星 蒼矢さんの「センチメンタルグラフィティー」SSです。
あの物語により現実味を持たせた作品だそうです。
下調べ等がしっかりなされてあっておもしろいですね〜。

センチメンタル・グラフティ 〜真奈美編〜(1)

主な登場人物の紹介

主人公………言わずと知れた主人公。小、中学校と両親の仕事の関係で十二回もの転校を繰り返していた。現在は東京で一人暮らしをする十七歳。彼自身が旅好きで全国の交通機関の時刻表、運賃、Y・H情報程度はあらかた頭に入っている。
杉原真奈美…主人公に密かに思いを寄せていた少女。高松在住で主人公とは中学校時代の同級生。体が弱く人ゴミが苦手。小鳥のことになると非常に熱心で積極的。自然を愛する心優しい少女。
七瀬優………広島在住で、主人公とは同じ中学校に通うはずだった。他人に干渉されるのを嫌う。主人公とは昔から奇妙に馬が合っていた。かつての主人公との出会いがきっかけで旅行好きになる。自由奔放で伸び伸びした性格。
森井夏穂……大阪在住で主人公とは小学校時代同級生だった。現在注目の陸上選手であり、走る事がとにかく好きな少女。同時に、お好み焼き屋「おたふく」の看板娘でもあり、お好み焼きの腕前も抜群。元気で明るく前向きな性格。

 注意  この物語はセガサターン用ゲームソフト「センチメンタルグラフティ」の基本設定に基 づくように努力して創作されたフィクションであり作者の独断と偏見によって構成されて います。ですから、登場する団体名、個人名等は実在するかすらわかりません。また栗林 公園の隣に山があるのは本当ですが、それが杉原山かどうかは定かではなく、杉原山が実 在するかどうかについても知ったこっちゃありません。この物語はあくまで作者の趣味で 創作されているため、人物名、地名等の著作権他についてはさっぱりわからないので、文句を言われてもどうしようもありません。前述の通りこの物語は独断と偏見で構成されているため、キャラクターの性格が大きく変容していたり、物語が完結しなかったりするこ とがありますが、健康に害はありません。尚、この類の疑問、意見については一切受け付けております。どうぞ、メール、手紙、電話、電報、新聞、テレビ、雑誌、口コミ、等々 の方法によって作者に連絡いただければ前向きに検討致します。尚、この物語のJR線は 「一九九八年四月号コンパス時刻表」にのっとっています。  どうぞ、ヨロシク!

第一話  手紙

 春眠暁を覚えず…。とはよく言ったものだが、もちろん普段そんな事を意識して生活し てる人はいない。だけど、今朝の僕のようにごく稀にそんな言葉を痛感する瞬間というのが誰にでもあるだろう。だからこの詩はいつまでも残ってるんだ。
 なんてことを朝食のトーストをかじりながらボンヤリ思っていた。そして、ゆっくりと 今朝の宵の口に見た夢について思い返してみる。
 こんな事ができるのは今日から春休みで、こうしていつもより三十分長く夢を見ていても、さらにいつもより三十分長く夢を思い出していても誰も文句を言わないからだった。 おまけにバイト先にも休暇届けを出してある。長期休暇中の僕の休暇届はバイト先では定番になってるらしい。
 なんせ、春、夏、冬、と全てにおいてこの二年間俺は旅行に行っていたからだ。まあ、僕のお土産も人気があるから、店長もちょっと渋い顔をしただけで許してくれた。
 そんなわけで僕はぼんやりとしていられたわけだ。今朝は久しぶりに真奈美の夢を見た。 それには訳があった。というのは夕べポストに入っていた一通ではなく一枚の手紙だった。
 差出人の名前はなく、その住所もない。封筒の表にもはただ僕の名前が書き込まれているだけで、それがこの手紙が誤配達じゃないことを証明していた。文面も簡単なものだっ た。
「覚えていますか?あなたと会ったあの日のことを。もう一度、あなたに会いたい…」
  僕はこの手紙を見た時、真奈美だと思った。理由は分からない。けど、一つ一つの文字の感じが寂しがり屋の優しい少女を連想させただけだった。
 僕は彼女に会ってみたいと思った。そう思って僕はさっそく頭の中で計算をはじめた。
 今は春休みだから「青春18キップ」が使える。あれを使えば格安だ。午前一時発の快速夜行「ムーンライト・ながら」にのって、後は鈍行をのりついでも、一日でどうにか四国に入れそうだった。あとは、屋島にあるY・Hに宿を取れば、そこを拠点に動けるはずだ。
 移動と宿泊費で、三泊して三万〜四万で何とかなる。バイトでコツコツためたお金が手持ちで十万程度はあるから、なんとかなる!
 そう結論をつけると、僕は早速支度にとりかかった。駅にキップを買いに行き、Y・H に予約を入れた。もう春だから、花見なんかの旅行客がいるかとも思ったが、すんなり三泊四日宿がとれた。
 旅の基本は荷物を少なくだ。できればナップ一つに押さえたいところだ…。

