Kの野望
〜前編〜
「これしかない! 俺にはこれしかないんだっ!」
バンっ!
「あ…。雑誌が破けた…。」
「相沢、これを見ろ。」
「身長20cm伸ばす方法?」
「違う!そこじゃないこっちの破けてない方のページだ!」
そこにはロックバンドの記事が載っている。
「これがどうした?」
「やろう。」
「それで北川、このメンバーはなんだ?」
「失礼ね相沢君。この中では一番向いてると思うんだけど。」
「それに名雪もか?」
「うん、北川君がやろうって。」
「お前のテンポでできるのか?」
「それが一番不安ね。」
「もしかして二人とも、失礼なこと言ってる?」
「そんな事はないぞ。」
「気のせいよ、名雪。」
「そっか…。」
水瀬は、戦力に数えていない。
美坂と相沢が居れば今はいい。
「良くぞ集まってくれた、みんな。」
「強引に放課後、しかも私も名雪も部活がない日を狙っててそれはないと思うんだけど。」
計算のうちだ。
「偶然は重なるものだな、美坂。」
「そんな偶然は嫌だ。」
「…くー。」
「そんな事は言うな相沢。」
水瀬はもう寝そうだがこの際は気にしない。
「それでいきなりだが、パートを決めたいともう。」
「香里、名雪にロックバンドのパートできると思うか?」
「聞かなくても解りそうなものだけど。」
「それでパートだが、俺がヴォーカル、美坂にギターをやってもらいたい。」
「待て北川、何でお前がヴォーカルなんだ?」
「…くー。」
「主役だから。」
そう、今回は俺が主役なのだ!
「香里、質問だがヴォーカルやりたいか?」
「私は遠慮しとくわ、ガラじゃないし。もちろん名雪にはできないだろうけど。」
「それじゃぁ、俺がボーカルか?」
「まて、俺がやるんだ、相沢はドラムかベースやれ!」
「妥当だと思うわ。そうね、どの楽器もやった事はないけど練習すればいいことだわ。今回は相沢君が歌っても問題はないと思う。」
水瀬はベースとドラムどっちがあっているだろうか?
いかにも不器用そうだな…。
ベースは無理か。
「そうゆうことで俺がヴォーカル、美坂がギター、相沢はベース、水瀬はドラムやってくれ。」
「いつになく強引だな、何かあるのか?」
「そうね…。いつもより強引だけど。」
「…くー。」
このまま押せるな…。
「気にするな、前からやってみたかったんだ。」
「うそ臭いわね。」
「そうだな。」
「…くー。」
…
「おい、名雪起きてんじゃないのか?」
……
「…くー。」
……
「相沢君いつもの事だわ。」
「しかし、寝息のタイミングよすぎるぞ!?」
「そうゆうことで、パートが決まったから今日は解散だ。」
思惑どおりに行ってるな…。
「美坂、ギターの調達どうする?」
昼休み、中庭で聞いた。
ここには今年度になってから5人で食べている。
俺、美坂、相沢、水瀬、そして美坂の妹で相沢の彼女の栞ちゃんだ。
「お姉ちゃん。ギターって?」
「北川君が昨日、バンドやろうって言って、勝手にパートをギターにさせられたのよ」
「面白そうです。」
やっぱりそうきたか。
「栞ちゃん面白そうだろ?」
「ちょっと、かっこいいですね。」
「祐一、昨日そんな事話してたの?」
「お前も居たろ?」
「わたし、聞いてないよ」
「寝てたからな。」
「わたし、歌とか苦手だよー。」
「ベースかドラムスできるか?」
「そんなの決まってるよー。」
「無理か。」
これも計算どおりだ。
「じゃあどうだ?水瀬の代わりに栞ちゃんやってみないか?」
「北川君、ちょっと、栞まで巻き込む気?」
「おい、俺だけでも迷惑してんのにこれ以上迷惑するような人作るな!」
甘いな、祐一、栞ちゃんがこんな時どういう反応するか見当付くだろ?
ほら、目が輝いてる。
「やってみたいですー。」
ほらな?
これで俺の野望はほぼ達成された。
相沢は栞ちゃんにはめっぽう弱い、美坂は妹のこととなると…。
そして、面白い話には栞ちゃんからは辞めない。
そして、栞ちゃんが辞めないから二人とも心配でバンドを抜けない。
更に、俺のヴォーカルの位置はほぼ確定された。
栞ちゃんがベースになる。
なぜならこの中で一番リズムが悪いのは栞ちゃんだ。
ドラムスは出来ない。
「栞、悪いことは言わない、辞めとけ。」
「そうよ、あなたまで巻き込まれることはないわよ。」
「栞ちゃんバンドやるんだ。」
「北川さん、いつからはじめるんですか?」
「先に、楽器を何とかしないとだからな、栞ちゃんも楽器の事考えてくれ。」
「わかりました。」
「北川、楽器何とかなりそうだぞ…。」
きたか相沢、やはり栞ちゃんの効果は絶大だ。
「楽器何とかなりそうなのか?」
「ああ、秋子さんの伝で全部そろいそうだ。」
「秋子さん? ああ、水瀬のお母さんか。」
「それで、今日の放課後にでも家に着くらしい。」
昨日の今日に練習ができるようになるとは。
「わかった、お昼休みに皆に話そう。」
|