「うーん…」
京が悩んでいるのを見たのはどれくらい久しぶりだろう。
と、そのくらい久々な行動なので、オレは持っていたベースを力なく落としてしまった。
慌てて起こすと、その音でやっと京は俺が帰宅したことに気づいた。
「あ、庵、お帰り」
「ああ…なにをしているんだ?」
良く見ると京の手元にはごくごく普通のカレンダー。
しかし、異様なのはそのカレンダーにしてある赤い丸だった。かなりたくさんの日に丸がついている。
カレンダーを取り上げて見ると、他の月にもたくさんの丸がついていた。
「どうしたんだ、随分忙しいんだな?」
「ああ、それ、予定じゃねぇよ」
…相変わらずこの男の言うことは分からない。ではなぜこんなに丸がついているのか。
疑問を顔に出すと京はにっと笑ってある日の丸に指を指した。
「これは、オレが初めて庵にプレゼントをした日」
「……?」
また違う日を指差して、
「これはKOF95で久しぶりに庵に再会した日」
「ああ…この日だったか?」
「うん。これな、全部俺と庵の記念日なんだvvvちょっとカレンダー貰ったから」
屈託のない笑顔に少し目眩がした…。下らん…。そんなことを一生懸命…。
「その記憶力を勉強にまわせば学年1位も夢じゃないかもしれんぞ」
「なに言ってんだよ。庵とのことだから覚えてんだろ」
「………………」
素の顔であっさりと言われて、思わず赤くなる。
しかし言った本人は特別なことを言ったつもりはないらしく、また作業に戻っていた。
恥ずかしいことを平気な顔をして言うな、ばか薙!!///
「でさー、庵に聞きたいことがあったんだけど、俺達が初めてキスしたのってこの日だったよなー?」
また京がとある日を指差して確認の為に言った。
…知るかっ!!/// そんなこといちいち覚えてるわけないだろうっ!!
でも、京が指差している日付に違和感を感じた。
ああ、そうか……。
そういえば、そうだったな。
俺はひょいっと京からペンを取り上げて、ある日に丸をつけた。
『3月25日』
「この日だ」
「えぇ?そうだっけ?庵の誕生日じゃん」
「俺のことでも覚えていないじゃないか」
俺はニヤリと勝ち誇ったように笑ってやった。京が少しだけ悔しそうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻る。
「庵も、俺とのこと覚えててくれてんだな」
「…う、うるさいっ!!言われたから思い出しただけだっ!」
「それでも嬉しいって」
至極幸せそうに。日向にいるかのようなあたたかさで笑う。
一体何がそんなに嬉しいのか。
そう考えると、ただ単純なだけなんだという結論にたどり着いて、自分まで自然と笑みがこぼれた。
『庵、庵っ!たんじょうび、おめでとう!』
京がぱたぱたと嬉しそうに庵の元へ走ってきた。しかし、当の本人は暗い表情で膝を抱えて座っている。
『うれしくない…』
京にとって、この返答は意外だった。普通、幼い子供ならば、誕生日は嬉しいものだろう。
『え?なんで?プレゼントとかもらえたり、ケーキ食べれたりするじゃん』
『だって、だれもおいわいしてくれないもん…。俺ね、のろわれて…るんだっ…て。
よく…わかんないけど…俺、いない方…が良かっ…たのかな…ぁ?』
庵はぐすぐすと泣き始めてしまった。庵は自分が祝ってもらえない理由も何も知らない。
ただ、祝って貰えないのだ。
ずっと一人で過ごしてきた誕生日。
『……そんなことないっ!!!絶対ないよ!だって俺、庵がいないといやだもん!』
『京ちゃん…』
純粋な京の気持ちが伝わってきて庵の涙はいつのまにか止まっていた。
それくらいの力がある意思の強さ。
おもわず信じてしまう、強い瞳。
『俺がずっとずっと、大きくなってもいっしょにいておいわいしてあげる。だから…泣かないで?』
京はTVの見よう見真似で庵の唇に、自分のそれを付けてみた。すぐに離して庵を見たら、
庵はビックリした顔をして京を見ていた。
『あ…あのね、好きな人にすることなんだって…俺、庵好きだから、してみちゃった…』
『…京ちゃん、これって女の子にするんだよ…』
『そ、そうなの?…でも俺、庵が一番好きだよ?』
『…俺も京ちゃん大好き……』
『ホント?!じゃあいいじゃん!』
そんなに簡単な答えで良いのか。庵は思わず笑ってしまった。
庵が笑ったので京も嬉しくなって一緒に笑った。
京の単純さにずっと救われてきたのかもしれない。もちろん単純なだけではないことはよく分かっているけど。
自分が悩む所で京はいとも簡単に答えを出してしまう。
それで庵は救われることも多かった。
単純にスキって言えると良い。
でも自分にはなかなか言えないから、
せめて忘れないでいたい。
記念日を作ろう。
じゃあ今日は「お互いがお互いをこんなに好きな日」。
END
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しらす:うっわー、久しぶりの小説で、なんじゃコリャー…。
ヒクよこれ…。(禁句) 小説は基本的に全部ゴミ箱行きにしたいのが本音ですが、
それじゃあ「NOVEL」が更新されないので…。
即席で書いた小説なんで、本人にも意味なんかさっぱりです。ホントに。
いえ、意味ないです、はい。
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