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記事紹介
『ジャキューズ』第10号
 2007年5月26日 発行

森井 眞さん(元明治学院大学学長・当会共同代表)

 
二〇〇七年四月二十一日に、早稲田大学で行われた新入生歓迎特別講演会「森井眞氏 憲法を語る――憲法改悪は日本をどこにつれていく?」と題する講演と質疑応答を収録しました。


新入生諸君に訴える――
歴史に学び、この絶望的な世界の現実を何としてもつくりかえましょう

講師の森井眞さん
 地球上いたるところで戦争や紛争。自然環境の破壊。強弱・貧富の格差の拡大。恐るべき犯罪の多発。倫理感の喪失。おのが非を認める潔さをもたぬ卑怯者の横行――たとえば、安倍政権が従軍慰安婦や沖縄戦での集団自決の強要を否定したり、ブッシュ政権が「大量破壊兵器の存在」をでっち上げてイラク戦争を開始したりなど――。
 このほとんど絶望的な世界の現実をなんとかしてつくり変えることをなお敢て望むとすれば、歴史から学ぶべきことを人類が学ぶ以外道はないのかもしれません。

歴史に学ぶとは――私自身の体験に即して

 歴史から学ぶとは、その歴史をみずから体験しその時代を生きることと同じではありません。十五年戦争の時代を生きながら、「戦争は腹が減る」とか「恐ろしい」とかといった感覚的・個人的なこと以外にあの歴史から何も学んでいない人はたくさんいます。私自身、戦争のただ中に生きながら、その意味がまるで分らなかったのです。
 自分の話から始めますと、私の通った旧制高校は全寮制で、東京在住の者も三年間寮生活を送りました。そこでたまたま識り合った三人と、ほとんど毎日朝から晩まで徹底して付合って、人生ただ一度の青春の喜びと悲しみを分かちあい、よく遊び、また人間とは何か、真理とは何かと、一緒に問い、求め、語り合う三年間でした。三人とも実に優秀な、いい奴だった。あんな友達はもう二度とつくれませんでした。
 大学でその一人は美学美術史、一人は哲学、一人は仏文学、私は西洋史学と、別の専攻に進みますが、そのあとみんな兵隊にとられました。
 太平洋戦争は私の大学入学の年に始まります。朝、開戦のニュースをラジオできいたとき、「あ、おれの人生ももう永くないな」と悲愴な覚悟を迫られました。臆病者の私は軍隊も戦争も大嫌いでしたが、恐れていたとおり赤紙がきて、一九四三年十二月一日早朝、日の丸の旗をふる隣組の人々と家族に見送られ、「もう生きては帰れまい」とわが家をあとにして入隊しました。軍隊ではみごとに人間としての自由を全部奪われ、二十四時間ただ規則と命令に従って生きる生活でしたが、私は誰にも負けないほど熱心に軍務にはげみ、戦争に協力しました。つねに死の危険にさらされている日々です。
 とくに敗戦が近くなると、自分の手に爆薬をもち、身をかくしているたこ壺から飛び出して、攻めてくる敵の戦車に体当たりする――戦車のいちばん熱せられているところに爆薬を取りつける――自爆の訓練ばかりでした。毎日この訓練ばかりでした。
 まちがいなく自分の死が刻々と近づいていると思われ、求めもしないその死を見つめ続けるのはほんとうに辛いことでした。血気さかんな若者の目に、真夏の太陽が鉛色に見えてきたのです。冗談ばかり言っていた私たちも、ひと言も冗談が言えなくなりました。一〇〇lの死を覚悟させられたのです。恐ろしいことです。
 そんな自爆覚悟の日々の中で訪れた敗戦の知らせ。死の恐怖からの解放感と、捨てたと思っていた人生をまた生きられることの感動、歓喜は、とても言葉につくせないほどでした。



以下は小見出しを紹介します。

三人の親友の戦死を知った喪失感と絶望

 

他者の痛みをおのれの痛みとする想像力を育む大切さ

 

拉致被害者の痛みを政治的に利用する安倍晋三の愚劣

 

人間の尊厳の徹底した否定=軍国日本の再興の野望

 

安倍政権は「戦争のできる国」づくりを狙っている

 

国家権力に従順な人間を育てる企てを断じて許してはならない

 

反戦平和を希求する全世界の広範な人びとと連帯して

 

社会の力に流されず、挫けることなく社会の変革を

 
               
質疑応答


質問
 いま国会で審議されている国民投票法案についてどう思いますか


 

質問 六十年前の戦争のときに国内でどのような言論統制が行われ、国民への支配が行われたのですか

 

質問 戦争が嫌だと思っていた森井先生がどうして熱心に軍務に励まれたのですか。

 

質問 「忠君愛国」の教育とはどういうものだったのでしょうか。



質問 ブッシュのイラク戦争と軍事占領により多くの民衆の命が奪われたことについてどのように感じていらっしゃいますか。

 

質問 安倍首相はブッシュの言いなりといわれますが、なぜブッシュに賛同するのかわかりません。お考えを聞かせてください。


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  Eメール action@leo.interq.or.jp