第19話 黒い幻影
「うおおおっ!!」
ヴァンがグレスに急接近する。
ビームサーベルとビームナギナタがぶつかり合い、火花が散る。
「っ!」
グレスがヴァンを弾き、ライフルを構える。
「そのパターンには慣れたぜ!」
ヴァンが腕の240mmキャノンを撃つ。
それがライフルに命中する。
「ぐっ!」
グレスが斬りかかる。
ヴァンはライフルを投げつけてバックブーストをかける。
グレスがライフルを破壊し、爆発させる。
目くらましの代わりである。
グレスの後方からヴァンが接近し、グレスはそれをレーダーを見て確認し、機体を反転させる。
サーベルで斬りかかるヴァンにナギナタで受けるグレス。
ヴァンがサーベルに力を入れる。
グレスが横にナギナタを振り、ヴァンの攻撃を受け流す。
ヴァンが弾かれる。
「くっ・・!」
ヴァンが呻く。
斬りかかって来たグレスのナギナタを右手のサーベルで押さえ、右足でボディを蹴り上げる。
「うぐっ!」
コクピットに走る衝撃に耐えながらもすぐに崩されたバランスを整えられるのは、グレスが熟練したパイロットだからである。
そして、斬りかかって来たヴァンの攻撃をスライディングするようにヴァンの機体の足元に滑り込んで回避し、ライフルをボディに向ける。
ヴァンの機体が前転するように回転し、ビームを避け、腕の240mmキャノンをグレスに向ける。
それを回避し、グレスがナギナタで斬りつけ、ヴァンがサーベルで受ける。

両手に持ったビームライフルを連射するゼラ。
そのビームの合間を縫って反撃するマイン。
「くぅっ・・・」
マインが一気にブーストをかけ、右に移動し、回り込もうとする。
マインの行動を読み、ゼラはマインを射程内に入れたままである。
雨のように降り注ぐビームを回避し続けるマイン。
反撃はしているものの、ゼラにはまだ1発も当たっていない。
「あれは!?」
マインはディスプレイの端に、ザンジバルがあるのに気がついた。
ザンジバルとゼラが一直線になるように移動し、ビームを撃つ。
ゼラは回避し、マインのビームはザンジバルに命中した。
マインが放ったビームがブリッジに直撃し、ザンジバルは機能を失った。
マインを狙ってリック・ドムや、ゲルググが接近してくる。
ゼラのいる側にMSが移動し、マインを狙う。
マインがいる側に行って接近攻撃をするのは自殺行為だからである。
それでも、その攻撃を回避し、反撃で周りのMSを撃破していくマイン。

「MS撃破確認!周りのMSは消えました!」
ルーンが艦長に言った。
「そうか、これで少しは楽になったか・・・」
小さな溜息を漏らす艦長。
戦局が連邦側に傾いてきた証拠であった。

「このっ・・!」
ヴァンが240mmキャノンを撃つ。
それをシールドで防御し、ライフルを撃つ。
放たれたビームを回避し、反撃で240mmキャノンを撃つ。
グレスがライフルを構える。
トリガーを引くがビームが発射されない。
「エネルギー切れかっ!?こんな時にっ!」
それに気づき、ヴァンが急接近する。
グレスがライフルを投げ、後ろにステップする。
そこに、腕の機関砲でライフルを撃ち、爆発させる。
「何っ!?」
すぐにレーダーを見るヴァン。
レーダーで位置を確認し、直感で240mmキャノンを撃つ。
グレスの移動先と重なり、それに気づいたグレスがブレーキをかけるが、左腕を破壊されてしまった。
グレスがヴァンに突撃する。
ナギナタとサーベルがぶつかり合い、火花を散らす。
ヴァンの機体のボディを蹴り上げ、腕の機関砲を放つ。
蹴り上げられたヴァンはブーストをかけて、わざと吹き飛び、機関砲をかわす。
「強い・・・!」
ヴァンが呟く。
マストが撃破できたのはマインとの連携があってこそだったが、今は1対1、自力で撃破しなければならない。 「最後の1発!」
そう言ってヴァンが240mmキャノンを撃つ。
グレスが回避行動に移る。
しかし、今回は移動先に攻撃されていた。
グレスの機体はシールドのある左腕を破壊されている。
ここでグレスは自分でも驚く行動にでた。
ビームナギナタを回転させ、シールドがわりにしたのである。
運悪く回転しているビームに攻撃が当たらなければボディに命中してしまう。
だが、240mmキャノンはビームにあたり、ゲルググを撃破することはできなかった。
「これで接近戦しかできなくなったな・・・」
ヴァンはそう呟いた。

