ヒマ


「ふう…」

庵ができあがった歌詞をまとめ、疲労からのため息をつく。
それももう何度目かわからないほど何回もついていた。
でもそれも今ので最後だと思うと、庵は気が軽くなった。


数日前から庵はバンドの曲作りやら、バイトやら、なんやらがかさなって、
いつもの倍は忙しい日々を送っていた。

もちろん、某ワガママ男に構っているヒマなど、今回ばかりは本当にない。
それで事情を説明して黙っているおとなしいやつなら良いのだけど、
もちろんそうではないことは庵が一番良く知っていた。

何日かはおとなしくしているからと言われ、仕方なく家においていたが、
なにかというとちょっかいを出してくるので追い出したのだった。

もちろん、不満そうな顔をしていたが、渋々自宅に帰っていった。
その追い出した日以来、京は来ていない。


『さて……どうするか…』

京が不機嫌になっていることはあきらかだろう。
自分は別に悪い事をしていたわけではないのだから、機嫌をとるようなことは
したくないのだけど、あいつを不機嫌にさせておくと、決まってみんなに迷惑をかける。

「しかたない……」
夕方6時。学校にいるとも、自宅に帰っているとも考えにくい。
庵は京がいそうな所を考えて家を出た。


「かえらねーって言ってるだろ!ほっとけよ!」
駄々をこねてる子供みたいだな…。いや、デカイ分、余計にたちわるいかも…。
紅丸は困り果ててそんなことを考えた。

「いや、そりゃあ、ほっといてあげたいのは山々なんだけどね。
なんでいっつもオレの所に来るんだよ…」
「だって落ち尽くし、紅丸の作るメシ、庵の次に美味いし…」
「…………そりゃどーも…………」

あんまり嬉しくないって…。
本当にケンカしてんのかな……。
なんか毎回毎回痴話喧嘩に巻きこまれてる気がするんだけど……?


ピーンポーン

「……八神じゃない?」
「紅丸っ!!庵だったら、俺はいないって言えよ!!」
「ハイハイ、オッケー」

とたとたとた……。がちゃ。
「どなたですかー……っと……」

ドアを開けた途端に目に映る鮮やかな紅。
顔を見れば、少し困った様にかすかに笑っていた。

ああなんか。
京じゃないけど……やっぱり綺麗だよねぇ。

「電話をしてから来ようと思ったのだが…悪いな。京はいないか?」
京がここにいた場合、電話をして逃げられては困るしな。

「あー、いるよ。数日前から泊まりこみで」
「いきなりバラしてんなよーーーーっ!!!」

奥から大きな声が響く。
このバカっぷりも久しぶりだな…。

「ほら、京。わざわざハニーが迎えに来てくれたよ。男としてそれで良いのか?」
「…誰がハニーだ……?(怒)」
紅丸はわざと庵の言葉を聞かずに京の首根っこを捕まえた。


「じゃあ、邪魔者は仕事に行って来るけど、ゆっくりしてってよ。じゃあね」
ばたん。

がちゃ。
「あっ、そうそう、くれぐれも、ここで始めないでね!!家に帰ってからにしろよ?」
「……………………何をだ」
「じゃ、行ってきまーす」
ばたん。
そう言い残すと紅丸は二人を残してモデルの仕事に行った。


「…やる事は終わったのかよ?」
「ああ。全部終わらせた」
「ふーん…」

……シーン……

なんだかお互い、少しだけ照れくさいような、気まずいような気になった。
とりあえず、立っててもしょうがないので、ソファーに座ってみる。

……シーン……

でもまた沈黙がきてしまった。
こういう沈黙が嫌いな京が口を開く。

「……なあ、いお…」

こて。

何を思ったか、庵が京にもたれかかって来た。

「いっ、いいいいい庵っ!??
///
これくらいのことで今更照れることもないんだけど…。庵だったらどきどきするわけで…。

「お、おいっ、庵…」
「すー……」
「……………ハイ?」
「すー…………」

庵は京の肩に頭を乗せてすやすやと眠ってしまっていた。
そうか、忙しかったんだもんな……。あんまり寝てないんだな…。
仕事…わざわざ早くおわらしてくれたのかも…。

「悪かったなー……。…おやすみ」


京はこの後、無防備な庵の姿を見て理性を保つのが大変だったとか。

 

END

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しらす:久しぶりの小説。無駄につまんなーい。イキナリパソ打ちで書きましたから!
なんだかなー。この話し……。