第18話 白き疾風
「右舷に被弾!!」
ルーンが叫ぶ。
「消火班急げ!手を休めるんじゃない!」
艦長が指令を出す。
戦艦の周りには護衛用のMSがほとんどいないため、戦艦を狙ってくるMSには機銃等で対抗しなければならない。
機銃の攻撃で1機のリック・ドムを撃破した。
「この艦の周りの敵はあと何機だ!?」
「レーダーではあと2機です!」
艦長にルーンが返す。
「2機とも撃破しろ!」
艦長が叫ぶ。

「マイン・・・もう後はない。死んでもらう。」
ゼラの声がマインのコクピットに伝わった。
「これで終わらせる。」
マインが呟く。
「いくぞ!ヴァン!」
「おう!」
マインが言い、ヴァンが応える。
ゼラの左右にいたグレスとマストがマインとヴァンを囲むように展開する。
マインとヴァンがグレスとマストに向かってライフルを撃つ。
2人とも回避し、反撃する。
マインとヴァンが回避した先にゼラがライフルを撃つ。
かろうじて避ける2人。
「このままじゃまずい!どうするっ!?マイン!?」
ヴァンが言う。
「とにかく!このフォーメーションを崩さないとまともに攻撃ができない!」
マインが返す。
会話しながらも攻撃と回避を繰り返すマインとヴァン。
「1機でも撃破できれば・・・」
ヴァンが呟く。
ゼラ達は三角形のフォーメーションを保ちながら中心部にいるマイン達2人に攻撃をし続ける。
マインとヴァンはその攻撃を回避しつつ反撃するが、ゼラ達にも回避されてしまっている。
「くそっ・・・」
マインは焦りを感じ始めていた。
明らかに不利である。
相手の攻撃数に対しての反撃数が少ないのである。
攻撃を避けるので精一杯なのである。
それでも隙を見て反撃するが、相手も回避してしまう。
「ふふ・・マイン・・・焦っているな・・・」
ゼラが呟く。
ゼラの機体のディスプレイにはマインが避け続ける姿があった。
それにむかってビームライフルを撃つゼラ。
そのビームをかろうじてかわすマイン。
そこにグレスが攻撃し、マインが回避する。
さらに、マストもそこへ攻撃を仕掛ける。
マストの攻撃を回避し、反撃をするマイン。
しかし、マインの攻撃も回避されてしまう。
普段なら相手の行動を先読みできるのだが、先読みは相手の攻撃の方に集中し、自分の攻撃の方には集中できていない。
しかし、ゼラは逆にグレスとマストが攻撃をしているので、マイン達の動きを読んだ攻撃ができる。
1度に攻撃をしてくる敵の数が多く、どれもがエースパイロットである。
「・・・ヴァン!聞こえてるな!?」
突然マインがヴァンに言った。
「!?なんだ?」
「オレに攻撃してきているゲルググに突っ込む!難しいだろうが出来るだけ援護してくれ!」
マインは、このまま遠距離戦を続けても勝てないと思ったのである。
「任せろ!ちゃんと援護してやるよ!」
「すまない!ヴァン!」
そう言ってマインが急にマストの上に回りこむようにブーストをかけ、ライフルとサーベルを交換し、マストに向かって突撃する。
「何!?」
マストがマインの機体に対し、右手のライフルをビームナギナタに持ち替え、身構える。
「くらいやがれっ!」
グレスの攻撃を上昇して避けながら機体を反転させ、マストに向かってビームを撃つヴァン。
「っ!?」
ヴァンが放ったビームがマストの右腕を直撃し、吹き飛ばす。
サーベルが破壊され、マインの攻撃を避けようとブーストをかけるマスト。
「せっかくのチャンス、逃すもんかぁ!!」
マインが右腕をマストに向ける。
「キャノンっ!?」
その右腕には、追加装備の240mmキャノンがあった。
240mmキャノンが火を吹くと同時にマストがシールドで防御した。
「横から!?」
マインが横からの攻撃を感じ、場所をずらす。
グレスの放ったビームがボディの少し前あたりを通過する。
マインは回避してはいたが速度は落とさなかった。
「ヴァン!シールドを破壊する!撃破してくれっ!」
「わかった!」
マインはそう言うのとのと同時にマストの機体の左腕をシールドごと切断していた。
「っ・・・・!!」
シールドを持った左腕を破壊された直後にヴァンが放ったビームがコクピットを貫通した。
マストの機体が爆発した。
「とりあえず・・・これで・・・なんとかなりそうだな・・・」
ヴァンが呟く。
「油断はできないけどな・・・」
マインが呟き返す。
「ほう・・・マストを撃破したか・・」
ゼラが呟く。
「マスト・・・」
グレスも無意識のうちに呟いていた。
ヴァンがグレスに急接近し、斬りつける。
グレスがサーベルでそれを受ける。
グレスは相手の腕の240mmキャノンが自分の方に向いているのに気づき、ナギナタでヴァンを弾き、少し離れる。
離れた直後にライフルに持ち替えてヴァンに攻撃する。
それを上昇するように回避し、ライフルで反撃するヴァン。
グレスもそれを回避し、反撃する。
激しく動き回りながらも撃ち合い、避け合う2人。
マインは接近してくるリック・ドムをライフルで撃破しながらゼラに向かっていた。
マストが撃破された後、ゼラは少し後退していた。
そして、友軍に通信し、リック・ドムを援護に来させたのであった。
援護に来た数機のリック・ドムを撃破し、ゼラの前に出る。
向き合った状態で十数秒間お互いに止まっている。
お互いMSの中にいるため、相手の表情は解らない。
少し離れたところではグレスとヴァンが交戦している。
「ゼラ・・・お前の本当の目的はなんだ・・・?」
通信で話しかけるマイン。
「オレを否定するものを消す。」
ゼラの返答が帰ってくる。
「オレはおまえを否定した覚えはない!」
「おまえの考え方がオレの否定だ。」
「何っ!?」
「おまえを含め、オレを否定するものを消す。」
ゼラの機体、黒いケンプファーのモノアイが光る。
それは戦闘開始を意味していた。
「死んでもらうぞ、マイン!」

