第17話 戦闘開始
連邦軍は宇宙要塞ア・バオア・クーへ集結しつつあった。
総力戦をするためである。
「!?・・なんだ・・・!?」
マインは不快感に目を覚ました。
マイン達の部隊は途中で補給を受けたために、集結が遅れてしまっていた。
「嫌な感じだな・・・」
マインは着替えてブリッジに向かった。
「マイン?早いな?どうしたんだ?」
ブリッジに入ったマインを見て艦長が言う。
もうそろそろア・バオア・クーが見えてくるはずである。
「嫌な予感がする・・・」
マインがア・バオア・クーの方角を目を細めて見つめる。
そして数分後、それは起きた。
一筋の光が目の前を通過したのだ。
ジオン軍がソーラ・レイを発射したのである。
その直後、レビル将軍の死亡の知らせが入る。
「レビル将軍が・・・!?」
艦長が一瞬唖然とする。
だが、すぐにレビル将軍の死の知らせの後の命令を伝える。
「残存艦隊を再編成させ、ア・バオア・クーを叩く!推力上げろ、一刻も早く追いつくんだ!」
戦艦の中があわただしくなる。
マインは朝食を取りにリフレッシュルームへ向かった。
リフレッシュルームで朝食を取っているとヴァンが入ってくる。
「連邦の艦隊の30%以上が墜ちたって?」
「ああ、レビル将軍もやられたらしい。」
食事を終え、飲み物を取り出すマイン。
「戦争に勝てるのか?」
「勝つしかないだろ・・・少なくともここで死にたくはない。」
「それもそうだな。戦闘開始までまだ時間はあるな・・・」
ヴァンも食事を取る。
食事を終えMSデッキに向かう。
MSデッキでは決戦のための最終チェックが行われていた。
「ディン、MSの整備の状態は?」
マインがディンに話しかける。
「ああ、万全の状態で出撃できる。お前たち2人の機体には追加装備を施した。」
額に汗がにじんでいる。
しばらく休んでいないようだ。
追加装備とは、バックパックに取り付けられたブースターと、両腕に取り付けられた240mmキャノンに、軽い増加装甲である。
どれも途中で取り外しが可能で、腕の240mmキャノンはガンキャノンの物である。
増加装甲は、ビームライフルまたは実弾兵器1発分なら直撃しても破損は増加装甲だけですむ。
「最終決戦だからな・・・できる限りの強化をした。」
ディンが微笑む。
「ありがとう、ディン!」
マインが言う。
残存艦隊に追いつき、部隊の配置などが始まる。
MS隊に出撃命令が下る。
「いよいよだな・・・」
マインがノーマルスーツに着替え、MSデッキに入ってくる。
「マイン!」
長めの髪をなびかせながらルーンが近づいてくる。
「ルーン?」
マインがそれを受け止める。
「マイン、ちゃんと帰ってきてね!生きて帰ってきて!」
「・・ああ、帰ってくるさ・・」
マインはそう答え、抱きついているルーンを抱き返した。
数秒間抱き合い、マインはMSのコクピットへ向かった。
コクピットに滑り込みMSを起動させる。
真っ暗なコクピットが段々と明るくなり、周りが見えてくる。
「マイン・ゼクロス、ハイガンダム、出ます!」
マインが出撃していく。
「ヴァン・セイズ、出ます。」
マインの後にヴァンが出撃し、シエル、クェリアと続いた。
「シエル、死ぬなよ?」
「ヴァンこそ、一人は寂しいからね。」
シエルと会話を交わし、マインの横に着く。
他の戦艦からも一斉にMSが出撃し、ア・バオア・クーに接近していく。

