■■有機物の人形■■
私には手がありません。
母には目がありません。
祖母には耳がありません。
祖母の母には形がありませんでした。
ガラスケースの中に入れられた私たちには名前もありません。
私たちに与えられたものと言えば、
自己主張の無いただの固体識別番号と何の変哲も無い製造番号だけです。
壊れた人形のように立てかけられた私たちは『人』ではありません。
造られた『有機物の固まり』なのですから。
『人』ではないので、人権と言うものとは無縁なところにいます。
所詮、研究所の中で生まれて死ぬだけの人形なのですから。
しかしなぜ、私たちは理解する事ができるのでしょうか?
自分たちがどれほどつらい状況に置かれているのかを、なぜ理解できるのでしょう?
《私たち》は、『自分』と言うものを考えれば考えるほど1つになってゆきます。
『人』のように大地から生まれていない私たちは、いったい何処に還ればよいのでしょう?
私たちは待っています。
じっと
その時がやってくるのを・・・・・。
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