第13話 覚醒
ゼラの目的の内容に、それを聞いていた者が凍りつく。
「なんだって・・・・」
マインが呟く。
「ってことは・・・最後にはゼラはマインと戦う気だな・・・」
ヴァンがマインを見る。
「マイン、勝てるか?」
「わからない。」
首を横に振るマイン。
それぞれが難しい表情で離れていく。
その場に残ったのはマイン、ヴァン、ルーンの3人であった。
マインは悪寒を感じた。
それは、さっきの戦闘で感じたのと同じような感覚だった。

「艦長、MSに関する書類はありますか?」
ゼラがブリッジに入ってきて艦長のゲイルに訊く。
「ああ、あるが・・・?」
そう言って、ゲイルが書類のコピーを取り出し、ゼラに渡した。
ゼラがそれを受け取り、ブリッジを出て行く。
MSデッキに向かう途中にその書類に目を通していく。
「・・・これは・・・」
そこにはMS−18と書かれたMSの初期案が載っていた。
「使えるな・・・」
ゼラがMSデッキに着き、メカニックチーフに話しかける。
その内容は、MS−18を造って欲しい、というものであった。
MS−18のEタイプは強襲用ケンプファーである。
これを元に、改良を加えて、新型を造るのである。
しばらく会話した後、メカニックチーフが少し考え、OKを出す。
そして、造り始める準備にかかった。
ゼラはMSデッキを出て行く。
「マイン・・・次はキサマを・・・」

「敵影接近!MS隊出撃!」
警報と共にルーンの声が艦内に響き渡り、MSが出撃していく。
マインはゼラの部隊でないことを願った。
今の自分では、勝てないと判断したからである。
リック・ドムでガンダム改のマインと互角以上に戦った。
運良く逃げ切れたものの、今の腕ではヴァンと共同で戦っても勝てる確立は半分以下である。
ヴァンもそう思っていた。

