第12話 ゼラ
独房のドアが開く。
「誰っ!?」
ルーンがドアの方を見る。
ゼラが入ってきている。
「ゼラ!?」
座っていたルーンが立ち上がる。
ドアを閉めるゼラ。
喋ろうと口を開くルーン。
しかし、それよりさきにゼラが喋りだした。
「何故ここに連れてきたか、知りたいだろう?」
その言葉に一瞬戸惑うルーン。
「おまえが死んだらマインは悲しむだろうな・・・」
「えっ・・・!?」
ゼラが言う言葉に固まるルーン。
「教えてやるよ、全て。」
ルーンは、はっきりと思った。
このままだと殺される。
「オレの目的はマインを殺すことだ。」
ルーンが気付かれないように隙を伺いながら訊く。
「どういうこと!?」
「あいつの考え方はオレの生き方の否定だ。」
マインの考え方は例え敵でも人間だ、というものである。
ゼラは今まで、相手を殺すことで生きてきた、と言う。
それは、戦争でパイロットになってからだが、敵は確実に仕留めてきた。
殺さねば殺されるからである。
時には、味方ごと敵を撃破したりもした。
味方のMSが全滅しても1人で戦い抜いて生き延びた。
しかし、マインはその戦場で相手を殺さずに戦闘不能にしていた。
その甘さはゼラの生き方を否定している、と言っていた。
「オレはマインを殺す。そのまわりにいる同じ考えのやつもだ!」
ゼラが凄みをきかせて叫ぶ。
しかし、その瞬間に少し隙ができた。
隙を伺っていたルーンはその隙を見逃さなかった。
背中でゼラに体当たりをし、壁に追いやる。
そして、ドアを開けて外にでる。
そのままMSデッキに移動する。
途中でジオンのパイロットとすれ違い、銃で狙ってくるが、なんとか避けながらMSデッキに入る。
MSデッキに入ると、ゼラの機体に飛び乗る。
そして、そのまま壁を突き破り、外にでた。
「はぁ・・・はぁ・・・戦艦から離れないと・・・」
戦艦から離れ、射撃されないようにした。
MSが出撃してくる。
「どうしよう・・・戦闘なんかできないのに・・・」
ルーンが周りを見回す。

「マイン!MSの反応がある。」
ザスィルの声に反応してレーダーを覗き込むマイン。
「1機、離れたのがある?・・その方向にMSが向かっている・・・」
マインが呟く。
「出撃して確認してくれ。」
「了解!」
マインがMSデッキに向かう。
「もしかしたらルーンかもしれない・・・」
そう思いながらガンダム改に乗り込み、出撃する。
他のパイロットも後から出撃してくる。
マインがブーストをかけてその方向に向かう。

