帰ってきたら庵がおかしかった。
ご飯はきちんと用意されている。ほくほくとした良い匂いがする。これはいつも。
風呂も沸かしてくれているだろう。見ると風呂の湯沸し機の電源が入っている。これもいつも。
玄関先で俺が入ってくるのをまっていてくれていた。気配でわかったんだろう。これは…まあ、たまに。
でも、裸エプロンで座りこんで俺を上目遣いして見てるのはどういうことだ???
これは、絶っ対にない!!
「きょぉ…おかえりvまっていたぞ…」
「いっ、いいいいいいおりぃぃっ!???///」
くたっと俺に抱き着いてくる。い、いったいどうしたってんだぁぁぁーーー!!!??
「ど…どうした?!おまえ、絶対おかしいぞ!?」
「京が…帰ってくるのを待っただけだ…。…嫌か?」
俺は首がちぎれそうなほど横に振った。
いや、嫌じゃないんだけど!!かなり嬉しいんだけど!!なにかおかしくないか!?
「…嬉しいっ!京!!」
俺が首を振ったのを見て庵は満面の笑顔をするとますますぎゅっと俺に抱きついた。
…ぷつん…。
「いおりぃぃぃぃぃーーーーーーーー!!!」
「ああ、こんな所で…っvv」
なんかもうどうでもいいっ!!!庵は今日は機嫌がよかったってことでっ!!!
庵はいやがるそぶりも見せず、俺にひっついていた。
……。
ふと感じる微かな殺気。
俺は庵を引っぺがすと、飛びのいた。……この気は……。確か……。
記憶の糸を手繰り寄せて答えにたどりつくと、全身の血がサーーーっと引いていくのを感じた。
「……………もしかしなくても……廉(れん)?」
「…ばれたか…」
「ばれるわ!!」
八神廉は庵の影の存在。八神当主である庵をいろんな面でサポートする。
影だから庵そっくりで、雰囲気さえ上手く作って、髪を赤くしてしまえば、庵のそっくりさんのできあがりってやつだ。
普段は髪が黒くって、それで見分けがつく。
…今俺はそれに上手くだまされたわけで…。
「この位でだまされるなんて、庵への愛もそんなもんか?いっそ俺に乗り換えろよv」
「ぜーーーーーーーーったい嫌だ!!!ちかよんな!!気持ち悪ぃ!!」
そんで、何故か俺のことを好きだとか言ってくる。
庵と同じ顔で言われると、普通なら嬉しいんだけど、コイツの場合は…。
「なんで庵はよくて俺はダメなんだ??俺は草薙を愛してるのに…」
廉は、俯いて、一瞬、泣くような雰囲気を出した。
でも、ここで油断して、慰めようとしようもんなら…。
「殺したいほどなぁーー!!!!」
「それだってんだよ、くそっ!!!」
これだ。
廉が急に攻撃態勢に入ってくるのにも慣れたもんで、すぐにかわす。
でもいまだにこれがマジなのか、冗談なのか、ただのアブナイやつなのかわからねー。
庵も俺のこと殺す殺すって言ってるけど、庵はいいんだよっ!!
嫌いだって言われても、俺は好きだぜ?って言うと赤くなるしvv可愛いからなーーvvv
とにかく、中身が違うんだよ、中身が!!
「……でも、たまには言うことなんでも聞く庵ってのも良いんじゃないか?」
「・・・は?」
ニヤリとして今度は廉が迫ってくる。俺は嫌な予感がしてずるずると後ろに下がった。
「フェラでも騎乗位でもなんでもしてやるぜ?どうだ?」
「ふ、ふざけたこと言ってんじゃんーよ!!大体フェラや騎乗位くらい庵だっていくらでもやってくれる…」
どかっ!
「いってぇ!!なにすんだよ!!」
頭に激痛を感じて振り返ると、そこにはいつ帰ったのか、愛しの庵の姿があった。
「ああ、いおりぃぃぃぃーーーーvvvvv」
「いおりぃーじゃないっ!!何、本人のいないところで好き勝手なこと言ってるんだ、お前らはっ!!」
「随分スキモノになったんだな、庵…」
「違う!信じるな!!」
庵が真っ赤になって怒鳴りちらしてる。でも真っ赤になって言われても説得力に欠けていた。
「え?何?マジでやってくれんの?」
「いや、2週間に1ぺんくらいしか…」
「だから、勝手に話を進めるな、そこ!!!」
なんかもう、めちゃくちゃになってきたんで、庵が咳き一つして俺達を制した。
「どうでもいいが、廉。お前、本家に連絡無しでここに来ただろう?仕事もほっぽって」
「だって、草薙に会いたかったんだも〜んv」
「「気色悪いこと言うな!!」」
珍しく俺と庵の言いたいことがだぶった。
「とりあえず帰れ!お前がくるとますますうるさくなって近所迷惑だ!」
「そういって、庵は俺をのけ者にして草薙とラブラブモードに入るんだな…。そんで、それこそ近所迷惑に毎晩毎晩喘いで…」
「は、は、は、入るか〜〜〜!!!ばか者!!///」
「そうだよっ!ラブラブすんの!!だから早く帰れよな!!」
ばきぃっ!!
