glass arcade
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〜或る日或る店で〜
「いらっしやいませ!!何を御探しですか?ここにはなんでも揃っております。日用雑貨に食料品、文房具・・・あと、それから・・・・」
「あっ僕、客じゃないんだけど」
ドアを開けたらいきなり若い女の子が元気にあらわれた。僕を客だと思ったらしい。 このままじゃ間が持たないので、とりあえず自己紹介をすることにした。
「僕は、今度ここに雇われることになった《日野正人》っていうんだ。店長にって言われたんたけど・・・。聞いてない?」
あごに手をあてて女の子があれこれ思い出そうとしている。
「あっ思い出しました!!昼すぎに二十歳位の男の人が来るからって」
「じゃあ上がらしてもらっていいかなぁ?」
僕が今度勤めることになったこの店は繋華街に程遠く、人通りもそんなにある訳ではない所にある。しかし、それなりに繁盛しているように見える。
店の名前は《glassarcade》といい、ちょっとしゃれた名前にしては店は古臭い。いまどき、自動ドアじゃない店なんてここと駄菓子やぐらいなもんではないだろうか。
「何かおっしゃいましたか?」
「いっいえ何も」
いま僕の前には和服を着た品のいいおばあちゃんが座っている。
この人がこの店のオーナーの《的場西香》。なんでも戦後何年でこの店を起こしたとかでなかなかのやり手らしい。そんなかんじの人だ。
「それで引き受けて下さいますね?」
「はい喜んで」
僕がこの仕事を引き受けた訳は、単に仕事がなかったからだ。
大学に入ったはいいが、そこはだれでも来いの三流大学。専攻は宇宙物理学というときこえは良いが、単なる睡眠時間となってしまうほどのつまらなさ。大学を出たはいいが、ちょうど不況のまっただなか。
世間では地震が頻発し、首相は倒れ、牛乳は腐り、彼女には振られ・・・。いいことなんて何にもない。
そんななか、街を歩いているとき一枚のビラが目にとびこんできた。僕は急いで電話をかけた。そしたら好運なことに、定員一名の所に一番乗りできた訳だ。
「では、この服に着替えてさっそく御店に出てもらいましょうか」
僕は服をもらって立ち上がった。
「仕事の事は、あの子が教えてくれるでしょう。元気な娘ですから、すぐに打ち解けれるでしょう」
部屋を出ようとしたとき、的場さんがぼそっと言った。
「・・・あと、今後あなたの身に何が起きても動揺しないで下さいね」
「えっと。さっきはゴメンナサイ。わたしは、《一岬アンナ》っていいます。これから一緒に、おしごとガンバりましょう!!」
なるほど、元気な娘だ。今の言葉をワンブレスで、しかもジュースの箱を五個も抱えて言い切った。
自己紹介を終えてから、一通りの仕事を教えてもらった。まぁ仕事と言っても在庫管理や品物の補充・注文程度の簡単なものだ。
「ねえ、この扉は何なの?」
そこにあるのが不自然である扉が品物と品物の間にある。それは、ノブも取っ手もないもので、そこに「と・び・ら」と書いてなければただのくぼみにしか見えない。
「そのとびらは開けないほーがいいですよ」
「何で?」
「・・・実は、そこは開かずの間といわれていて。うっかり開けてしまうと、中に引き込まれて二度と外には出てこれないらしいんです」
「それって本当?」
「だぁったら楽しそうですよね!!」
「びっくりさせないでよぉ」
「でも、開かないのは確かですよ!!」
確かに、引っかかるところがないので開けようがない。
「だけど、どうやってみればいいんでしょうねぇ」
いつかこの扉が開くのを見ることがあるだろうか。
それは突然にやってきた。仕事を始めてからの最初の客だった。
─── カラン コローン
鈴の音がなって、客が入ってくる。
アンナちゃんが、最初に会ったときに聞かせたあの口上をいう。
「いらっしゃいませ!!何を・・・・」
この子はいつもこんな事をしているのだろうか。
「・・・・あと、それから誰かの人生とか。」
そうそう、人生とか・・・えっ・・・今・・・・何て言った?
