ヨシオ君の世界征服宣言 第一夜
きたるべき近未来・・・人類はつかの間の平和のうちに暮らしていた・・・
(未来のことなのに表現が過去形になっているが、まぁそんなささいなことはよしとしよう)
だが!歴史上平和といわれた時代が100年ともったためしがあったろうか、いやないっ!(反語!)そんなこんなで世界は未曾有の危機に見舞われる羽目になるのだった。そう、我らがよしお様の手によって・・・人類は粛正されなければならない・・・そしてその先に新しいニュータイプの世界を再構築するのだ!(新しいニュータイプ?なんか変?)
思い出すがいい、今汝らがこうしてしやわせに生きていけるそのわけを!
そして語り継ぐがいい、汝らを新しい世界へと導いた我らがよしお様の輝かしき軌跡を!
☆がつ☆にち 大安 晴れ
余の名は鈴木よしお。17歳。支配者となるべき運命の星の下に生まれ、将来世界に君臨する王となることを約束された男である。余の目的は、とりあえず世界にハルマゲドンを引き起こし、余の命を聞かぬ愚か者どもを一挙に駆逐することである。
そう!ノストラダムスの予言の中に登場する「恐怖の大王」とは即ち余のことにほかならない。よく雑誌などで
「私は来る終末戦争で戦うことを運命づけられた戦士です」
などと書いている不届き者がおるが、奴らが戦う相手とは何を隠そう、この余なのだ。まぁ、奴らなどはこの偉大なるよの鼻息一つで吹き飛ぶであろうが・・・
偉大なる余の世界征服の足跡を記し、悲願を達成した暁にはその偉業を世界に知らしめんとするため、日記をつけることを決意する。
フッ、愚民ども!汝らが余の前にひれ伏す日も近い・・・
ふっふっふっふ・・・
というわけで、さっそく世界征服のための活動を開始したわけであるが、まず、世界の支配者となるためにはあらゆる世事に通じていなければならぬと思い、書店にて「デラべっぴん」を購入せんとした時のことである。店の中に同じクラスの川崎のり子が入ってきた。将来余の第一の后となることを余の名において定められたところの女である。
ところでこの状況は非常にまずい。
余の手中にはすでに「デラべっぴん」が表紙を上にして収められており、余はもうレジのすぐそばまで来ていた。さらにのり子の入ってきた入り口は、レジのすぐ横というナイスな位置を占めている。世が世界を征服したら、まずこの店の設計をした人物を最初に処刑することを心に決めた。
「あっ鈴木く〜ん」事もあろうにのり子は余に話しかけてきた。
まずすぎる・・
余は泣く泣く「デラべっぴん」を裏返し、のり子には笑顔で何とかごまかしながら手近かの棚にそれを戻した。その時である。レジのカウンターに座っていたおやじが
「あ、お客さ〜ん、元の棚に戻していただかないと。」
・・・・どっ、どっ、怒髪天をついたぁ!よくも余の后となる女の前で、しかも偉大なる余に恥をかかせるとは!決して許されてはならない所行であり、よってしかるべき罰を受けねばならない。信賞必罰は余のよるところとするものである。
夜になるのを待って天罰を決行する。
余は昼間購入しておいた油性のスプレーを持って書店へと急いだ。そして誰もいないのを確かめ、シャッターにらくがきする。
「天誅!バカ!アホ!マヌケ!お前なんか死んでしまえ!
お前の未来の支配者より」
なかなかの達筆だ。これでやつも自らの悪行を恥じ、明日からは余の善良なる臣民として余に忠誠を誓うことであろう。良いことをした後は実に気持ちがいいものだ。今夜もぐっすり眠れそうである。
(翌日) くもり
予想とは裏腹に夕べは悪夢を見てしまった。忘れないうちにここに記しておく。夢の中で余は偉大なる支配者として全人類に君臨していた。そこまではよかったのだが、突如余の邪魔をする者が現れた。
ビッグバード!
あのセサミストリートのビッグバードである。不遜にも奴はこの余に向かって「クワーッ」と奇声を発しつつ、余に接近してきたのである。余はなぜか奇妙な恐怖感を覚え、訳の分からないことを叫びながら逃げ出した。
夢はそこでとぎれたのだが、こういう日は決まって何か良くないことがおこる。もしかしたら余の支配を快く思ってない者どものクーデターやテロなどおこるやもしれぬ・・
気をつけることにしよう。
とりあえず、世界が余の手中に収まったらまず「セサミストリート」の放送を禁止することにする。余に仇なすものを少しでも減らすためだ。子供向けの番組が減ってしまうことになるが、「ポンキキーズ」(もち、「ひらけ!ポンキッキ」に改名)「ハッチポッチステーション」の時間延長、さらに「ピンポンパン」「ロンパールーム」「ウゴウゴルーガ」の再開で何とかなるであろう。偉大なる支配者はやはり全ての臣民のことを考えているものなのだ。でも、昔フィリピンで、マルコスが「ボルテスV」の放送を、絵が残虐きわまるという理由で禁止したおり、国民から「スタージンガー」や「グレンダイザー」(フィリピンでも放送されてるらしい)はなぜ禁止しないんだ?とクレームが来たらしい。おなじことがこのけいかくにもいえそうだから、やっぱ禁止ってのはやりすぎかなぁ?でもビッグバードだけはなんとかせねばなるまい。理由は・・・余の気に喰わぬ、でよかろう。