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4
 翌朝。
 「パパー!」
 嬉しそうな声と共に、美弥子がトテトテと居間の方に駆けてくる。
 「見て見て、サンタさんにもらったのー!」
 満面に笑みを浮かべた美弥子はちょこん、と新聞を読んでいた葛城の向かい側に座ると、テーブルの上に綺麗に包装された箱を置いた。
 「あら、よかったわねー。美弥ちゃん、何が入ってるのかな?」
 「んー、わかんなーい」
 騒ぎを聞きつけた母親が、苦笑いを浮かべている葛城にニッコリと微笑みながら、美弥子の傍らに腰をおろす。
 「開けてもいいかな?」
 「ああ。ちゃんとサンタさんに御礼を言ってからな」
 「うんっ! サンタさん、ありがとー!」
 元気な声でプレゼントをくれたサンタさん=葛城にお礼を言ってから、美弥子は包みを開ける。
 でてきたのは。
 「わぁ!」
 美弥子がデパートのおもちゃ屋さんで欲しがっていたぬいぐるみであった。
 「サンタさん、ありがとー!」
 真新しいぬいぐるみをギュッ、と抱き締めて、美弥子が満面の笑みを浮かべる。
 「よかったな、美弥子。……さぁ、朝御飯にしようか?」
 相も変わらず苦笑いを浮かべたまま、葛城はちょっと複雑な心境で嬉しそうな愛娘の顔を眺めていた。
 (やっぱり神社にクリスマスは……似合わないよなぁ……)

 
 同じ頃。
 いつもとは少し違う朝の日ざしを受けて、真は目を覚ました。
 「んー………」
 眠そうな目をこすりながら、ゆっくりと半身を起こそうとする。
 が。
 左腕がまったく動かないのに気付いて、真は何事かと振り向き、そして――
 「…………は?」
 と、間の抜けた声を出した。
 目の前に、澪の幸せそうな寝顔がある。
 左腕が動かないのは、彼女が真の腕をしっかりと抱き締めて眠っているかららしい。
 何かおかしいと思ったら、彼が今いるのは、澪のベッドの中だったのだ。
 「あー……え、えーっと……」
 それに気付いた瞬間、真の顔が耳まで真っ赤に染まる。
 (何で……私がここに……)
 と。
 「んー………あ、おはよー」
 と、やはり朝日に目を覚ました澪が、「にこぉ」と笑みを浮かべる。
 「あー、えーっと……」
 「やだ、何照れてるのよ。昨日はあんなにすごかったのに」
 「はぁ!?」
 思いっきり「意味深」な発言に、真の顔がサッと青ざめる。
 昨日。
 昨日はパーティーの途中で刃が帰ってしまって、それから澪と二人でテレビゲームをして……それから?
 「やだ、何も覚えてないの? ちゃんと責任取ってくれるって言ったじゃない!」
 ぷぅ、と頬を膨らませる澪に、真はただただ顔を青ざめさせるばかり。
 「あー……あの、一体……」
 「だ・か・ら。昨日のゲーム、ちゃんとクリアしてよね!」
 「あぁ……はははは……」
 「ねぇ……一体何考えてたの?」
 真が乾いた笑みと共にもらした安堵のため息に、澪がいぶかしげな表情で尋ねる。
 「え? 別に、何も……」
 「ホント?」
 「ええ。本当に、何も」
 「そう? それならいいけど……」
 なんとなくうなずいた澪は、いまいち納得しきれない表情のまま半身を起こして、
 「さむーい!」
 と、再び布団の中に入るなり真に抱きついてくる。
 「み、澪……?」
 「ねぇ、もう少しこのままでいたいな……」
 よほど寒かったのか、小刻みに身体を震わせながら、澪は甘えた声で真に迫る。
 「ダメ?」
 「わ、私は、別にかまいませんケド……」
 顔を真っ赤に染めた真が、目をそらしながら答える。
 「よかった」
 ホゥ、と息をついて、澪がそっと真の頬にキスをする。
 「メリークリスマス、真」
 「……メリー、クリスマス」
 消え入るような声で答えた真に、澪がクスクスと笑い声を上げる。


 窓の外が一面真っ白に染まっていることに二人が気付くのは、まだまだ当分先のことであった。

- fin. -
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