第8話 ジオンへ
「オレが隊長!?」
マインが言う。
「ああ、階級は君が一番上だ。ザストの部隊を君に預けたい。」
ガースがマインの両肩に手を置く。
「自信がありません。」
「構わん。自信がなくても、味方に信頼されてさえいれば隊長は務まる。」
ガースは微笑みながら言った。
「頼むぞ、マイン中尉。」
「?オレは少尉のはず・・・」
マインが不思議そうな表情で訊く。
「先程の働きで基地は救われた。その功績だ。」
「解りました。なんとかやってみます。」
ガースはうなずき、マインは敬礼して司令室を出る。
マインが格納庫に向かう。
格納庫に入るマイン。
「マイン!なんだったんだ?用は。」
「オレが隊長やれってさ。」
ヴァンの問いに即答するマイン。
マインはヴァンが訊いてくるだろうと予想していた。
「へぇ・・・マインが隊長か・・・・」
「よくグフ3機を撃破したねぇ!」
シエルが来た。
「不意をつくことができたからだよ。」
マインが言う。
「ニュータイプだったりしてね。」
「まさか。そんなんじゃないよ。」
マインが笑いながら応える。
「でも、マイン、すごかったぜ?」
ヴァンが言う。
マインは自分の弱点、人を殺せないところを克服した。
とは言っても、何も感じなくなった訳ではない。
「相手を撃てるようになったな。」
「ああ。いままでみたいなことを言っていたら、自分の守りたいものも守れないからな。」

「敵影確認!1機です!」
基地内に警報が鳴る。
グレスが出撃する。
「ん?武器を持っていない!?どういうつもりだ・・・?」
「ジオンに入りたい。」
ゼラである。
陸戦型ガンダムはグレスの目の前で止まり、スピーカーを使い、喋る。
グレスは罠か、と一瞬思ったが、ゼラにその気配はなかった。
グレスはゼラを受け入れ、司令室に連れて行く。
「連邦を裏切ったそうだな?」
グリエスが言う。
「ああ、上官を殺してきた。」
その言葉に一瞬、全員が止まった。
「なぜ、そこまでしてジオンに?」
今度はグレスが訊いた。
「連邦で腐るよりはジオンでエースになる方がいいと思ってな。」
さらりと言うゼラ。
「司令・・・どうします?」
「そうだな、グレス、おまえの小隊はどうだ?」
「さっきの出撃でカタスとブライをやられました。」
グレスが少しうつむく。
「そうか・・・では、補充兵1人とゼラを連れて行け。準備ができ次第出撃してくれ。」
「解りました。」
ゼラはグレスの部隊に編入され、部屋を出て行く。
グレスはゼラが何を考えているのか解らなかった。
もしかしたら、ジオンを裏切るかもしれない。
そのため、ゼラに対しては気を緩めないようにしようと思った。

「敵影確認!MS隊出撃!」
基地内に警報が響き渡り、マイン達パイロットが走り出す。
MSに乗り、出撃していく。
マインが出撃し、索敵する。
ジャンプして、周囲を見渡すが、別働隊の姿はない。
今回は囮はないようだ。
前方に多数のMS隊。
MS隊の中心は2機のグフと1機の陸戦型ガンダム。
「陸戦型ガンダム!?まさか・・・ゼラ・・・!?」
マインがそれを見て驚く。
ゼラと戦って勝てるかどうかはマインには解らない。
しかし、そのジオンカラーに変えられた緑色の陸戦型ガンダムは、マインに向かってくる。
ゼラが斬りかかり、マインが受ける。
「ゼラかっ!何を考えている!?」
ゼラはマインを弾き、ジャンプする。
ゼラがマインの背後に着地する。
そして、マシンガンを構える。
「マイン!」
ヴァンがゼラを蹴り、押し倒す。
「ぐっ・・・」
ゼラが起き上がる。
起き上がったゼラがヴァンを蹴飛ばし、マシンガンを向ける。
マインがそこに斬りかかるが回避する。
「なに!?避けた!?」
マインが呟く。
ゼラがマインに斬りかかり、マインが受ける。

グレスはアクス、クェリアと交戦している。
「いい連携攻撃だ!」
グレスが感心する。
アクスとクェリアはグレスに攻撃させぬよう、連携攻撃をしかけている。
アクスの後ろにクェリアが隠れ、アクスがマシンガンを乱射しながら近づき、途中で姿勢を低くする。
そこにクェリアがマシンガンを連射する。
グレスは半分回避し、半分防御で受ける。
アクスとクェリアの連携攻撃はグレスの攻撃を防いでいる。
「くっ・・・これ以上は・・・」
グレスが呻く。
そこにレーザー通信が入る。
「グレス中尉、いま、HLVの打ち上げの準備をしている。お前たちを宇宙に上げる!戻って来い!」
グリエス司令である。
「なんですって!?」
それは、ジオンが地球での戦闘を諦め、宇宙での決戦で連邦との決着をつける、と言うことであった。
「ジオンの部隊をできるだけ宇宙に上げる!おまえ達にはもっと頑張ってもらいたい!」
「・・・了解!3人で帰還します!」
グレスがその場から撤退する。

ヴァンは右腕を、マインは左腕をやられ、押されている。
ゼラが歩いてくる。
「ゼラ!撤退するぞ!」
グレスの声がゼラのコクピットに響く。
「何!?」
「宇宙に上がるんだ!撤退するぞ!」
グレスがゼラの機体の肩を掴む。
ゼラは数秒考え、そしてグレスの方を向いた。
「解った。」
グレスとゼラが撤退していく。
途中からグフが1機合流し、3機は撤退した。
マイン達は起き上がり、他のMSを撃破しに行った。
1、2時間後、戦闘はマイン達の勝利で終わった。

「マイン中尉、話があるのだ・・・」
ガース司令がマインを呼び出したのである。
「宇宙に行ってもらいたい。」
ガース司令は続ける。
「ジオンと連邦は、宇宙で決着をつけようとしている。君たちには宇宙での決戦に参加してほしい。」
司令は、座っていた椅子から立ち、マインにゆっくりと近寄る。
「もうHLVの準備は始めている。打ち上げ後、すぐに友軍の戦艦が収容しに行く。そこに配属するのだ。」
司令がマインの両肩に手を置く。
「解りました。」
「メンバーは君の部隊とシエル曹長を連れて行ってくれ。」
「オレの部隊はともかく、なぜ彼女を?」
「君の部隊と仲が良さそうなのでな。」
マインは了解し、それを伝えに格納庫に向かう。
運良く、格納庫にはマインの部隊全員が集合していた。
「マイン!宇宙に行くんだって?」
ルーンが訊いてくる。
「誰から聞いたんだ!?」
マインが驚く。
ルーンはヴァンを指差す。
「ヴァン、盗み聞きしてやがったな!?」
「聞き取りにくかったが、なんとかな。」
ヴァンが笑いながら言う。
「寂しくなるね・・・」
クェリアが言う。
「何?なんで?」
マインが訊く。
「おまえだけ行くんだろ?」
アクスが応える。
「全員だけど?」
そのとたんみんながヴァンを睨む。
ヴァンは良く聞こえなかったと言ったが、マインだけが行くんだと勘違いをしていたみたいだ。
マインが説明した。
「じゃ、伝える事は全部言ったから、荷物をまとめてHLVに積み込んでってくれ。」
マインが言い、全員がうなずいて、格納庫を出て部屋に向かう。
「宇宙か・・・」
マインが空を見ながら呟いた。
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第9話 宇宙へ