「MSが出てきた!油断するなよっ!」
そのMS隊の隊長のヴェルズ・カルネージ大尉が仲間に言う。
ヴェルズだけは、ゲルググに乗っている。
そのゲルググを中心に、多数のMSがマイン達に向かっていく。
マイン達が出撃し、ザクUと戦闘になる。
ザクUがマシンガンを撃つ。
それを避けつつ反撃でビームライフルを撃つ。
ザクUが、回避しきれず、左腕にビームが直撃する。
左腕が爆発し、バランスが崩れる。
そこにビームを撃つマイン。
ザクUのコクピットを貫通し、ザクUが爆発する。
接近してくるリック・ドムを見つけ、ライフルの照準を合わせる。
マインが放ったビームがリック・ドムに直撃し、爆発する。
「っ!?」
マインが横にステップする。
その次の瞬間、さっきまでマインのいた位置にビームが飛んできた。
「何だっ!?今のはっ!?」
振り向くと、その方向にはゲルググがいた。
「今のを避けただと・・・!?」
ヴェルズが驚く。
マインは、何かを感じ、反射的に横に移動した。
結果的に、それはビームを回避することになった。
ビームが飛んでくるのがわかった、のではなく、何かが来るのを感じたのであった。
それは、マインにとって初めてのことだった。
ヴェルズのゲルググがビームを連射する。
それを回避するマイン。
しかし、さっきの様な感覚はない。
いつもと変わらない。
マインが反撃するが、相手も回避する。
「なかなかの腕だな・・・」
感心するヴェルズ。
ヴェルズがいきなり機体の回避行動を止め、マインの頭上に回りこむようにブーストをかけて移動する。
マインはそれに対し、右方向に弧を描くようにヴェルズに回り込む。
「いい判断だ・・・味方にしたいねっ!」
ヴェルズが呟く。
MS戦では、相手の攻撃の来ない死角に入るのが有利である。
右方向、相手から見れば左側に回りこむことになる。
通常、MSは左腕にはシールドが装備されている。
左腕にシールドが装備されていては攻撃ができない、そのため、その方向に右腕のマシンガンやビームライフルを向けて攻撃しなくてはならない。
相手の右側に移動するより、少しだけだが、時間がかかる。
それはこっちも同じなのだが、機体を相手に向ければいい。
防御されやすいが、攻撃されにくい。
マインは撃ちながら回り込もうとする。
ヴェルズはマインの下方向にブーストをかけて移動する。
「手強いっ、けど、ゼラじゃない・・・」
マインはそう思った。
ゼラの場合、相手の攻撃を読めるから回り込まなくてもいい。
そのため、真っ直ぐ向かってくる。
しかし、ヴェルズは回りこんで攻撃を避けやすくしている。
ゲルググが急接近し、ビームナギナタを取り出す。
ヴェルズが斬りかかり、マインがサーベルで受ける。
ビームナギナタをぶつかりあっている所を中心に反転させ、マインを斬りつける。
マインが、左上方向に回避しようとするが、左足の膝を斬られた。
バランスを崩したマインにヴェルズが斬りかかる。
マインは、ブーストで横に避けた。
体勢を立て直し、ゲルググの方向を向く。
ヴェルズのビームナギナタを避けるマイン。
ヴェルズはすぐに方向を変え、マインに斬りかかる。
マインが避けきれず、シールドで受ける。
じりじりとシールドが削られていく。
と、ヴェルズがビームナギナタを回転させ、左腕を下から斬りつける。
左腕が肘あたりから切断される。
更に、マイン機のボディを蹴る。
「ぐぅぅっ!!」
マインが吹き飛ばされる。
蹴られた衝撃でコクピットフレームが曲がり、モニターの一部が割れ、時々ノイズが走っている。
ヘルメットにひびが入り、出血している。
ヴェルズがそこにゲルググの腕についている機関砲を撃つ。
あたったところの装甲が削れ、吹き飛ぶ。
衝撃がマインを襲う。
コクピットに当たらなかったのが幸いであった。
「やられる・・・勝てない・・・」
マインはそう呟いていた。
ゲルググがビームナギナタを持って接近してくる。
マインの視界が霞んで来る。
「マイン!死なないでっ!」
その声で薄れていた意識が戻った。
ルーンの声であった。
いつのまにか戦艦の近くまで来ていた。
「そうだ・・・オレは・・まだ・・・死ねない・・!!」
マインがビームサーベルでゲルググのナギナタを横に弾き飛ばす。
「何っ!?」
ヴェルズがその行動に驚く。
気絶していると思っていたからであった。
ヴェルズはライフルを取り出し、マインに向けて撃つ。
「・・・見えた・・!」
マインがそれを避ける。
ヴェルズの攻撃を避け、マインがライフルを向ける。
「右かっ・・!!」
ライフルの照準を少し横にずらし、トリガーを引く。
ゲルググの移動先とビームが重なる。
「何っ!?」
ヴェルズがとっさに止まろうとしたため、機体の左腕に直撃する。
マインは相手の動きを読んだのであった。
「見える・・・動きが・・・手に取るように・・・!」
接近してくるザクUやリック・ドムに1発も外さずにビームを当て、撃破していく。
相手の攻撃は全て避ける。
「あの状態で・・・あれだけ戦えるのか!?さっきとは別人のようだ・・」
ヴェルズが呟く。
ヴェルズがマインの背にライフルを向けて撃つ。
マインはそれを避ける。
ゲルググに向き直り、弧を描くように回り込みながらライフルを撃つ。
ヴェルズが回避するが、回避先の位置にビームが飛んでくる。
脇腹あたりに直撃し、少し吹き飛ぶ。
「っく!あのパイロットは・・・一体・・・」
ヴェルズはそこでマインの放ったビームをコクピットに受けて消滅した。
ゲルググとともに。
「マイン!大丈夫か!?」
「ヴァン!?・・大丈夫、まだ戦える!」
接触回線でヴァンに応えるマイン。
「戦えるって、その状態だろ?」
「っ!?ヴァン!危ないっ!」
マインがヴァンの機体を横に押す。
ヴァンがいた位置に背後の方向からジャイアントバズが飛んでくる。
そして、マインが振り向き、ライフルを撃つ。
そのビームは回避行動をとったリック・ドムに吸い込まれるように、一直線に飛んでいき、直撃した。
「マイン・・・!?今のは・・・!?」
ヴァンが驚く。
「後で説明するよ。」
マインが応える。
全滅できたらしく、味方機が帰艦していく。
「オレ達も帰艦しようぜ!」
マインはヴァンを促し、戦艦の方に向かった。

着艦し、パイロットが降りてくる。
「マイン、この機体、改造してもいいか?」
ディンが言う。
「いいけど?その方が早い?」
「ああ、多分そっちのが早いし、性能も上がるし、いいと思うが?」
「じゃ、頼むよ。」
マインはそう言ってヴァンの方に向かう。
ヴァンもマインの方に向かった。
「マイン!手当て受けてこいよ!血出てるぞ!?」
マインはヴァンと医務室に向かいながら説明する。
敵の動きを読めることを。
「ニュータイプになった・・・ってことか?」
「さぁ、よくわかんないや。でも、ニュータイプってなんなんだろうな?」
マインが訊き返す。
ニュータイプは人の革新だとジオン・ズム・ダイクンは言っていたらしい。
人の進化したものがニュータイプだとしたら、先読みができるだけでニュータイプなのだろうか?
戦闘にしか利用できない。
人の革新であるニュータイプは人殺しの道具なのだろうか?
ジオン・ズム・ダイクンの考えるニュータイプとは一体どういうものなのだろうか?
ニュータイプにならなくても人は生きてゆける。
ニュータイプになることで人はどう変わるのだろうか。
マインはそう思った。
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第14話 再戦