ありがとう


「でねー、せっかく差し入れしてあげたのにアンディーったらテレちゃって
なかなかありがとうって言ってくれなかったのよー!
でもね、そこがカワイイってゆーか……って、庵、聞いてるの〜?」

……なんでこんなことになったのだろう……。

俺はただ街中を歩いていただけのはずだ…。
それを舞に捕まってコーヒーまで持たされて何故かノロケ話を聞かされている……。
これは拷問に等しい…。
くそ…こうなったらはさっさと話しを終わらせて帰ってやる……。

「そんな感謝の一言が嬉しいのか……」
「そりゃそうよーー♪」

しまった…返事を選ぶべきだった…。舞は新しい話しの種に顔を輝かせた。

「ほら〜、女の子は『ありがとう』と『ごめんなさい』を素直に言えないと
可愛げがないって言うじゃない?でも、男だって同じだと思うのよね〜。
……庵は素直じゃないわよねー」
「どういう意味だ」
「そのまんまの意味よ☆ちゃんと京ちゃんにお礼とか言ってる?」

ブッ!

俺は飲んでいたコーヒーをふきだしてしまった。突然出てきた名前に驚いたのだ。

「なぜそこでヤツの名が出てくる!?」
「あ、いおりん赤くなっちゃって〜☆だあ〜って、恋人でしょ〜?2人」
「ちっ、違うわーーーー!!どこでそんな間違った知識を仕入れてくるのだ!」
「まあ、いろいろね☆それより、お礼とか言ってないんなら、
たまに言ってあげると喜ぶわよ☆」
「………」

もっと言いたいことがあったが、無駄な気がしたので言わずに言葉を飲みこんだ。

喜ぶ?

お礼ごときで?

俺はやっと解放されて自宅に帰って来た。しばらくヒマを持て余していると、
京が当たり前の様にやってきた。

「よーーー!庵ーーー!!会いたかったぜーー!1日ぶりーー!」
「貴様、何日か会えなかったらどうなるんだ、いったい……」

入ってくるなり抱き着いてきた京に聞くが、特に返事もせず(期待していなかったし)、
持ってきた袋からいろいろ取りだした。

「あのな〜、今日、庵が好きそうなワイン売ってたんで買ってきてやったんだぜー!
それとつまみも☆」

頼んでないが…そう言おうとしたとき、舞の言葉を思い出した。
『お礼とか言ってないんなら、たまに言ってあげると喜ぶわよ☆』
本当なのか?そのくらいで……。

「あ……」

「ん?何?」

「……ありがとう………」

「…………………」

ほら反応がないぞ。変に思っているんだろう。
そう思い、ふと顔を上げるとめずらしく(?)驚いて赤くなった京の顔があった。

「京?」
「え、あ、ああ……ど、どういたしまして……」

庵の突然のお礼にどぎまぎしながら返事を返してくるその反応が面白い。
こんな反応が見れるならたまーーーーーーーーになら素直にしているのもいいか。
そう思った。

END

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しらす:最後で力尽きてますね、こりゃあ・・・。短い小説・・・。
ウチの二人ってば、こんなのばっかり!!手をつなぐのにもきっと
赤くなりますね!ええ!?誰だっつーの!!

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