近世チベット・ポロン地方の家分文書
「カンカル家文書」の保存と研究 研究計画(2012)

 以下には2012年春の段階での計画 (「平成24年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書」の一部として作成したもの)をほぼそのまま収録します。

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平成24年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書2012年4月18日


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研究の目的
 近世期に西チベットのポロン地方において勃興した富裕な平民の一族カンカル家には、300年あまりにわたってポロン地方を中心とした西チベット各地の地方官衙に奉職してきた一族が残した四十数点の文書(地方官衙とガンデンポタン(チベット中央政府)との間でやりとりされた公文書や各種の書簡)が伝承されている。
 本研究は、カンカル家が伝えてきたこの家分文書を対象に、その保存と解読、活動を目的とし、 等のの作業を行い、文書そのものをカラー写真と活字体テキストで公開(Webサイトの設置および紙媒体での公刊)するとともに、文献学的な整理と解読・翻訳の結果を報告書として公刊することをめざす。
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平成24年度の研究実施計画

 本年度は、前半を文書の保存作業にあて、後半より文献学的な整理と各文件の読解作業に着手する。

【文書の保存】
文書に対するデジタル保存は、デジタルカメラによるカラー写真での撮影と、文書を活字に起こしてテキスト化する作業の2種類の作業を行う。写真撮影は、文書の所有者でもある白館戒雲大谷大学名誉教授の監督下に実施する。テキスト化の作業は、文献学的な整理のための作業と並行してすすめる。文書の撮影の終了後、研究会を組織し、文献学的な整理の作業に着手する。

【文献学的な整理】
各文件ごとに 発令者・受領者・発令年月日・内容・サイズ・書体・形状・紙質などを確認し、目録を作成する。

【文書のテキスト化】
この年度は、筆記体で書かれている原文を、チベット語ウチェン体(=活字体)およびローマ字転写にてテキスト化する作業を中心とし、余力があれば、個別の文件に対する翻訳にも着手する。

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平成25年度の研究実施計画

 引きつづき文書の読解作業を継続する。  「カンカル家文書」は、チベットの法制や地方統治、社会の実態がゾン(県)レベル、集落レベル、家レベルにおいて記されており、従来の法典史料には見いだせない役職名、税目名が頻出し、翻訳に際しては、訳者たちが新たな訳語を決めていく作業が多数必要となる。

 本年度の作業では、解明できない用語、用例、文体、および同定できない地名を整理し、現地調査の準備をしておく。

 また、研究の成果発表および発展のため、海外の研究者を招いて国際シンポジウムを開催する。招聘者としては、中国社会科学院歴史研究所助理研究員の青格力(チンゲル)氏を予定しており、本人に依頼をし、了解を得ている。

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平成26年度の研究実施計画

【現地調査】
前年度に解決できなかった用語、用例、文体および同定できない地名を解決するため、夏に現地調査を実施する。調査は、カンカル家の関係者、1959年以前に中央政府の官僚、地方官衙の吏員として当時のチベット公文書の読解について訓練を受けた経験のある人々などをインフォーマントとする聞き取り調査と、地名同定のため、チベット本土(西藏自治区ポロン地方)に赴いての現地調査を行う。調査国はネパール、インド、中国の三ヶ国、調査機関は2〜3週間とする。

【「カンカル家文書」の公開】
文書を、現物のカラー写真、チベット文字ウチェン体テキスト、ローマ字転写テキストの3種類で公開する。大谷大学(佛教大学)のサーバー上にWebページを設けてインターネット上で公開するとともに、紙媒体でも公刊する。

【報告書の公刊】
報告書として、文書そのものの保存・公開を目的とした「写真・テキスト編」と、文書の読解・分析から得られた知見を公開する「研究編」を作成する。

将来的には『研究成果公開促進費』に申請して研究成果の出版を目指す。

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