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 そういえば、昔――あの子がまだ、お腹の中にいた頃のことですが――兄が、こんなことを言っていました。

 「この子がどういう道を歩いていくことになるかは、俺にもわからん。俺と同じように退魔士になるかもしれないし、まったく別の職につくかも知れん。ただ、俺はこの子に、この子なりの真実を見つけて欲しい。だから、俺はこの子に「マコト」という名前を、贈ろうと思う。壁にぶつかったり、立ち止まったり、後ろを振り返ったり――いろんな事が、あるだろうがな」

 あの子は結局、兄と同じ道に進みました。兄が言ったとおり、この先、本当にいろんな事があると思います。それでも、あの子には兄が願ったとおり、あの子なりの真実を見つけて欲しい。


 それが出来るように、私はあの子を育ててきたつもりです。


  ――織姫真の養母・遠野美沙。


-fin-
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