死 後 の 世 界 の 生 活
人間は死後、しばらくは夢を見ています。それを、「冥界」にいる、と呼ぶ事があります。
しかし、実質的に死後の世界の住人になるのは、次の「幽界」に入ってからです。
3. 幽 界 で の 睡 眠
幽界に入ったばかりの私、の目を通じて、幽界の生活を覗いてみましょう。
私は夜になると寝ないといられないタイプです。
というのも、やはり、区切りというか、一日の終わりがないと、どうもしっくりこないのです。それなのに、こちらの世界には夜がありません。なぜだか、ずっと明るいのです。そうなると、どうも気持ちが落ち着かないのです。
私は先輩に尋ねました。
「どうしたら、眠ることができるのでしょうか。」
すると、私から見て年下に見える男性の霊魂がこう言いました。
「寝ようとしても無理ですよ。基本的に地上にいた頃とは使っている体が違いますからね。眠る必要がありません。それなのに、寝ようとしたってどうしようもありませんよ。」
私はがっかりしました。考えてみると当たり前のことでした。私は肩を落としながら、とぼとぼと歩いていました。
100メートルも歩いたでしょうか。いつも挨拶する初老の紳士に出会いました。この人、いや霊魂は大変な博学で、分からないことはこの人に聞けば良い、と皆が言う程なのでした。
その紳士が答えてくれました。
「睡眠は霊には不必要だなあ。だからといって出来ないというわけでもないがなあ。」
「どういうことですか。」
「ようするに、この世界は思えば何でも現れる。つまり、それが命ある物でない限りは自分の心で描いた物が少なくとも自分の目には映るのじゃ。」
「はあ。」
私にはあまり良く分からなかったのですが、とにかく、相槌を打つのでした。
紳士が話を続けました。
「要は、自分が寝るベッドを作って、そこで、眠る、と念じれば良いのだよ。」
「それでいいんですか。」
私はあっけに取られるばかりでした。それでも紳士は平然とこう言いました。
「自分の念で他の人間を動かそうとする、相手も念を出す。だから、なかなか思いどおりにならん。だがのう、自分で自分に命令する分には誰も意義を挟まん。
そうなれば、たとえ、本当には寝ていないとしても、本人は寝たつもりになれるのじゃ。」
「そんなことあるんですか。」
「まあ、騙されたと思って、一度試してみるんじゃなあ。」
紳士は笑いながら行ってしまいました。
私は早速、念でベッドを出すと、自分に眠ることを要求したのでした。
果たしてどのくらい経ったのでしょう。私は眠りから覚めていました。おそらく、4〜5時間は経ったと思えました。
ところが、すぐ側にさっきの紳士が立っていたのです。
紳士が言いました。
「寝た気になれましたか。」
「えっ?」
驚く私に紳士がこう言いました。
「私がすぐに引き返したからいいものの、先にちゃんと、目が覚める、と言っておかないと、ずっと、目が覚めませんよ。」
私はどう返事をしようもありませんでした。
何と、私はほんの数秒しか目を閉じていなかったのでした。
やっぱり、不思議な世界ですね。
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