トーキョーN◎VA 2nd. Editionリプレイ 『Shining Sky』

  〜プロローグ〜

暗闇の中、一人の男が歩いていた。
しわ一つないスーツと磨いたばかりの革靴を見れば、彼は大企業の重役に見えたかもしれない。しかし、彼の瞳を見たものは別の感想を抱くだろう。
それは何かを傷つけることに、殺すことに慣れすぎた瞳だ。
男はゆっくり立ち止まると、暗闇の片隅に向かって微笑んだ。まるでその瞳の冷たさを隠すような白々しくも慈悲深い笑みだった。

「これが狙っているブツだ。」
男はスーツの中に手を入れると、一枚のディスクを取り出し、空中でふと指を離した。
驚くことに、ディスクは落ちることなく、ゆっくり空間を移動していった。
暗闇から細い手が現れ、緩慢な動きでそれを手にした。それと共に新たな人物が暗闇の中から姿を現した。
「核融合プラントぉ?何だ、そりゃ?」
まだ幼さの残る声を張り上げてもう一人の人物、少年は質問した。柔らかそうな前髪が顔の上半分を覆っているのが特徴的だ。
「次世代のエネルギー機関だ。」
男の説明に首を傾げつつ、少年は再び男に尋ねた。
「高く売れるの?」
「もちろんだ。いつものようにスマートに。」
その答えに満足したように微笑みながら少年は自信たっぷりに言った。
「わかってるって!」
男もまた、その答えに満足したようだった。笑みが口元から波紋を描く。
「それでは失礼……。」
踵を返し、立ち去ろうとする男の背中に少年は言葉を投げかけた。
「ちょっと待って。」
男は振り返ると、わずかに眉をひそめて言った。
「なんでしょう。」
「ボクの目を治してくれる病院は?」
少年は強調するように強く言った。
「この件が終わり次第紹介します。」
「頼むよ、“アルファ”」
少年は安心したように笑った
「えぇ、“ブランチ”」
男、いやアルファは今度こそ振り返らずに来た道を引き返し始めた。

「かくして迷宮の扉は開かれた、か。」
アルファは芝居がかった調子で闇に独白した。
言葉が闇に吸い込まれるのと同時に、その笑顔の奥の傲慢さもかき消されたようだった。
次へ戻る