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4
 人ごみの中をかきわけ、走れるだけ走って、澪は公園のベンチに腰をおろした。
 すでに、日は西に傾いている。
 こみ上げてくる涙で、噴水がにじみ、ぼやけて見える。幾度となく、彼女は目じりを拭った。
 悔しかった。
 真とゆかりが楽しそうに笑っていたことが。
 そして。
 何より、真が自分を追ってこなかったことが。追う気配すら見せなかったことが。
 悔しくて、悔しくて。
 そのうち、ぬぐってもぬぐっても間に合わなくなるほど涙があふれて――。


 その日、澪はどうやって家に帰ってこれたのかということすら、まったく覚えていない。
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