第15話 思い
マインが仲間とともにケンプファーカスタムと戦っている。
マインも仲間も攻撃をケンプファーカスタムに当てられない。
ケンプファーカスタムがライフルを取り出すと、次々と仲間を撃破していく。
クェリア、シエル、そしてヴァンが撃破される。
ケンプファーカスタムがマインに突撃し、サーベルで斬りかかる。
マインは避けられず・・・・

「・・・はっ!?・・・夢・・?」
そこで夢から覚めるマイン。
大量に汗をかいている。
マインは頭を左右に振ってベッドから降り、リフレッシュルームへ向かった。
リフレッシュルームで飲み物を出し、それを飲む。
「やな夢だったな・・・」
内心で、ゼラに負けるかもしれないと思っているからその夢を見たのかもしれない。
ゼラと戦って勝てたものはいままで見たことも聞いたこともない。
マインはしばらくそこで休んでから部屋に戻ることにした。
「次は・・・負けられない・・・」
マインは窓から宇宙を眺めながら呟いた。
リフレッシュルームのドアが開き、ルーンが入ってくる。
「どうかしたの?」
飲み物を取り出しながら言う。
「考え事さ・・・」
マインが窓からルーンに視線を移す。
「マイン、変わったよね。」
「そうかもしれない・・・」
ルーンがマインの方に近づいてくる。
「ゼラに追いつこうとしてるみたい・・・」
「そうなんだろうな・・・」
自分のせいで多くの仲間がゼラに殺された。
ルーンがマインの横に並ぶ。
「オレ・・・ゼラに勝てるかな・・・?」
「勝たなくてもいいよ。」
「え・・・?」
「今は戦闘をどう思ってるの?」
「どうって・・・」
「前はさ、人を討てなかったでしょ?」
戦う理由を失くしていたことにマインは気がついた。
「そういえばそうだな・・・忘れてたな・・・」
苦笑するマイン。
「もう一度、戦う理由を考えてみてよ・・・」
「そうするよ・・・」
しばらくしてから2人は自分の部屋に戻った。

「シエルか?」
MSデッキで自分の機体を見ていたヴァンがドアの開いた音でその方向を見て、シエルだと確認するように言った。
「寝ないの?」
「眠れなくてな・・」
目を細めて半壊したガンダム改を見つめるヴァン。
ヴァンはゼラの強さを少し甘く見ていた。
そのため、1発ぐらいあたるだろう、と言う気持ちがあった。
しかし、現実は1発も当てられぬまま、被弾してしまった。
「天国ってあると思うか?」
ヴァンが問いかける。
シエルが考え、すこしの間、沈黙が流れる。
「わかんないな・・・でも、あるって思った方が、楽しいかな・・?」
シエルが答える。
「死んだらどうなるんだろう・・?」
「考えてて怖くなることは考えない方がいいと思うけど?」
シエルがヴァンに言う。
ヴァンがシエルの顔をじっと見つめる。
「・・・なに・・?」
「・い・・いや、別に・・・」
ヴァンが視線をそらし、言葉を濁す。
「・・・何考えてたの?気になるじゃない・・・」
「・・いや・・その・・よく見ると綺麗だな〜って・・・」
ヴァンが視線を合わせずに小声で答える。
「・・ごまかしてないよね?」
「ごまかしてないよ。ほんとだよ。」
横目でちらっとシエルを見る。
シエルもヴァンから視線をそらした。
「ほ・・・ほんと・・?」
無言で頷くヴァン。
「こういう雰囲気は苦手なんだ・・・ほんと言うと・・・」
ヴァンが言う。
「私も・・・なんか、もどかしいっていうか・・なんていうか・・」
「そう、それ!」
ヴァンが言う。
「率直に言っていい?」
「いいけど・・・?」
ヴァンが1回深呼吸するのがシエルにわかった。
「なんかさ・・オレ惚れたみたいなんだ・・・シエルに・・・」
ヴァンの顔がだいぶ赤くなってる。
1回深呼吸したことで、こういうことだろうとは予測できたが、シエルも聞いて戸惑った。
「実はね・・私もなんだ・・・」
この返答にヴァンは少しほっとしたのがわかった。
言いたいことはお互いに理解しあったようだった。
と、突然、手すりの下からディンが現れる。
「うわ!?ディン!?」
「おう、ヴァン。ガンダム改だけどさ、マインのものと同じに改造していいか?ついでにシエル、ガンダム改、造っといたからな。」
ディンにはさっきの会話は聞かれてなかったようだ。
「あ〜、すっげぇ驚いた・・・改造は頼むわ。」
「OK、じゃ、やっとくわ!」
ディンがMSの方に行くのを見て、ヴァンは深呼吸をした。
いきなり現れたのに、よほど驚いたらしい。
その後、2人はしばらくそこにいた。

