第7話 動き出した歯車
「隊長・・・」
ヴァンが呟いた。
「ゼラのやつ・・・!」
アクスは吐き捨てるように言う。
ゼラが裏切った理由、それはマインが原因なのかもしれない。
マインが部隊に来たせいでゼラは影が薄くなった。
腕はいいのだが性格はいいとは言えなかった。
どこか、人を見下しているところがあった。
ちやほやされているマインをねたんでいたのかもしれない。
それらの積み重ねが、基地を墜とされたことで破裂したのかもしれない。
「オレたち・・・どうなるんだ・・・?」
マインが呟く。
と、警報と共に「敵影確認!MS隊は出撃!」とオペレーターの声がした。
オペレーターはルーンではなかったが、マイン達も配属されているからには出撃しなければならない。
この基地のMSはジムコマンドだが、マイン達は陸戦型GMと陸戦型ガンダムである。
ルーンは戦艦でブリッジにあたる管制室にいた。
そこは基地の中で最も狙われやすいところである。
マインがレーダーで敵を探す。
その中には多数のMS反応があった。
この基地の周辺は、森林地帯である。
マインとヴァンを先頭に、アクス、クェリア、エインと続いている。
ザクUが飛び出す。
すかさずヴァンがサーベルで腹部を横に切断する。
「マイン・・・つらいとは思うけど、克服してくれ。」
ヴァンはマインに聞こえないよう呟いていた。
いくら親友でも、こればかりはどうすることもできない。
アクス、クェリアが右の方に散開し、エインが左方向に散開する。
ヴァンは今回の戦闘はマインとともに戦うことにした。
マインを守るためもあるが、それより、マインが克服できなかった場合、ヴァン自身がマインをフォローしようと思っていた。
ザクUが飛び出し、クラッカーを投げようと、手をあげる。
ヴァンがマシンガンでクラッカーを持っている手を破壊する。
クラッカーが爆発し、ザクUが爆発する。
「マイン!なにしてんだ!死ぬぞ!」
「オレ、死んだ方がいいのかも・・・」
その応えにヴァンは唖然とした。
やる気を失っている。
新兵がよくなると言われる、無気力症候群というやつである。
戦う気力を失ってしまい、的になってしまう。
「マイン!おまえ何バカなこと言ってんだ!」
「オレはいないほうがいいんだ・・・」
ヴァンの声は届いていない。
「目を覚ませ!!マイン!」
マインの機体がその場で止まる。
急に起きた出来事の責任感を感じすぎていていたのかもしれない。
ザクUのマシンガン攻撃がマインに飛んでくる。
マインは回避行動に入らない。
ヴァンがマインの機体の前にでてシールドで防いだ。
「ヴァン・・・?」
「マイン、基地に戻って休めよ。今のおまえじゃ戦闘は無理だ。オレ達でなんとかする。」
「そう・・・させてもらうよ・・・」
力なく応えるとマインは基地の方に向かって言った。
ヴァンはザクUにマシンガンで反撃していた。
ヴァンはマインにはもう戦闘は無理なのかも・・・と感じた。
そして、ザクUに向かっていった。

マインは基地の格納庫に戻り、MSを降りた。
と、ルーンが走ってきた。
「マイン!?どうしたの!?故障!?」
「パイロット、やめようかな・・・向いてないみたいだし。」
ルーンもそのやる気のなさに驚いた。
「マイン・・・・?」
「・・・もう、戦えない・・・」
マインはそう言って、格納庫を出ようとした。

「よし、敵部隊は囮で足止めされ、こちらに気付いてない。いまのうちだ。」
グレスが言う。
「今回も楽勝ですね!」
ブライである。
前方には基地がある。

「あれは・・・!?」
ヴァンは3機のグフを見つけた。
ザクUが襲い掛かってくる。
ヴァンがそれに気付き、ヒートホークをビームサーベルで受ける。
「囮か!?」
ヴァンは気付いた。
しかし、3機のグフを相手に1人で勝てる保障はない。
そのザクの腹を蹴り、両断してから、エイン、アクス、クェリアに通信する。
「3機のグフが基地に向かってる!急いで戻ろう!」
ヴァンの呼びかけに、3人は応じ、基地に向かった。
「間に合ってくれ・・・・」