また庵に殴られた…。
「ふん!!絶対素直にはかえらんだろうと思って、助っ人を連れてきたのだ!だからさっさと帰って本家に連絡しろ」
?助っ人?
そういうと庵は玄関のほうにスタスタ歩いていってある人間を連れてきた。
廉を見ると、さっきまでの態度はどこへやら、なんだか、ちょっと青ざめていた。
現れた人間は廉の顔を見るなり廉に飛びついた。
「廉ちゃーーーん!!!なんで京のとこなんかくるんだよぉぉーー!!俺とどこがちがうんだよ〜〜!!」
「ギャーーー!!や、やっぱりお前かっ!!」
「あ!!宮(みや)じゃん!」
草薙宮。俺の分身。もちろん、コイツも影だから俺とそっくりなんだ。
どこがいいのか知らないけど、廉が好きらしい。でも宮に言わせると、俺が庵を好きなのの方が信じられないって言うんだ。
…なんで??庵の方がだんぜんいいじゃん!!
宮はちょっとくせのあるやつで、廉はコイツが苦手なんだ。
庵が草薙側の宮に頼むなんて、さすがにちょっと嫌だったろうけど、
こいつを連れてくるでもしないと、廉はここに住み着いちまうしな…。
まあ、別に宮も庵のこと嫌いじゃないし、庵もそうだからいいんだろうけど。
「なにがどこが違うだ!全部違うじゃねぇか!!!」
「……俺から見ても、たいしてかわらんと思うが……」
「…庵、ひでぇ……」
ちょっとショック…。おれ、こんなに趣味悪くねぇって・・・。
「宮、悪いが、連れ帰ってくれるか?」
庵が言うと、宮は人のよさそうな顔でにっこりと微笑んだ。実際、人懐っこいやつだから人に慣れやすい。
例えるなら、真吾みたいな。(中身が真吾の俺の顔したやつなんて嫌だけど…)
「うん、そうする。こんなところにいたら京に襲われちゃうよ?廉ちゃん」
「おそわねぇーよ、バカ!!(-□-lll;)」
「いいんだよ、別に襲われたってvv草薙にならなvv」
「おそわねぇっつってんだろ、オイ!!!」
俺が襲うのは庵だけなんだよ!!…って言おうと思ったけど、また殴られるからとりあえずやめといた。
なんか、話がまとまらずに、みんなでギャーギャー言ってる。庵がいい加減、機嫌の悪そうな顔になってきてやばい。
「ほら、もう、帰れよな〜!!いい加減に!」
「草薙が抱いてくれるんなら帰ってやっても良いぜ…?」
そういって、廉は俺の一瞬の隙をついて、抱きつくと俺に口にキスしやがった!!!
「ギャ〜〜〜!!!てめぇ、なにしやがる!!!」
口をごしごしとこすりながら、廉からすばやく離れる。
……と、
機嫌の悪そうな人間が約2名。
あ、庵、妬いてくれてる……v?…なんて、言ってる場合じゃね〜〜〜!!
宮からすごい殺気が感じ取れた。
ぷつん…。
「おいっ!!てめぇ、いい加減にしやがれ廉!!!」
宮からはさっきの人のよさそうな雰囲気は消えうせて、廉に向かってズンズン進みよっていった。
「あ……おい、み…宮、落ちつけって…な?」
さすがの廉も、宮のぶちぎれモードには歯がたたない。廉が宮のことが苦手な理由だった。
「るせぇよ!!帰るっつってんだから、俺の言うとおりにしときゃあいいんだよ!」
そういうと、宮は廉のみぞおちに思いっきりパンチを入れる。
ぐっと言う声が聞こえ、廉はぐったりと宮にもたれかかった。
その廉の様子を見て、宮は不気味に微笑むと、
「今夜はお仕置きだからな…?」
と、意味深な言葉を廉にかけた。
……シーン…。
「じゃあ、俺達帰るな?またね!」
宮からはすっかり殺気が消え、いつもの雰囲気に戻っていた。
「あ……ああ…」
肩に廉を軽々担いで、早々と帰っていく。
青ざめた俺たち2人は奇妙な沈黙に包まれ、それを無言で見守った…。
このあと、廉がどんなお仕置きを受けるのかは当人達しか知らない。
「……やっぱりお前に似ているじゃないか……」
「そ…そうか?」
END
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しらす:はがねさん、ごめんなさい、載せちゃいました…。すいません。
こりゃあ、ウチの2P話ですねー。いや、やっぱりギャグは楽しいぞ!!!
なんつっても気が楽!!!
また書いたら貢ぎますね、はがねさん。(私事)
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