すると客は
「では、家内の人生を」
と何気ない口調で『注文』する。
すると、あの「と・び・ら」が開いた。その内側から、オーナーの的場西香がよく占い師が着るような服をきてあらわれた。
「どうぞ 奥ヘ」
ドアの奥は光輝いている。目をこらしてみると、奥には透明な建物が見えた。いや、あれはガラスでできた商店街だ。
「この店の名前の由来がわかりましたか?」
いつの間にかにアンナちやんが隣にいた。
「言ってたじゃないですかぁ。名前の割に古臭い店だとか何とか」
「なっ・・何でそのことを」
「わたし心が読めるんです・・・って言えばおもしろいんですけど。実は、わたしもそう思ってたんです、最初のころ。もう四十年前になりますね。」
四十年前?どうみてもこの子は、年下にしか見えない。
「ここにつとめた時から、その人の成長は止まってしまうんです。成長はしないけどその代わり死なないんですよぉ」
ことが複雑すぎて頭が整理できない。
「あれっオーナーが言ってませんでした?あなたの身に何が起きても動揺しないでって」
僕が放心状態に陥っているときに、客とオーナーが戻ってきた。
「では、二千万になります」
客はバッグから札束を積み上げた。それをレジの下にいれていく。
「またのお越しを!!」
─── カラン コローン
鈴の音が響く。客の顔は満ち足りていた。
オーナーが僕に話しかけてきた。
「人間の人生なんて、いつも誰かから覗かれているもんさ。そう、何もかもが素通りのこのガラスの商店街のように。」
オーナーはとびらに戻っていく途中で振り返った。
「誰かの人生を見たけりゃ私にいいな。いつでも見せてあげるよ」
僕はその甘美な罠に捕まってしまったようだ。
あとがき
日野 正人(以下ひの):はじめまして。わたくし、ひのただとといいます。今回は我らがマスターの駄作を最後まで読んでいただきありがとうございました。
一岬アンナ(以下アンナ):ひのくんだけずるぅい。いつも元気なアンナでぇーす☆
ひの:うわぁあ!いきなり実年齢に戻るなぁ。見てる方の身にもなってくれ(汗)
アンナ:ええっ。こっちの方が楽なのに・・・。
─── ぼおん(元に戻る音)
ひの:ふぅ。一息ついたところで・・・。
的場西香(以下にしか〉:「glassarcade」オーナーのまとばにしかです。
ひの:今回の話は。実はマスター(タルカス)が長年あたためてた詰らしい。
アンナ:へえー。
ひの:なんでも「時間は誰かがみていないと進まない」ということを3年前にどこかの怪しい本でみつけて、そこから考えだしたらしい。
アンナ:ふうーんそれで今回の裏話とかわないの?(ワクワク)
ひの:それじゃあぼくたちの名前について。実は僕たちの名前はアナグラムになぅていて並びかえると他の言葉になるんだ。
アンナ:なんかすっっごい単純・・・・
─── ごすっ(殴る音)
ひの:おっっオーナー(恐怖)
にしか:なんですか?
ひの:いますごい音が・・・(汗)
にしか:気のせいですよ
ひの:アンナちゃん倒れてるし・・・
にしか:それより、もし三人の元の言葉がわかったら先着3名の方に店の方より粗品をおくらせていただきます。もし分かった人は次の話ができるまでに、このページのどこかにスペースを作ってもらいます(きっと)。
ひの:それでは次の話はいつ出るかは分かりませんがまたその日まて。
一同:さようならー
ひの:あっ、アンナちやん起きた
〜〜 glassarcade店内より
p.s. 今回は台本形式ではないけどすいません。いろいろ書いてみたくって・・。
今回のスペシャルサンクス
放課後に楽しませてもらったきみ。
話を持ちかけてくれたページの創設者。
何よりここまで読んでくれた皆様ヘ。
最高級のありがとうを送りたまふ。
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