ゼラはMSを奪われたため、リック・ドムで出撃した。
「ちっ・・・」
ゼラがブーストをかける。
ルーンはライフルを乱射しながら離れていく。
「エネルギーが・・・」
ライフルのエネルギーが切れ、慌てるルーン。
目の前にゼラの機体が現れる。
ヒート剣をコクピットに突き刺そうとルーンの機体を掴み、ヒート剣の先をコクピットに向ける。
ルーンが目をつぶる。
「死ね。」
ゼラが呟く。
そこにビームが飛んできてゼラが避ける。
「何!?」
ゼラが呻く。
「当たらない!?」
マインである。
マインが急接近し、ゼラと斬り合い、弾く。
そして、ルーンに通信する。
「誰だ?」
「マイン!」
「ルーンか!識別信号を変えろ!撃たれるぞ!」
マインが識別信号を変えさせる。
マインが戦艦の方向を教え、ルーンがその方向に向かう。
「マイン!」
ゼラが斬りかかる。
「ゼラかっ!」
マインが応戦する。
ヴァンとエインが近づいてくる。
3人で取り囲みゼラに攻撃をする。
3人はタイミングを少しずつずらし、ライフルを連射する。
ゼラがそれを巧みに避ける。
近づいてくるザクUやリック・ドムに注意しながらゼラを集中的に攻撃する。
「これだけの攻撃を全て避けるなんて・・!?」
ヴァンが呻く。
ゼラが機体を頭の方向にブーストし、3機の攻撃から逃れる。
そして、エインに接近する。
エインがそれに気付き、サーベルを取り出す。
ゼラがヒート剣で斬りつけ、それをエインが受ける。
そこにマインとヴァンがビームを放つ。
ゼラはそれを避ける。
何度攻撃をしても避けられてしまう。
「ははっ・・・その程度か・・!?」
ゼラがエインの機体を斬りつける。
ジムコマンドの左腕が肩から切断される。
なんとかボディへの直撃は回避した。
しかし、ゼラはすぐに攻撃してくる。
エインが機体をゼラの前から逃げようと急上昇をかけるが、ゼラがそれを見透かしたかのように左手のジャイアントバズを撃つ。
右足の膝間接に直撃し、爆発する。
衝撃がエインに襲い掛かる。
「・・・っ・・・!」
ヘルメットにひびが入る。
バランスを崩したエインにヒート剣が刺さる。
それは、コクピットを貫通していた。
刺し込んだヒート剣を横に振り、ジムコマンドを破壊する。
「エインっ!!」
ヴァンが飛び出し、サーベルでゼラに斬りかかる。
振り向きながらヒート剣でヴァンに攻撃するゼラ。
「ヴァンっ!」
マインが放ったビームはヒート剣を握る手を破壊した。
ヒート剣は爆風で折れ、使い物にならなくなった。
「くっ・・・」
ゼラがヴァンのサーベルを避ける。
マインの攻撃を読めなかったゼラは途惑った。
「バカな・・・マインの攻撃が読めなかった・・・!?」
それは、ゼラにとって予想外だった。
敵の動きが読めたゼラは動揺した。
「まさか・・・マイン・・・」
笑みが消え、ゼラの表情が引き締まる。
「覚醒する前に殺す!」
ゼラがヴァンを蹴飛ばし、マインに接近する。
マインは向かってくるゼラに異様な恐怖を感じた。
寒気が背筋を走る。
「なんだ・・・この寒気は!?」
冷や汗がにじんでくる。
寒気を振り払うかのように頭を左右に振り、ゼラを見る。
ライフルを向け、トリガーを引く。
しかし、今度は回避されてしまう。
ビームの間を回避しながら接近してくるゼラ。
ヴァンが撃つビームも避ける。
ゼラがマインの機体を蹴り、そこにジャイアントバズを撃つ。
マインがとっさにシールドで防ぐ。
ゼラがマインの機体の背後にまわり、ジャイアントバズを構える。
マインが頭部を中心に、逆上がりのように機体を動かす。
ゼラの攻撃がバックパックすれすれを通過する。
それを見たゼラがバズーカでマインを殴る。
マインの機体が一瞬バランスを失う。
そこにジャイアントバズを撃つ。
シールドを持ったヴァンがマインの前に出る。
ヴァンの機体のシールドでジャイアントバズを防ぐ。
「マインっ!大丈夫か!?」
「すまない、ヴァン!」
マインが体勢を立て直す。
息が上がり、肩で息をしているのが判る。
口の中が乾き、額には汗がにじんでいる。
グレスがその場にかけつける。
「ヴァン、撤退しよう。」
「それがいいな。勝てる見込みもないしな。」
息の上がったマインの言葉にヴァンが同意する。
マインとヴァンがブーストを全開にして戦闘宙域から離脱していく。
他の機体もマインの通信で撤退しはじめる。
ゼラが追おうとするが、グレスが止める。
「グレス!深追いはするな!その状態だろう!」
仕方なくゼラ達も撤退する。

マインとヴァンが戦艦に着艦する。
MSのコクピットから飛び出すマイン。
ヘルメットを投げ捨て、さっきの戦いの緊張感を捨て去るように大きく息を吐く。
「マイン!」
ルーンが近づいてくる。
「ルーン・・・悪い、何か飲み物ないか?」
「ちょっと待ってて。」
ルーンがMSデッキから出て行く。
「マイン!大丈夫か!?汗だくじゃん!」
ヴァンが駆け寄ってくる。
「なんとか・・・・」
そこにルーンが戻ってくる。
手には飲み物を持っている。
ルーンからそれを貰うと、それを飲み、汗を手で拭う。
「ふぅ・・・だいぶ・・落ち着いてきた・・・」
マインが立ち上がる。
「エインは?」
ルーンがエインがいないのに気付き、訊いてきた。
「ゼラに殺された・・・」
マインが少しうつむいて答える。
「そう・・・」
ルーンも少し暗くなった。
「あいつ・・・一体、何考えてんだ・・・!?」
ヴァンが呻く。
「それは・・・」
ルーンが、捕虜になっていた時にゼラから聞いたことを話し始めた。
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第13話 覚醒