第1話 マイン
轟音が響き、左腕を破壊されたザクUが倒れる。
ザクUは足に装備されたミサイルポッドを相手に向けてミサイルを発射する。
ミサイルの飛んでいく先には陸戦型GMがいた。
「うわっ!」
陸戦型GMはそのうちの1発を左肩に被弾し、後ろに倒れこんだ。
ザクUが起き上がり、ザクマシンガンを構えた。
「くそっ、これでどうだ!」
陸戦型GMも右手のマシンガンをザクUの足元に向け、連射する。
ザクUは足を破壊されたことでバランスを崩し、またも倒れこむ。
その隙に陸戦型GMが起き上がり、ザクUの右腕と頭部を破壊した。
「これなら戦闘続行は不可能なはずだ・・・」
その陸戦型GMのパイロット、マイン・ゼクロスは額の汗を拭って味方機のいる方へ向かった。
廃墟となっている都市跡で連邦の部隊とジオンの部隊とが戦闘をしていた。
陸戦型GMの中に1機だけ陸戦型ガンダムが混じっている。
隊長機ということである。
その機体は普通の陸戦型ガンダムとは違い、配色が蒼と灰色をベースにしたカラーリングが施されている。
陸戦型ガンダムは士官用ザクUを撃破し、残りのザクUを撃破している。
「これで最後だな!」
部隊の中で、唯一無傷でいる陸戦型GMのパイロット、ゼラ・フェイクがザクUのコクピットにサーベルを突き刺して言った。
他の陸戦型GMはザクマシンガンやショルダーアタックなどを受け、装甲に傷がついている。
「よし、帰還するぞ。」
陸戦型ガンダムのパイロット、ザスト・ウェイン中尉が命令を出す。
味方機の陸戦型GMがザストの機体のまわりに集まり、ザストとともに帰路につく。
この部隊は今のところ、前線基地で進撃してくるジオン軍と交戦し、侵攻を防ぐ任務についている。
部隊が帰還し、全員がMSから降りてくる。
マインも陸戦型GMを降りた。
「ひどくやられたな、マイン。」
マインの機体を見上げながらマインに話しかけているのはメカニックチーフのディン・ケールである。
「悪ぃ。」
「ま、でも、オレはおまえのそういうとこ好きだぜ?」
「修理、頼むよ。」
マインはそう言って格納庫を後にする。
「おい、マイン!おまえ何機撃破した?」
声をかけてきたのは親友のヴァン・セイズである。
「3機。」
「3機か、やっぱりゼラには勝てねぇか・・」
マインがこの部隊に配属されると同時にヴァンも同じ部隊に配属され、歳も近く、気が合い、今では親友である。
ただ一つ違う事は、マインは自分の意思で連邦に入ったわけではない、ということである。
マインの住んでいた都市は、戦争で廃墟と化してしまった。
都市の住民の多くは戦闘に巻き込まれ、死んでしまった。
マインはその時にザストに助けられ、その瞬間をジオンに見られてしまい、連邦に入ったのだった。
「勝ってどうすんだよ・・・」
「威張れるだろ?」
「単純だなぁ。」
「マインは勝ちたくないのか?」
「オレは何人も人を殺してまで英雄にはなりたくないからな。」
「おまえとこの話題で話してると暗くなるな。」
しばらくの間2人とも黙ったまま司令室に向かう。
2人はザスト隊長に呼び出されている。
司令室のドアが2人の前で開き、2人、部隊の仲間がでてくる。
片方はゼラで、満足げな表情であった。
もう片方はちょっと長めのヘアースタイルの青年である。
マインとヴァンは出てくる人がいなくなってから入った。
「2人とも遅いぞ。」
「すいません。」
声をそろえてザスト隊長の言葉に謝る。
「撃破数はマインが3、ヴァンが2機・・・大きな被弾はマインが左腕破損か。」
ザスト隊長は報告書を見ながら言った。
「マイン、ヴァン、2人とも昇格だ。マインは曹長、ヴァンは軍曹だ。」
「昇格・・ですか?」
マインが聞き直す。
「ああ。伝えるのはそれだけだ。もういいぞ。」
「ハッ。」
2人とも部屋の外に出る。
「やったぁ!軍曹だぜ!?」 「そういや、さっきの2人ってゼラとエインだろ?」
うかれているヴァンにマインが言う。
「え?ああ、そういえば確かに。エインはマインと同じ軍曹だったから、曹長かな?ゼラは少尉に昇格ってとこかな?」
ヴァンにやけながらが推測する。
「その通り。」
背後から声がし、2人が振り返ると隊長がいた。
「隊長!?」
「マイン、修理も大変なんだ、気をつけろよ?」
「はい。」
隊長がその場から去るのを見届け、2人は自分の部屋の方に向かった。
「でもさ、なんでオマエのが階級が上なんだよ?」
「オレに聞くなよ!」
「う〜ん・・・」
「マイン、昇格だって?」
オペレーターのルーン・フェアが急に割り込んできた。
長めの髪に白い肌の結構な美人である。
「え?あ、ああ。」
「ヴァンは?」
ルーンがヴァンに振った。
「オレぁ軍曹で、マインは曹長。なんでマインのがいつも上なんだろ?」
前半は諦め半分な声で、後半は本気で悩んでいる感じだった。
「マインのが腕がいいからでしょ?」
クスクスと笑うルーン。
「やっぱりぃ?」
反論できないヴァン。
「で、ルーンはなんか用なのか?」
横で見ていたマインが言う。
「別に、時間が空いちゃってね。」
「要するにヒマなんだ。」
ルーンの答えにヴァンが返す。
「そういうコト。」
しばらく会話した後、ルーンは戻って行った。
マインとヴァンの2人の部屋は隣同士で、ほとんど行動を共にしている。
「おまえも本気で戦えば結構強いと思うんだけどなぁ。」
「本気で・・・ねぇ・・・」
ため息混じりに応えるマイン。
「まぁ、無理にとは言わないよ。そこがおまえらしいんだからな。」
マインに微笑むヴァン。
「そこんとこはだれだって1度は悩むさ。」
ヴァンが付け足した。
マインはコクピットや、バックパックを狙わずに戦闘続行を不可能にしてパイロットを殺さずに撃破としている。
そこが、他のパイロットたちと違っている。
勿論、そこに文句を言う者もいる。
ゼラもその一人である。
そのため、その話になると言い争いに発展してしまうため、マインとゼラがいるときは全員が気を使い、その話題にならないようにしていた。
普段は良いのだが・・・
「敵部隊確認!!MS隊は出撃してください!!」
突然ルーンの声が基地内に響き渡る。
「出撃か。」
マインは呟き、ヴァンとともに格納庫に向かった。
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第2話 都市内戦闘