「芹澤イクト」過去話:禍以降
ドウッ・・・
派手に着飾った40なかばと見える大柄の浅黒い女がさらに派手に床に倒れ込む・・・
「うぐっ・・ぐ・・・ぐごあぁ・・・」
服の下には女とも思えないほどの筋肉が見え隠れする。その丸太のような腕を自らの首に押し当てながら苦悶し、のたうちまわる・・・・・
「うぐっ・・んんん・・・がはっ」
悶えながら女は大量の血を吐き出し、なおも苦しみ続ける・・・
ガシャーンとけたたましい音を立てて、テーブルが倒れる。テーブルの上のスープやその他の料理が床にぶちまけられた。
「ごしゅじんさま・・いかがなさいました・・・!」
勢いよくドアを開けて一人の少年が飛び込んできた。
歳のころ12・3くらいであろうか。黒い細目のパンツに白のシャツ、黒い蝶ネクタイを締めている。
歳にしてはやや背が高いかんじだが、まだ幼い顔つきで、ほっそりとした体つきである。
「ごしゅじんさま・・・!」
少年が女に駆け寄って抱き起こそうとする・・・
「はぁはぁはぁ・・ジェ・・ジェスロ・・・は・・・早く誰か・・よ・・呼んできてちょうだい・・がはぁ・・ぐ・・・」
女は悶えながらうめくような声をあげながら少年の服をつかむ。
「ごしゅじんさま・・・!だ、大丈夫です・・」
少年が女の上半身を抱きかかえる。
「ジェス・・・ロ・・はんぅ・・・は・・・はやく・・・・」
しゃべるのもやっとの様子で女はうなり声を揚げた。
少年がそっと女の耳元でささやく。
「ごしゅじんさま・・・その必要はありません・・・・・」
女の目がカッと見開く。
「ジェスロ・・・お・・お前・・は・・・」
服を掴んだ手に力を込めるが、もうすでに毒が体中に回ってうまくつかめない。
全身が弛緩する。
「ごしゅじんさま・・・。」
少年は女の体から力が抜けていくのを確認すると、女が首にかけていたペンダントをはずし、そっと床に寝かせた。
そして冷ややかに横目で女を見下ろす。
「あ・・・あた・・しを・・・・・・」
女はひたひたと確実に自分に迫る死の足音を感じながら、少年を激しくにらみつけた。
それを軽くいなしつつ、まだ声変わりもしていない澄みきった声で言い放つ。
「ごしゅじんさま・・・実は先ほどの食事に混ぜたのは、体が麻痺して動かなくなるだけの薬でして・・」
少年はもはや指一本動かすこともかなわなくなった女の首にそっと触れる。
そしてふところから細い針を取り出すと、首の、脈を感じるところにぷすっとさす。
鮮血か吹き出し始める。
「ごしゅじんさま、もうしばらくの辛抱でございます・・・
それと・・・ジェスロは・・今までうそをついてました・・・申しわけありません・・・・・・
ジェスロは・・いや僕は・・本当はジェスロという名前ではありません・・」
「・・・!」
相変わらず目だけは異様な輝きを放ちながら女は少年をにらみ続けている。
悔しさに歯ぎしりしようにも、ただアゴがカクカクなるだけであった。
床には女の首から噴き出す血液の作る池が次第に膨らんでいく・・
片膝を立てて、女のそばに座っていた少年は、冷酷な目を女に向けつつ立ち上がる。
「僕の本当の名前は・・イクト・・・芹澤イクトというのです・・」
この話の続きを・・・・
聞きたい (m(__)m・・・工事中・・・今しばしお待ちアレ)