「あれは・・・ゼラ・・・!?」
クェリアはマイン達の方を見て呟いていた。

「敵機、艦の後方に移動!このままだと死角に入ります!」
ルーンが艦長に伝える。
後方には機銃がなく、後方に向いている機銃は被弾し、完全に死角になっていた。
「急速旋回!機銃の射程内から逃すな!護衛のMSは!?」
艦長のザスィルが指令を出しつつ、ルーンに確認する。
「艦に接近するMSと交戦しています!後方に移動したMS撃破したようです!
ルーンが的確に情報を処理し、艦長に伝えていく。
「護衛MSの援護をする!ミサイル、撃てぇっ!」
艦長の号令とともに、ミサイルが放たれる。
「敵機接近!」
ルーンが艦長の方に振り向く。
「弾幕!機械を当てにしすぎるな!相手は動いているんだ!目で撃て!機械は補佐でいい!」
艦長が通信機で砲座の方に向かって叫ぶ。
止まっている小さな物を正確に狙うのなら機械の方が精密に狙うことが出来る。
しかし、動いている大きなものを狙うのにロックオンは出来ても、追尾式のミサイルでもなければ命中率は低い。
結局、狙う物が大きなものであれば、人間が移動先を予測し、修正した方がいい。
「味方機、1機撃破されました!」
「弾幕は手を抜くなよ!援護のミサイルも撃てっ!」
艦長が叫ぶ。

「ちっ・・・こいつ・・・!」
ヴァンが呻く。
お互いに1発も命中していない状況である。
「あのMSのパイロット・・・まるで疾風のような動きを・・!」
グレスが呟く。
ライフルを撃てば、相手は回避し反撃する。
その攻撃を回避しさらに反撃をする。
これの繰り返しを何回繰り返しただろうか。
「ライフルのエネルギーが・・・まずいな・・・」
ビームライフルのエネルギーを表すゲージを見て呟くヴァン。
そこにグレスのビームが飛んでくる。
回避して反撃するヴァン。
「このままじゃ消耗するだけだ、仕掛ける!」
ヴァンはサーベルに持ち替え、グレスに突っ込んでいった。
小説トップへ
第19話 黒い幻影