EDENes

序章  天使と会った日

彼女と初めて会ったのは高一の春、文化祭の日だった。

 

 情けない話だが、僕は自分のバンドのライブの終了後、貧血で倒れて保健室に運ばれて しまった。到着するとすぐさまベッドに寝かされた(勿詮頭は低くしてある)。
 
体がだるい。
  頭がぼ一っとする。
  視界が悪い。
  僕は何も言わず、ただベッドに横になっていた。
  誰かに左腕を持ち上げられるのを感じた。顔を少しだけ横に向けて、回復しきらない視界の中に僕の左腕を持ち上げているものを捕らえた。
  「左腕、切れちゃってるから消毒しておきますね」
 最初に考えたのは「保健の先生ってこんな声だったっけ?」という事。今自分の左腕の傷口に(倒れた時にぶつけたらしい)消毒液の染み込んだ綿を押し付けているのは明らかにまだ若い、そう、女生徒の声だった。鈴の鳴るような澄んだ声。気持ちが落ち着くのがよく分かった。
  消毒が終わり、包帯を巻き始めた頃、ようやく視界が元通りになってきた。
  1番初めに目に飛び込んできたのは、胸に付いたプレートだった。

 

「(………『2−3小津』)」

 

その日僕は、天使と出会った。

 

 



2000.06.18


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