「支那」

 現在、多民族国家・中国を構成している諸国・諸地域のうち、東南部の四分の一程度を占め、四千年の歴史を有する漢民族の国に対する日本語の呼称。満州語のnikan grun, モンゴル語のkitad ulus, チベット語のrgya nag等に相当。日本において、中国の一隅だけを指して「中国」と呼び、中国人を構成する諸民族のうちの一つだけをさして「中国人」と呼ぶ用法は、この「支那」を機械的に「中国」に置き換えた結果生じた用法であるが、誤用である。中国の人々自身は「中国」「中国人」を多民族国家・中国とその国民という意味でのみ用いているので、注意が必要である。
 ところで周知のごとく、「支那」という呼称は中国の人々が蔑称として大変嫌っており、可能なかぎり使うべきでないのはいうまでもない。日本語の一般的な習慣では、漢民族の固有名詞はオリジナルの漢字表記はそのままに、日本音で読むというのが一般的である。かつて「支那人」と呼んだ人々には漢人、漢族、華人などの立派な自称があるので、われわれも日本語としてこの表記をそのまま取り入れることができる。しかし漢民族の人々が現在「支那」に対し自称としていかなる固有名詞を付しているかについては、ここ数年懸命にしらべているのであるが、ついに回答を見いだせないでいる。
 このサイトにおいて「支那」の呼称を使用する理由は、単に新たな呼称を我々で勝手に作ることができないため、旧来からの手持ちの呼称を使わざるを得ないという点に尽きる。
 「支那」の国に対し、漢民族の人々が、王朝や政体の変遷を越えた、通時的な呼称としてこのような自称を使用しているということをご教示下さる方があれば、ただちにその呼称を利用したく思いますので、ご存じの方がいらっしゃいましたら、よろしくお願い申し上げます。

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