6、 あ る 霊 術 家 の 霊 魂 の 話


 
霊魂の世界には霊術という技術を用いる人達がいらっしゃいます。困っている人のために、祈祷をしたり、中には呪いをかけたりする人までいるそうです。

 今回は、そうした霊術に関する話をご紹介します。
 この話は霊魂から聞いた話です。本当にあった話かどうかは私には分かりません。
いずれにしても、霊魂からのメッセージが強く感じられると思います。





 ある女性の霊術家が年を取って病気に勝てなくなりました。まわりには、世話になったという人達が大勢集まっていました。病気を祈祷してもらった人もいれば、受験を祈願してもらった人もいて、顔ぶれは実に様々でした。
 やがて、お葬式も終わり、人々も霊術家のことを少しずつ忘れて行きました。

 そんなある日の事でした。霊術家はかつていた家に戻って来ました。どうやら、地上に残した家族の事がよほど気に掛かったようで、霊魂の世界の先輩の注意を無視して、地上に戻ってしまったのでした。
 霊魂というものは住み慣れた家が分かるのか、その霊術家は、結局、自宅の玄関に立つ事ができたのでした。

 それからというもの、この霊術家は深い溜め息ばかりつくことになりました。
 別居していた家族は早くも自分のことを忘れてしまい、あれほど親身になって相談に乗ってあげた人達はといえば、こともあろうに、他の霊術家の元に通っているのでした。自分は死んだのだから、仕方がないようなものですが、相談者の中には、この霊術家の悪口を言っている者さえいたのでした。
 (恩も何もないものだ。ろうそく代程度で祈祷してやった者さえいるのに、死んでしまえばこのざまか。)
 霊術家は心底怒ったのでした。

 それから、霊術家の復讐が始まりました。まずは、恩を忘れて悪口を言った中年の女性でした。霊術家の霊魂はしつこく付きまとい、チャンスを狙いました。そして、ある時、スッと、その女性の身体に入ったかと思うと、いきなり、その人の夫に悪口を言いました。もっとも、霊魂はすぐに人の口など使えません。女性の口は霊魂が思った通りには動きませんでした。それでも、結果としては、大げんかになりました。
 そして、霊術家の霊魂の復讐が完了しました。
 中年の女性は夫と離婚し、その後、各地を転々としているうちに消息が分からなくなりました。

 ところが、霊術家の心は一つも満たされていませんでした。今度は、生前、自分の事をまるで詐欺師であるかのように言って、近所に悪い噂を流した「あの女」の番でした。

 霊術家は困っている人の為と思い、料金も決めずに志程度で奉仕していました。ところが、いつの頃からか、世間から白い目で見られるようになり、そのために、家族から嫌がられ、孫が学校で苛められるから仕事を辞めてくれ、とまで言われていたのでした。そのため、息子夫婦と折り合いが悪くなり、結局、別居して一人で暮らしていたのでした。

 霊術家は、世の為人の為、と思い、仕事をしてきました。死ぬまで贅沢などできませんでした。他人の喜ぶ姿を見て誇りを感じていたのです。それなのに、気が付けば近所で陰口を言われ、孫が学校へ行きたがらず、わが子からは嫌がられ、孤独に耐えながらこの世を去ったのでした。

 その上、あれほど真剣に祈祷し、一緒に悩み、まじめに相談に乗ってあげた人達は自分を裏切り、また、陰口を言った者達は、宗教や霊能力者は本当は詐欺師だ、と言って笑っているのです。驚いたことに、霊魂なんている訳ない、と霊能力者を変人扱いし、馬鹿にしているのです。

 霊術家の霊魂の心は爆発してしまい、もはやとどまることがありませんでした。霊魂にとっては地上とは時間の感覚が違うのか、それとも心が変わりにくいのか、とにかく、怒りの感情は激しくなるばかりでした。

 そんな時でした。霊術家の霊魂はかつての相談者の後を付けていた時、ある高級な霊魂の部下に出会えたのでした。この出会いがなければ、霊術家の霊魂の心は長く晴れることはなかったに違いありません。
 何はともあれ、一人の霊魂が救われたのでした。

 しかし、それでも、この霊魂は顔をくちゃくちゃにして上位の霊魂に訴えました。
 「あんな奴らを神仏はどうして懲らしめようとなさらないのですか。」
 上位の霊魂は答えました。
 「私達もその事は感じています。上の方々に必ず伝えておきます。」
 霊術家の霊魂は行くべき世界へと戻りました。



 
さて、今の世の中はこのままで本当に良いのでしょうか。
 高級霊魂達は、どう思っていらっしゃるのでしょうか。
 私の問に、監修者がこう答えました。

 「自分でまいた種は自分で刈り取らねばならない、と、かつてイエスが言っている。」

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