夏氷


珍しく朝早く起きたと思ったら、さっきからぼーっとニュースを見ている。

『今日は夏氷の日だそうですね』
『ちょっと無理矢理な語呂合わせですが』
『では、全国のいろいろなかき氷を紹介していきましょう』

…あ、嫌な予感。

「庵ー」
「……なんだ?」
「かき氷、しよう☆」

ああ、やっぱり…言うと思った。
こういうのに影響されやすいやつなんだ。

「家でやるつもりじゃ、ないだろうな?かき氷器なんて、家にはないぞ」
「えー、マジかよー。じゃあ、買ってこようぜ」
「断る。すぐに飽きて食わなくなるんだ。目に見えている」
「飽きね〜って!な!?」

チラッと目を合わせると、キラキラした目でこっちを見ている。
いつもならここでしょうがないと買ってやるが、
あまり甘やかすのも良くない。(お母さんみたい…)

「俺は買うつもりはないからな。買いたいならお前が買って来い」
「いーじゃん!かき氷器くらい」

だんだん面白くなさそうな顔になってくる。
どうしようもなく子供だな。

「…作っても食わせてやらねーからな!」
「いらん」
「後悔すんなよ!!行ってきます!」

ばたん!
勢いよく飛び出して行った。まったく、言い出したら聞かないやつだ。
しかし、まだ早いから売っていないだろうに。

……やれやれ。
仕方なく、自分も出かける。
……俺はもしかしたら、あいつに甘すぎるのかもしれない。(もしかしたら!?)

きっと、あいつのことだから……。




やっと、店が開き始めて、ドラえもんのかき氷器を買うことができた。
これでかき氷が好きなだけ食えるぜ!
買って食うよりお徳な気になるしな!

早速、家に帰って、庵を探す。
あいつ、いらないなんて言ってたけど、俺が食ってるの見てたら
食いたくなるに決まってるんだ!

「いーおり〜〜?ただいま〜〜」
でも、いくら呼んでも、庵は出てこない。
聞こえてないのかな?と思って、ちょっと探してみるけど、やっぱりいない。

出かけたのか?…つまんねーな…。

しょうがないから、一人でかき氷。
そのうち帰ってくんだろ。

がりがりがりがり……。
バラの氷を入れて、削る。しょうもないことだけど、けっこう楽しい。

うつわいっぱいになると、削るのを止める。
じゃあ、シロップをかけて……。

…シロップ?

「あーーー!!シロップ買ってくんの忘れた!!!」


「…そんなことだろうと思ったわ、ボケ」

聞きなれた声に振り返ると、庵が何か持って後ろに立っていた。
庵が持ってるのは…。

「あ、シロップ」
「お前のことだ。忘れて帰ってくるんだろうと思ってな」
言いながら、シロップの封を切って、俺が削った氷の上にかけてくれる。

真っ赤・・・と言うより、濃いピンクのかき氷。

「さすが、恋人」
「うるさい」

庵の頬がこのかき氷に似た様な色に染まる。

やっぱり、庵の分も削って二人で食おうと思った。
だって、そのほうが、絶対美味いし。

 

END

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しらす:7月25日。夏氷の日だそうで、ニュースでやってました。
私にネタをありがとう。(笑) 早起きは良いですねぇ。ネタできたし。
仙界伝封神演義見れたし。(笑) (8時ってのは、私にとっちゃあ早起きなんすよ)