死 後 の 世 界 の 生 活
人間は死後、しばらくは夢を見ています。それを、「冥界」にいる、と呼ぶ事があります。
しかし、実質的に死後の世界の住人になるのは、次の「幽界」に入ってからです。
2.幽 界 で の 食 べ 物
霊魂に聞いた話を、主人公の語り風に書いてあります。
私は洋子(仮名)。
私が暮らしている街は賑やかです。でもなぜか、街には動物がいません。私が死んでこちらに来てから1週間程が経ったと思います。
もっとも、こちらでは昼も夜もなく、その上、仕事もないので何日とか何曜日とかは誰も言いません。だから、実際にどのくらい経ったのかは良く分からないのです。
私がここに来て一番驚いたことはおなかが空かなかったことです。とにかくいくら時間が経ってもおなかが空かないので働く必要がないのです。それで私は誰も食事をしていないのかと思っていました。
ところが、そうではなかったのです。
こちらへ来てからお世話になっている女性の家におじゃました時に、歓迎会を開いてくださったのです。
私はまだ独身のうちにこちらの世界に来たので、いろいろと心残りもあったんじゃないかと心配してくださり、友達を集めてくださいました。
歓迎会といっても、ただのお話会だとばかり思っていました。ところが、そうではありませんでした。何と、ごちそうとワインが出てきたのです。
びっくりしてしました。あの時の驚きは、どう表現して良いのか分かりません。
皆さんがニコニコしながら「乾杯」と言われたので、私も恐る恐るワインを飲んだのでした。
「どうですか?」
そうほほ笑みながら聞かれると、私も思わず頬が緩んでしまうのでした。
「美味しい!」
集まった人、いえ、霊達が拍手しながら私に話しかけてきました。
その時、聞いたのですが、私のように地上を離れて間もない霊魂達は意識に地上の記憶が残っています。そのために、ワインだと思えばワインの味がするのだそうです。
こちらの世界は思った物が何でも出てきます。ですから、食べたい物を念じれば、すぐに出てくるのでした。その上、かつて食べた記憶さえあれば、それと同じ味がするのでした。
残念なことに、食べた記憶のない物は、自分が想像した味しかしないのでした。
私はこの世界が好きになりました。
死後の世界も慣れれば良い世界のようです。
もっとも、誰がどんな世界に行けるのかは個々に違うようです。
それは、各人の問題と言えましょう。
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