第二話 快速夜行列車

 知っての通り日付が変ると青春18キップは断然不利だ。そこで、僕は二十三時三十分 の電車で18キップを使わずに川崎まで出る事にした。そうすると上手い具合に日付が変わってから快速夜行に乗る事ができる。こっちの方が断然安いのだ。
 かくして、俺は川崎0時十一分発のムーライトながらに飛び乗ったわけだった。席は指定で座るところに困る事はない。後は行けるところまで行くだけだった。
 大垣に六時五十一分に到着だからそこで朝食にして、その後上手く快速に引っかかって いけば午前十一時から十二時ぐらいには岡山につけるはずだ。あとは、マリンライナーに 飛び乗れば高松に着く。
 僕はそう計算し終えて少し気が楽になると急に眠気が襲ってきた。それは当然だ。思い立ったのが今朝…昨日の朝で、急いで支度して飛び出してきたのだ。さすがに疲れもする。
 が、僕の席には先客がいた。いや、指定席だからそんな事はない。おおかた近くに彼女の席があってそれでも窓際の僕の席が空いてたから座っていたというところだろう。それは、僕にもよく分かる。なんせ、僕が旅の途中でよくやることだから。
「夜景って奇麗だよね」
彼女と目が合って、彼女は僕に気づくとぼんやりと言った。
「え?」
 僕はその声に聞き覚えがあった。それだけではない、窓に映った彼女の三角の顔もその赤毛も、あるいは彼女がもっている不思議な雰囲気も僕は知っているような気がした。
 奇妙に親しい会話だった。もちろん、知っているような気がしただけのはずなのに。
「あっ」
 僕は彼女の後ろに広がる車窓に目を移して声を上げた。そして、沈黙。僕が窓の外に見つけたそれを振り返った彼女も見つけたらしい。
「流れ星…」
…そう言えば昔、流星群を見たことがある。確か、広島…。
「一つ、二つ、三つ」
  彼女がそれを数え上げた。あの時見た流星はこんなものではなかった。それでも、こんな 流星も悪くないと思った。
 窓に映った彼女と視線が合った。それから、彼女は振り向いた。
「どこかでお会いしましたっけ?」
  僕は思わずというよりもむしろ自然に尋ねていた。
「フフ。まあ、座りなよ。でも、不思議だな。私も今そう思ってたんだ。君で二人目だよ。 初めて会ったのに、初めてでないような感じは」
「あ。優…。七瀬優…」
思い出した。広島で流星群の夜、僕は一人の少女にであった。彼女の名前が七瀬優。夏休みが終わったら彼女と同じ中学通う予定だった。最も僕は夏休みの間広島にいただけで、 結局同じ中学に行くことはなかったんだけど、この、不思議な感じは七瀬優だ。
「え?どうして、私の名前を…。そうか、君だったんだ。それじゃ同じ気持ちになれるはずだ。久しぶりだね。幻の転校生君」


ご意見、ご感想は「Free Board」へどーぞ!

2000.03.09


Topページへ