「マイン!?どこ行くの!?」
「部屋だよ・・・」
マインは止まらない。
「みんな戦ってるのよ!?」
「オレが足を引っ張ってるんだ。オレがいなけりゃ、基地は墜とされなかったし、隊長は死ななかった。」
「マインがいなかったら、私、死んでたわ!」
ルーンがかけよる。
マインの足が止まる。
「グフだ!!」
メカニックの一人が叫んだ。
外にはグフが肉眼で確認できる距離まで来ている。
基地内はパニックになりつつある。
「マ・・・マイン・・・・」
ルーンがマインを見る。
首を横に振るマイン。
「オレはあいつらには勝てない。」
マインはルーンを見ずに応える。
グフが基地に機関砲を向ける。
そこにヴァンの陸戦型ガンダムが飛び出し、機関砲を構えたグフの左腕を蹴飛ばした。
「間に合った!」
ヴァンが呟く。
「デルタフォーメーション!」
グレスが言い、2人がヴァンを取り囲む。
ヴァンが身構える。
そこにアクス、クェリア、エインの3人がかけつけてきた。
3機のグフがヒートソードを取り出す。
ヴァンがグレス機に斬りかかる。
グレスはそれをかわすと、ヴァンの陸戦型ガンダムの右腕を斬りおとす。
そして、脇腹を蹴って押し倒す。
「つ・・強い・・・」
ヴァンが呻く。
グレスがコクピットにヒートソードを刺そうとする。
アクスがヒートソードを弾く。
「一人で戦ったってダメだ!相手はエースなんだ!」
「すまない。」
アクスが言い、ヴァンが応えた。
アクス、クェリアがグレス機にマシンガンを向ける。
ブライのグフがアクスのマシンガンを右腕ごと斬りおとす。
カタスのグフはクェリアのマシンガンを叩き落し、腹部を蹴る。
エインがブライのグフに斬りかかるが、グレスがエインの機体の両足を切断し、叩き落した。
「まずい・・・・このままじゃ・・・」
ヴァンが呟く。
現在の状況は、グフは全機無傷。
エインは両足、ヴァンとアクスは右腕をやられている。
勝率は低い。
「数では有利なのに・・・」
アクスが呻く。
グフが基地に向かう。
マインとルーンはその戦闘を見ていた。
「そんな・・・」
ルーンが呟き、外に出ようとする。
基地が墜とされる、そう感じた。
格納庫にグフが来る。
「・・・・」
味方が苦しい状況。
すぐにグフは基地に攻撃をしかけてくるだろう。
「・・・あっ・・・」
ルーンがグフに潰されそうになる。
その瞬間、マインの体が動いた。
「ルーン!!」
マインがルーンを抱えながら倒れる。
踏み潰されるのは回避した。
「マイン?」
マインの目つきは明らかにさっきと違っていた。
いつもの目つきに戻っている。
マインが陸戦型ガンダムに乗り込む。
「うおおおおおお!!!」
起動した直後に、格納庫内に入ってきていたグフを押し出す。
「なに!?」
カタスがひるんだ。
そして、グフのボディを切断した。
グフが爆発する。
「カタス!?」
グレスがそれを見つけた。 爆煙の中から陸戦型ガンダムが歩いてくる。
「ちっ、隠れてやがって!」
ブライが斬りかかる。
その陸戦型ガンダムはサーベルでヒートソードを受け、横に弾く。
ブライの機体が転がる。
「な・・何!?」
呻くブライ。
陸戦型ガンダムがグレス機に向かって歩いてくる。
ブライが後ろから斬りかかる。
その陸戦型ガンダムは姿勢を低くし、ブライ機の足を払い、その陸戦型ガンダムに倒れこんで来たグフをサーベルで縦に切断した。
ブライのグフが爆発する。
グレスがヒートロッドで攻撃する。
マインがしゃがんでヒートロッドを回避し、サーベルを振り、頭上に伸びているヒートロッドを切断する。
「くっ・・・こいつは・・・・」
グレス機が撤退した。
「マ・・・マイン・・・!?」
ヴァンが口を開いた。
「もう、大丈夫。戦えるよ。」
マインが基地の方に振り返り、コクピットの中からルーンを見る。
「もう、迷わない・・・仲間を、大切な人を守るために戦う。」
もう、夕方になっている。
その日は夕焼けが綺麗だった。
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第8話 ジオンへ