「・・ヴァン!」
マインのディスプレイの中にヴァンとグレスが映る。
2人はサーベルとナギナタで激しく斬りあっている。
どちらかといえば、上下にビームが出ているナギナタを持っているゲルググの方が有利であった。
マインがヴァンの方に近づいていく。
「マイン!?」
ヴァンがそれに気づき、ヴァンもマインの方に少し移動した。
「マイン、連携できるか?」
「今度はさっきと立場交替ってことだな?出来る限り援護するさ!」
とは答えたものの、マインはゼラと戦いながら援護できるか少し不安だった。
ヴァンがサーベルを構えて突撃する。
「ヴァン!ずれろ!」
マインが叫び、ヴァンに向かってビームライフルを撃つ。
ヴァンが少し、下にずれる。
ヴァンの機体の頭すれすれをビームが通り抜けていく。
「何っ!?」
グレスがそれを回避する。
そこにヴァンが斬りつける。
ヴァンの攻撃を察知し、反射的に回避運動をしたため、右足が切断されただけだった。
「今だっ!」
ヴァンが叫ぶ。
それに応えるようにマインがビームを放つ。
「ここまでか・・・・」
グレスは無意識のうちに呟いていた。
このとき、マインはゼラの攻撃を回避しつつグレスに攻撃していた。
マインの機体すれすれをゼラの放ったビームが通過する。
そして、マインの放ったビームはグレスのコクピットを貫通していた。
グレスの機体が爆発する。
ゼラのディスプレイの中にはマインとヴァンが映し出された。
「!?」
マインはゼラの機体の後方から接近するものが見えた。
それはジムコマンドだった。
ゼラがそれに気づき、その方向を向く。
「ゼラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「!?・・クェリアっ!?」
ジムコマンドのパイロットはマインの察したように、クェリアだった。
黒いケンプファーが、バックパックからチェーンマインを取る。
折り畳まれ、重なっていたものが鞭のように伸びる。
ジムコマンドがケンプファーを斬りつけようと接近してくる。
ケンプファーの腕が動き、チェーンマインが一歩遅れて振られる。
チェーンマインがジムコマンドに巻き付き、爆発する。
クェリアには何がどうなったか理解する間も無く、ジムコマンドと共に消えた。
「ふっ・・アクスの所へ行けてよかったろ?」
ゼラの声ははっきりと伝わってきた。
その声は確かに笑いを含んでいた。
急にマインがライフルを撃つ。
「んっ!?」
ゼラはその攻撃を寸前で回避したものの、異様な雰囲気を感じた。
「人を殺しておいてよく笑えるっ!!」
そのマインの叫び声はゼラだけでなく、ヴァンにも聞こえた。
しかし、ゼラは何も感じていないかのように言い返した。
「ああなる運命だったんだよ、オレに向かってきた時からな・・・」
ケンプファーがビームライフルを両手に持ち、突っ込んでくる。
左右に散るマインとヴァン。
2人の間を通過し、振り向きざまに2人にそれぞれライフルを向け、ビームを撃つ。
それを2人とも回避し、マインだけがライフルで反撃する。
「ヴァーン!!」
ヴァンの後方から声がした。
ゼラの動きに注意しながら声のした方を見る。
ガンダム改、シエルであった。
「シエル!」
「手伝うわ!」
シエルが言う。
『でも・・まいったな・・ライフルも240mmキャノンも使えねぇし・・・これじゃ、マインの足を引っ張っちまう・・・』
心の中で呟くヴァン。
射撃武器がなければ、時間を微妙にずらした射撃攻撃の連携は勿論のこと、接近攻撃をしかけるための支援もできない。
「ヴァン、オレのを使え!」
マインがライフルを投げる。
ヴァンは口にしていない言葉に答えたマインに驚いた。
それでも、マインが投げたライフルを受け取る。
エネルギーはまだ50%程度残っている。
そして、3機で一斉に攻撃を開始する。
だが・・・・・
「本気で相手をしてやろう。」
ゼラが言い放つ。
それからはあっという間だった。
最初の数秒間はマイン達が優勢に見えた。
マインは両手の240mmキャノンを連射し、ヴァンはマインから受け取ったビームライフルを連射、シエルもビームライフルを連射した。
その攻撃を全て回避しながらゼラは一瞬でライフルをヴァンとシエルに向け、発射し、次にマインへと向け、発射する。
しかも、ゼラが放った攻撃は1発ではなく、動きを読んで、1人につき3発の攻撃を放っていた。
3発といっても、1度に3発ではなく、シエル・ヴァン・マインの順で1発づつ撃ちそれを3回繰り返すという荒技である。
「きゃああっ!!」「ぐうぅぅっ!!」「くっ!!」
3人とも全てを回避しきれずに、1発は被弾してしまった。
シエルは左足と右腕を破壊され、ヴァンも右足と左胸に被弾したものの、増加装甲だけが破壊された。
マインも左腕に被弾し、左腕の240mmキャノンと増加装甲が破壊された。
「3人まとめてこの程度とはな・・・・」
ゼラの声が聞こえてきた。
シエルは戦闘続行できる状態ではなく、ただ漂っている状態になっていた。
「ヴァン、まだいけるな?」
マインがビームサーベルを抜く。
「おうよ。いくぜ、マイン!」
ヴァンがマインに近づく。
「ああ!」
小説トップへ
第20話 白き閃光