別の女の子と一緒にいるところを街でバッタリ――もはや恋愛小説やドラマでは使い古された展開どおりに事態が進んでいることに、ゆかりは軽い眩暈を覚えた。
彼女の横には、その場に凍りついたように動けなくなっている真。
彼の目の前には、目を見開き、口唇を半開きにしたまま身体を震わせている澪。
その横には、いつこの場を逃げ出そうかと機会をうかがっているらしい、刃。
目が合った瞬間、彼は「なんであんたが一緒にいるんだ」とでも言いたげな顔でゆかりをねめつける。そんな彼に、「その言葉、そっくりそのままお返しするわ」という風に、ゆかりはそっぽを向いた。
刃にしてみれば、真が何故にゆかりと一緒なのかが理解できないところだったし、ゆかりはゆかりで、澪が何故に刃と一緒に街を歩いていたのかがいまいちわからない。
で、問題の二人は――というと。
ジワリ、と、澪の目じりに涙が浮かんでいた。こみ上げてくるものを必死で抑えようとしているのか、頬が真っ赤に染まっている。真は、それをただただ見つめるばかり。
そして、澪は。
何某かの言葉を言おうとして、それも声にならないまま。
振り向くと、走っていってしまう。誰も、止める間もなく。
あっという間に、その姿は人ごみの中にかき消されてしまった。
「……おい、追わなくていいのかよ」
茫然と立ち尽くしている真に、刃が遠慮がちに声をかける。
だが。
真は、ゆっくりと、首を振った。
もう、間に合わない。 |