序  文 

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 序  文 

 一九五九年三月にチベットを出発する以前においてさえも、私は次のような結論に達していた。すなわち、近代世界の変化する状況下において、チベットの政治制度は、選出された人民代表が、国家の社会、経済政策の立案、指導に、より効果的役割を果たし得るほどに修正、改善されねばならない、と。私は、また、これは、社会的、経済的公正に基漣を置く民主的諸制度を通じてのみ達成できると固く信じている。私にとっても、私の国民にとっても、不幸なことに、われわれのあらゆる努力は、最悪の形の植民地政権をチベットに樹立した中国当局によって、挫折させられた。
 インド到着直後、私は、チベットの人々に新しい希望を与え、また、チベットが自由と独立を回復したとき、いかに統治されるべきかの新しい栂念を与えるため、憲法草案の作成を決意した。この目的のため、一九六一年十月十日、私は憲法の根本原則の椒要を発表した。これは、インドおよび海外在住の全チベット人、特に、現在、亡命中のチベット人たちによって選出された諸代表に熱烈に歓迎された。その後、これらの諸原則に基づき、一般民衆、僧俗譜代表らと協議し、本憲法は詳細にわたり検討作成された。これは、釈尊の説かれた教義、チベットの宗教界、世俗界の伝統的通産、および近代世界の考えと理想とを考慮に入れたものである。このようにして、それは、チベットの人々のため、公正と平等に基づく民主主義制度を確保し、彼らの文化的、宗教的、経済的進歩を保証することを意図したものである。
 チベットが再び自由、独立を回復したら、直ちに、本憲法に制定する政治制度が、わが国民同胞の利益のために、確立されるよう私は心から希望する。そのあとで、国民議会の希望と抱負に従って、本憲法に最終的な形が与えられるであろう。
 本憲法は、チベット国民の中国侵略者に対する反乱四周年記念日に際し、私によって布告された。わが国民の栄光と勇気を特色づけたあの日、私は皆に対して、私たちが直面する情勢について説明した。いま、再び、私は、チベット内外のわが国民に訴える。団結した、真剣な努力によって、愛する祖国の自由を取り戻すための責任を、私たち各人が追わねばならない、と。私たち全員は、「最後には、真実と正義が勝つ」という釈尊の教えを思い出すべきでる。

  ダライラマ署名
   インド、パンジャブ州、アッパー・ダラムサラのスワルガシュラムに於いて


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