戻るのか?     第三夜へ!

ヨシオ君の世界征服宣言 第二夜

以下なる手記は、将来世界に君臨する王となることを約束された男である余、鈴木よしおの破嵐に満ちた戦いの足跡を記したモノである。余が世界征服を達成した暁にはこの手記を我が臣民に発表するのだ。余の残した余りにも偉大なる業績の数々に必ずや我が臣民は涙することであろう。

▽月▲日 (晴れ)

 今日間違い電話があった。よりによって余の所にかけてくるとは、不届きな輩がいたものだ。電話の相手はまだ若いと思われる女性であった。

彼女は余が電話をとるやいなや

「今日あなた何やってたのよぉ!あたし、二時間も待ってたんだからねぇ・・!」

とさけんできた・・。

ちなみに言っておくが、余は時間はきっちりと守るタイプである。友人との待ち合わせで余が送れたためしは今までない。

これが間違い電話であることはもはや明白であったが、とっさに余は

「ごめんな・・」

と言ってしまった。

「寂しかったんだからぁ!」

どうやら相手は自分が間違い電話をかけていることにまだ気づいていないらしい。余の声が偶然相手の彼氏の声に似ていたのだろうか?

こうなったら最後まで彼氏の役を演じきるしかないと腹を決めた。
とは言ってもそれは思ったほど難しいことでもなく、ただ彼女の方が一方的にしゃべるだけだったので、余はただ「ああ」とか「うん」とか答えるだけで良かった。

「あなた本当は○○ちゃんのことが好きなんでしょ!?」

「いや・・そんなことは・・」

このようなかんじで会話は実に円滑に進められた。

「それにこないだ一緒に歩いてた女、あれはだれなのよっ!?」

「あれは妹・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・

こうしてこの奇妙な会話は、およそ一五分にわたって続けられた。

そろそろ彼女の方が、余が余りしゃべらないことにしびれを切らしたようだ。

「あなた黙ってばかりいないで、なんか言ったらどうなの?」

などといってきた。ぬう!許せん!世界の覇者に向かって命令するとは!ここでこの勘違いヤローにガツンとキツイ一発をお見舞いしてやろう。余は受話器を握りなおし、静かに言い放った。

「僕達・・・もうおしまいなんだね・・・」

すかさず受話器を切る。

う〜ん・・・このときの彼女の顔が目に浮かぶようだ・・・

その後、この勘違い女と何も事情が分からないかわいそうな彼氏がどうなったか、気になってしょうがない今日この頃である。


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