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 「メリークリスマス!」
 極めて陽気な表情で、澪がクラッカーを鳴らす。
 パン! という音と共に飛び出したリボンが、もろに刃の顔を直撃した。
 「ってぇな! 何すんだよ!?」
 「あ、ごめーん」
 きゃらきゃらと笑いながら、澪がペロリ、と舌を覗かせる。
 「お前、わざとやっただろ」
 「えー、そんなことないよぅ。刃君がそこにいるのが悪いんじゃない」
 空になったクラッカーをヒョイ、とゴミ箱に捨てながら、澪が口を尖らせる。
 「はいはい、せっかくのパーティーなのにケンカしないの」
 クリスマス料理が所狭しと並んだトレーを運びながら、澪の姉――深雪が苦笑いを浮かべる。
 「わ、すっごーい! これ、全部お姉ちゃんが作ったの?」
 「1人でこんなに作れないわよ。半分は真君」
 「へ? 真が?」
 心底意外そうな表情で、刃が台所のほうに首をめぐらせる。
 「私が料理なんて、そんなに意外でしたか、刃?」
 何故か思いっきり少女趣味に走ったエプロンをつけたまま、真がこれでもかと料理が並んだトレーを持って現れる。
 「ぷっ……そのエプロン、どうしたんだ?」
 「ああ、それね。私が真君に貸したの」
 「えぇ!? お姉ちゃん、ああいう趣味だったっけ?」
 「まさか。今年買った福袋に入ってたのよね、あれ。堂々とつけるわけにもいかないからどうしようもなかったんだけど、真君が料理手伝いに来るっていうから試しにつけてみたの。どう? もうそろそろ慣れたでしょ?」
 くすくすと笑いながら、深雪が真に尋ねる。
 「慣れません!!」
 耳まで真っ赤にした真が、エプロンを脱ぎながら答える。
 「お姉ちゃん……真で遊んでるでしょ」
 「当然」
 げんなりとした表情で尋ねる澪に、深雪が胸をそらして答える。
 (こいつ……ここを出るまで相当遊ばれたんだろうな……)
 チラリ、と横目で真を見ながら、刃はそっとため息をつく。
 その隣では、真が引きつった笑みを浮かべていた。
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