戦争があった年である。
宇宙世紀0078。私にとって、いや、人類にとって忘れる事のできない一年と言えるだろう。
私は、地球連邦軍の士官として一年戦争に参加した。今でこそ宙域戦の主力は何かと聞かれば、誰もがモビルスーツと答えようが、当時は戦艦と宇宙戦闘機が主な戦力だった。そう、あのルウム戦役を迎えるまでは……。
私は、これからこの「ルウム戦役」を書こうと思う。何か感動を伝えるような小説でもなければ、ラブ・ロマンスでもない。単に、私の十五年前の記憶を辿るだけだ。
書き始めるその前に、私がこれを書くのに十五年を要した事を述べておく。私にとって、あの一年を癒すのに、十五年の歳月が必要だったのだ。今日、やっとここに書く決心をつけた。
読む決心がついたのでしら、それではページをめくって、潔く読んでもらいたい。私も、書く決心をつけたのですから。
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第1話 一月三日