「ゼラ・・・出る・・・」
呟くように言い、ゼラが出撃する。
それに続いてグレス、マストが出撃する。
高機動型ゲルググカスタムは通常の高機動型ゲルググに比べて細く鋭い感じになっていて、機動力は勿論、出力も2倍とはいかないまでも、1・5倍程度になっている。
その分装甲が薄くなっているが、相手の攻撃は機動力を生かして避ければいい。
もともと高性能な機体のため、かなりの性能である。
ケンプファーは強襲用に造られているため、かなりの機動性と多数の装備がある。
敵の基地に一気に接近し、攻撃した後、帰還するという一撃離脱用に設計されていたためである。
しかし、一撃離脱のために装甲は脆く、最低限の装甲しかない。
その代わりに、機動性はかなり高く、装備も多い。
ゼラの機体、ケンプファーカスタムには、装備が一部変更されている。
シュツルムファウストは取り外されている。
2つあるジャイアントバズの代わりにビームライフルが装備されている。
これは、バズーカの弾よりもビームの方が相手に早く届くから、というゼラの意見によるものであった。
装備は、両足のシュツルムファウストがある部分にショットガンがあり、腰の後ろにビームライフル、バックパックの左右にチェーンマインが折り畳まれて、円筒形のものが2つついている。
「いいか、あのカスタムタイプのMSは3機での連携攻撃で墜とす。」
カスタムタイプのMSとは、マインのことである。
マインに対し、3機での同時連携攻撃を行うのである。
「マイン・・だったか?」
グレスが言う。
グレスは一度接触回線でマインと短いながら会話をした。
地上にいた時はマインの性格を利用して基地を墜とした。
しかし、もうそれは通用しない。
性格による弱点を克服したからである。
「だれだ?そいつは?」
マストがグレスに訊く。
「そうか、知らないんだな。マインってのは・・・・」
一通り説明するグレス。
説明と言ってもグレス自身が知っている範囲だけなのだが。
「だいたい解った。ゼラはそいつを倒したいんだな?」
グレスの説明を聞いてマストが言う。
「オレはそう思っている。カスタムタイプって言ってる機体は・・・これだ。」
グレスがマストのコクピットに画像を送る。
「こ・・こいつぁ・・・」
それは、マストがゲルググマリーネでも撃破できなかったMSであった。
「見たことがあるのか?」
「ああ、ゲルググマリーネでも墜とせなかった。」
「ゲルググマリーネで・・・」
グレスが呟く。
グレスはマストの海兵隊用のカスタムタイプのゲルググが回される程の腕でも撃破できなかったことに驚いていた。
「・・・その機体のパイロットがマインだ。」
グレスが言う。
「2機いたが・・・どっちなんだ?」
ふと、マストはその機体が2機いたことを思い出した。
「2機いたのか・・・?訊かれても解らんが・・どちらかだということは確かだ。」
「そりゃそうだな・・」
軽く微笑する2人。
接触回線だったため、ゼラには聞こえていなかった。

「MS隊を援護する!ミサイル、撃てぇっ!」
艦長、ザスィルが戦艦のブリッジで叫ぶ。
戦艦から多数のミサイルが発射される。
「弾幕が薄い!手を休めるな!」
ザスィルが叫ぶ。
「後方よりMS反応!」
ルーンがレーダーを見ながら艦長に向かって叫ぶ。
「後方に弾幕!撃ち落とせ!」
艦長が直ぐに命令する。
後方のMS、リック・ドムはその弾幕により、撃破された。
「あいつらの帰ってくる場所を無くす訳にはいかないんだ。」
艦長が呟く。
あいつらとはマイン達の事である。
戦艦はほとんど援護だけしかできない。
MSと比べれば火力は大きいが小回りが利かない。
強力な武装も当たらなければ意味がない。
そのため、MSの方が有利である。
しかし、今、周りに敵MSはほとんどいない。
連邦のMSと交戦しているため、戦艦への攻撃ができないのである。
それは連邦とて、同じことであったが。

リック・ドムの爆発が漆黒の宇宙を一瞬だけ明るく照らす。
ビームライフルがリック・ドムに直撃したためであった。
「後ろかっ!?」
マインが機体を反転させ、ライフルのトリガーを引く。
放たれたビームはマインの後ろの方向からバズーカを構えていたリック・ドムに命中した。
追加装備は今のところマインはまだ使用していない。
恐らく来るであろう、ゼラと戦う時まで温存しておくつもりなのである。
マインはゼラが自分の所へ来るだろうと考えていた。
それはニュータイプとしての勘ではなく、マインの勘であった。
しかし、それは当たっている。
ゼラはマインを殺す気なのだから。
別の方向から何かを感じ、その場所から移動してその方向を向く。
その方向にはゲルググがいた。
そして、マインはゲルググのビームライフルを回避していた。
ゲルググに向けてライフルを構えるマイン。
ゲルググが撃たれまいと、移動する。
「右か!?」
回避先、つまり右方向に照準をずらしてビームを放つ。
ゲルググのパイロットは回避先にビームが来たと解る前に消滅していた。
コクピットと動力炉を貫通し、ゲルググが爆発する。
その直後、マインは自分から見て右方向に勘を頼りにライフルを撃つ。
ビームはリック・ドムに命中し、爆発させた。
「この感覚っ!!来たかっ!?」
マインが振り向くと、そこには黒いゼラのケンプファーカスタムと高機動型ゲルググカスタムが接近しつつあった。
「マイン!」
マインの後ろからヴァンが来た。
おそらくヴァンもゼラを感じたのであろう。
「2対3だけど・・・やるしかないな・・」
ヴァンが言い、その後にマインも呟いた。
「これで決着をつける。」
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第18話 白き疾風