マインたちを乗せた戦艦は、補給を受けるため、コロニーに向かっていた。
コロニーに入港すると、艦長に補給が終わるまでコロニー内を見てきてもいいと言われ、用のないパイロットたちは戦艦から降りていった。
「久しぶりに都市みたいなところに来たな。」
マインが呟く。
パイロットになってから、普通に出歩くことはなかったマインにとって、懐かしい風景だった。
「戦争中とは思えないよな・・」
ヴァンが周りを見回しながら言う。
「見回してないで進もうよ。」
ルーンが促す。
3人は街の方に歩いていった。
平和な都市、という感じだった。
しかし、突如コロニーの港が爆発する。
「何っ!?」
3人がその爆発に気づいたときにはコロニーの民間人はパニックになっていた。
爆発した港は、マインたちの戦艦のある港とは反対側だった。
「リック・ドム!?」
ヴァンが叫ぶ。
「戦艦に戻りましょう!」
ルーンが促し、マインとヴァンが頷いて、港のほうに走り出す。
ジムコマンドが数機とガンダム改が1機出撃していた。
「コロニー内戦闘・・・・」
マインの記憶がよみがえる。
あのときと同じような状況だった。
マインたちが息を切らしながら戦艦のMSデッキに飛び込む。
ルーンはブリッジへ走り、マインとヴァンはコクピットに滑り込む。
「ヴァン、できるだけ、コロニーへの被害は抑えてくれ。頼む!」
「大丈夫、解ってるさ。」
ヴァンが港から飛び出し、マインが続く。
リック・ドムとジムコマンドが撃ち合っている。
2機が避けあい、建物が崩壊する。
「爆発させたら・・・コロニーが・・」
MSが爆発したらコロニーの壁に穴が開くだろう。
マインが戦闘しているリック・ドムの前に飛び出し、コクピットにサーベルを突き刺す。
すぐにサーベルを引き抜く。
リック・ドムが倒れる。
マインは周囲を見回す。
建物は破壊されているが、まだ隔壁には攻撃があたっていないようだ。
それを確認してからマインは、近くのMSのコクピットを破壊して、爆発させぬように戦っていた。
コクピットのみを破壊し、爆発させぬように戦うのは言うまでもなく難しい。
相手の攻撃を受けやすい近距離で一点を狙うのである。
「くそっ!まだいるのか!?」
ヘルメットのバイザーを上げ、汗を拭う。
視界の中に見慣れぬ機体が入った。
ゲルググである。
「あのMSのパイロットはコロニーに被害を出さぬようにしているのか!?」
そのゲルググのパイロット、マスト・C・ハードが推測する。
マストが上方からビームライフルの照準をマインに合わせる。
放たれたビームは一直線にマインに向かっていく。
「何!?避けない!?」
マストはそのビームをシールドで防いで自分の方に向かってくるマインを見た。
「こんなところでぇっ!!」
マイン機のサーベルがマストに斬りかかる。
マストはそれをビームナギナタでなんとか受け止める。
マインの機体の反応速度に戸惑ったようだ。
後ろから来たジャイアントバズを左腕のシールドで防ぐ、攻撃してきたリック・ドムにヴァンが急接近し、頭部を破壊する。
ゲルググがマインの機体を蹴ろうとするが、マインはそれをシールドで叩き落す。
マインがシールドを装備した左手に持ったビームライフルを左下に向けて撃つ。
そのビームがマインに向けてジャイアントバズを構えていたリック・ドムの頭部を破壊する。
マストはそれを見て驚く。
「こいつは・・・」
マインがゲルググのボディを下から蹴り上げ、落下させる。
マストがバランスを立て直そうと、足のバーニアをふかす。
そこに下からビームが飛んできて、マスト機の右足を爆破した。
その直後にマインがサーベルで斬りかかり、マストが避けきれず、左腕を切断される。
「ちぃっ!撤退する!」
かろうじてバランスを取ると、マストは撤退していった。
マインが着地し、ヴァンを見る。
「いい連携だったな、マイン!」
「ああ、ナイスタイミングだ!」
笑いながら帰艦していく。
着艦した時には、補給は終わっていた。
マイン達が戦艦に戻るとマインはブリッジに行った。
「マインか。」
「艦長、次はどこへ?」
「ア・バオア・クーだ。」
ア・バオア・クーを攻めるということは戦争の終結が近い証拠である。
戦争の終結、同時にゼラとの決着もつけなければならないだろうとマインは思った。
小説トップへ
第16話 決戦前