第10話 人の心
「敵機接近!MS隊出撃!」
警報とともにMSが出撃していく。
マインがノーマルスーツを着ながら格納庫に入ってくる。
「ガンダムは!?」
「もう使えるぜ!RX−79[C]ガンダム改、性能も上げてある。」
ディンが応える。
この部隊のMSはジムコマンド宇宙戦使用である。
その中に、ガンダム改がある。
陸戦型ガンダムの面影はあるが、ショルダーアーマーが鋭くなり、スマートになっている。
足も細くなり、ふくらはぎの下辺りにバーニアが増設されている。
バックパックは、陸戦型ガンダムのものではなく、ジムコマンドのものである。
しかし、ジムコマンドのものに改良が加えられ、全体的に性能が上がっている。
マインとヴァンの2人はガンダム改に乗り、出撃する。
陸戦型ガンダムを宇宙用に改造したとは言え性能は1・5倍ぐらい高かった。
「これが宇宙・・・」
ヴァンが呟く。
マインの部隊は宇宙での戦闘に慣れていないため、少し遅れて出撃した。
友軍が抑えている間に慣らすのである。
宇宙での戦闘は全方向に注意しなければならない。
ただ、全方向に動けるため回避しやすい。
しかし、相手も同じなので地上で戦うよりも難しいことに代わりはない。
敵はザクUとリック・ドムの部隊である。
マインが戦場に向かう。
急にマインに対して下の方からザクUが現れる。
「わっ!?」
そのザクUの頭上からの攻撃を受けて爆発する。
その方向を見ると、ジムコマンドがいる。
「大丈夫か!?」
「あ、ああ、すまない。」
「気を抜くと死ぬぞ。隊長だろ?」
「あんたは・・・?オレはマイン・ゼクロス。」
「オレはおまえと同じで隊長だ。名前はグィゼル・フェイク。」
「フェイク・・・!?ゼラと・・・同じ・・・」
マインは気付いた。
ゼラと同じ名字である。
「ゼラは弟だが・・・?」
「後で、話があるんだ。」
マインは後でゼラのことを話そうと思った。
「わかった・・後でな!」
グィゼルが離れていく。
マインがザクUに向けてビームライフルを撃つ。
そのザクUはマインに気付いていなかったため、そのビームの直撃を受けて爆発した。
漆黒の闇の中にMSの爆発や、ビームの閃光が走る。
マインはリック・ドムのジャイアントバズをかわしながらライフルの照準を合わせる。
「マイン!横っ!」
マインがその声に反応して横を向く。
その方向にはジャイアントバズを構えているリック・ドムがいた。
マインが上方向に飛び上がる。
2機のリック・ドムの攻撃を避ける。
片方のリック・ドムにビームが命中し、爆発する。
ヴァンである。
マインも同時に、もう片方のリック・ドムを撃破した。
「宇宙戦闘って、結構キツイな・・・」
ヴァンが呟く。
「慣れてないからな。」
マインが返す。
マインがブーストをかけてリック・ドムに接近する。
サーベルを取り出し、リック・ドムの背後から斬りつける。
リック・ドムは直前で気付いたものの、防御も回避もできずに爆発した。
ほとんどがグィゼルの部隊の攻撃で敵は全滅した。
マイン達も戦ったが、慣れていないために普段の力が出なかった。
友軍が帰艦していく。
マイン達も帰艦した。

「話ってなんだ?」
グィゼルがMSから降りたマインに訊いてくる。
「ゼラのことなんだけど・・・」
「ゼラがどうしたんだ?」
「オレが隊長になる前の部隊にいたんだ。」
グィゼルは何も言わずに聞いている。
「前の隊長、ザスト・ウェイン中尉を殺して、ジオンに入ったんだ。」
「何・・・!?」
グィゼルが驚いた。
マインの説明に動揺するグィセル。
グィゼルは、ゼラは自信過剰なところがあったと言った。
ゼラには苦労していたようだ。
軍に入ってから別の部隊に配属され、半分忘れていたらしい。
「ゼラか・・・あいつは何を考えているのかわからない・・・危険だ。」
「危険って・・・兄弟だろ?なんかおかしくないか?」
「血は繋がってない。」
グィゼルの両親がゼラを養子にして育てたそうだ。
今度はマインが動揺した。
ゼラの性格は、ある時から変わったらしい。
両親が養子だと告白し、1人暮らしをし始めてからだとグィゼルは言う。
詳しいことはグィゼルにも解らないという。
人の心とは難しいものである。
自分と他人では考えの違いはある。
それは誰でもわかる。
しかし、人の心が変わると言うのは、解らないものである。
ある意味、変わった後の方が本人なのかもしれない。
ひっかかっていた部分が外れ、自分の感情が現れる。
思っていたことが全て出てくる。
しかし、それの全てが良いことばかりではない。
他人を傷つけたり、自分の欲望のままに動くこともあるだろう。
それを防ぐために制御している。
本能以外の理性がある。
生きてゆくには人と関わらなければならない。
人と付き合うには、自分のことだけじゃなく、相手のことも考えなければいけない。
マインは改めてそのこと実感した。
「じゃあ、戦場で出会ったら・・・?」
「撃つ。」
グィゼルは迷わずにはっきりと言った。
「グィゼルは何のために戦っているんだ?」
「オレか?オレは・・・・世界を守るため・・・かな?」
グィゼルはMSデッキを出る途中にそう答え、出て行った。
「ゼラはどう考えているんだろう・・・?」
マインが呟き、部屋に向かう。
ルーンが反対側から流れてくる。
「ルーン、どうかした?」
マインが訊く。
「オペレーター、今度から私がやるの。」
「へぇ、やることできたんだ。」
「ええ、もう見てるだけじゃないわ。」
笑いながら応える。

「ゼラ、どうした?部屋で休まんのか?」
グレスがMSデッキに来る。
ゼラはMSを眺めているだけで応えない。
「ゼラ?聞いているのか?」
「聞いてる。少し考え事をね・・・」
ゼラは一言応える。
グレスはゼラが何を考えているのか気になった。
「何を考えている?」
グレスが訊く。
「前の部隊のことをね・・・」
「未練でもあるのか?」
「いや、憎い奴がいてね・・・」
憎いとは口で言いつつも表情は不敵な笑みを浮かべている。
グレスはこれ以上訊かない事にした。
訊けば訊くほど解らなくなってくる。
ゼラが憎む奴とは一体どんな人物なのかグレスは気になった。
それは、マインなのだが、グレスは彼を知らない。
パイロットを殺せない奴とカタスとブライをあっという間に撃破した奴が同一人物で、ゼラが憎い相手なのだが、グレスが知るはずもない。
何故ゼラが憎むのか、グレスはそこが気になった。
「しばらくしたら出撃するぞ。近くに戦艦がある。それを墜とす。」
「了解。」
グレスがMSデッキから出て行く。
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第11話 接触