【文書の保存】
文書に対するデジタル保存は、デジタルカメラによるカラー写真での撮影と、文書を活字に起こしてテキスト化する作業の2種類の作業を行う。写真撮影は、文書の所有者でもある白館戒雲大谷大学名誉教授の監督下に実施する。テキスト化の作業は、文献学的な整理のための作業と並行してすすめる。文書の撮影の終了後、研究会を組織し、文献学的な整理の作業に着手する。
【文献学的な整理】
各文件ごとに 発令者・受領者・発令年月日・内容・サイズ・書体・形状・紙質などを確認し、目録を作成する。
【文書のテキスト化】
この年度は、筆記体で書かれている原文を、チベット語ウチェン体(=活字体)およびローマ字転写にてテキスト化する作業を中心とし、余力があれば、個別の文件に対する翻訳にも着手する。
本年度の作業では、解明できない用語、用例、文体、および同定できない地名を整理し、現地調査の準備をしておく。
また、研究の成果発表および発展のため、海外の研究者を招いて国際シンポジウムを開催する。招聘者としては、中国社会科学院歴史研究所助理研究員の青格力(チンゲル)氏を予定しており、本人に依頼をし、了解を得ている。
【現地調査】
前年度に解決できなかった用語、用例、文体および同定できない地名を解決するため、夏に現地調査を実施する。調査は、カンカル家の関係者、1959年以前に中央政府の官僚、地方官衙の吏員として当時のチベット公文書の読解について訓練を受けた経験のある人々などをインフォーマントとする聞き取り調査と、地名同定のため、チベット本土(西藏自治区ポロン地方)に赴いての現地調査を行う。調査国はネパール、インド、中国の三ヶ国、調査機関は2〜3週間とする。
【「カンカル家文書」の公開】
文書を、現物のカラー写真、チベット文字ウチェン体テキスト、ローマ字転写テキストの3種類で公開する。大谷大学(佛教大学)のサーバー上にWebページを設けてインターネット上で公開するとともに、紙媒体でも公刊する。
【報告書の公刊】
報告書として、文書そのものの保存・公開を目的とした「写真・テキスト編」と、文書の読解・分析から得られた知見を公開する「研究編」を作成する。
将来的には『研究成果公開促進費』に申請して研究成果の出版を目指す。