第1話 オデッサ敗退
11月9日・オデッサ左翼方面
11月7日より始まった連邦軍の一大反抗作戦、オデッサ作戦は連邦軍優勢のまま3日目の11月9日に突入していた、そしてこの左翼方面を防衛する戦力の中に彼らブラッディローズはいた。
連邦軍はあのRX−78−2の実戦データをもとに開発したMS、RGM−79・ジムを戦線に大量投入、その物量をもってオデッサを陥落させようとしていた。
それに対してジオン軍はエース部隊「黒い三連星」の全滅が確認されたうえに物量の差もあり士気の低下は否めない状況だった。
 彼らブラッディーローズが使用しているMSはMS−07A・先行量産試作型グフ(グフA型)であった。ブラッディーローズは全員が射撃を主体とする戦闘スタイルで、隊長のジャック・コースト中尉(コードネーム・スティングT)がMMP−80・90ミリマシンガン、R−WINGのライザ・シューター少尉(コードネーム・スティングU)が90ミリAR(アサルトライフル)、そしてL−WINGのウィリアム・アーサー少尉(コードネーム・スティングV)が880ミリ・ラケーテンバズを使用している。そしてこの部隊のオペレーターを務めるレイカ・オクハラ准尉(コードネーム・ヴェノムスティング)は鹵獲した連邦軍の装甲ホバートラックにマゼラアタックの主砲を取り付けるという荒技(この部隊の整備班の班長を務めるジオニック社の派遣社員、ルナ・ライディアが行った)をしたものを使っていた。

「くっ、我ながら不覚だったわね」
ライザはコクピットの中で一人毒づいた。確かに戦線にGMは相当数いる、しかし連邦の戦力の主はやはり戦車であり自走砲だった、そしてライザの使っている90ミリARはそのての敵には強力すぎたし、だいたいそんな多数の敵といつまでも戦っていられるほど弾数も多くない。
「 3時の方向に熱源・・・この反応は連邦のMSね」
そう言って彼女はシールドからヒートサーベルを引き抜くと反応があった方向に自機を向わせた。すると案の定そこには3機のジムがいた。
「いただきぃ!」
彼女は最も近くにいた ジムに自機を接近させヒートサーベルの一撃のもとに葬り去るとそのままの動きで2機目のジムのコクピットを左腕に持ち替えていた90ミリARでぶち抜く。
「次で最後っと」
奇襲を受けた上に瞭機を撃破されて動揺したジムを倒すのには30秒とかからなかった。
「ちょっと調子に乗って突出しすぎたみたいね、残弾数も少ないし一度後退した方がよさそうね」
そう言うと彼女は司令部であるダブデ級陸戦艇の下に向った。

断続的爆発とともに10両近い61式戦車と自走砲が吹き飛んだ。そしてその爆煙の中から姿を現したのはラケーテンバズを担いだグフだった。
「ったく,いくら吹っ飛ばしてもきりが無いな」
ウィルはやってられますかとばかりに愚痴をもらし続けた,実際有視界だけでも20両を軽くこえる数の61式戦車と自走砲が見えた。
「弾の数的にはそろそろ撤退したいとこだが・・・最後にMSの3機くらい手土産にしたいもんだなぁ・・・お?」
彼がサーマルセンサーに目を向けるとそこにMSらしき反応があった。
「ラッキー」
彼はブースターをふかし最大出力で反応があった方向に突っ込むと大体の見当をつけた方向に3発のラケーテンバズを叩き込む、かなりアバウトな気もするが実際1機のジムがこれで撃破された、さらにそのままもう1機のジムのコクピットに銃口を押し付け引き金を引く。
「ラストー!」
すると最後の1機がビームサーベルを振りかぶって踊りかかってきた。ウィルはそれに向かってラケーテンバズの銃口を向け引き金をひく。しかし。
「弾切れだってぇ」
彼は敵の斬撃をかわすと野球のバティングの要領で薙いだラケーテンバズをジムの脇腹に叩き込んだ、MS自体に対するダメージは大した事は無いが中のパイロットはコクピットの壁に叩きつけられ即死しているだろう。
「後味悪いなぁ、まぁしかたないか、撤退するとしよう」
こうして彼もまたダブデへ戻っていった。

ウィルがダブデに戻るとそこには既にライザとジャックそれにレイカの姿があった。
「あれ、なんで皆ここに居るんです?隊長」
「ウィルか、ちょうどいいところにきたな」
「へ、どういう事です?」
「それが、つい先ほどマ・クベ指令を乗せたザンジバルが衛星軌道上へ脱出したのが確認されました。」
これはレイカである、彼女はこの宇宙世紀には珍しい純血統の日本人だった。
「つまり我々ジオンはこのオデッサで負けてしまったって別けだ」
「隊長、これからどうします?」
「とりあえずここを放棄してキャルフォルニアベースにでも行くしかあるまい、たしか格納庫に連邦のミデアがあったはずだ、あれでとんずらしよう」
こうして彼らの3日間の激闘は終わり、そして新たなる物語が始まる。
小説トップへ
第2話 撤退戦