-悟浄Ver-



「じゃ、八戒行ってくるな。ジープも」
「はい。行ってらっしゃい」
「きゅ〜っ!」
12月のある日。俺はいつもの様にお前にキスし、ジープの頭を一撫でして賭場に出た。
一度やめよう、真っ当な仕事しなきゃなとも思ったんだけどよ、お前、首振ったんだよな。
「賭場での貴方、カッコ良かったですよ」
ってさ。そんな事言われる前は、土方にでも行こっかな、とかレストランのボーイぐらい
やってやるとか思ってたんだけど、止めた。せっかくカッコ良いって言って貰ったんだ。
これで食べていこう、って思ってさ。
今日も頑張って稼ぐぜ、と思っていたら、町が今までと違い華やかなのに気が付いた。
「おっ、もう12月かぁ〜」
そんな事を思いながら、俺は賭場に入った。


「よっしゃぁ! 今回は勝つぜ、悟浄」
「どうだかな。では勝負!」
「ちっくしょ〜」
「まだまだ甘いぜ、出なおしてきな」
さて、そろそろ帰るか。懐も暖かくなったしな。
そう思い賭場の連中に別れを言い、出て来た。

明日は賭場が休み。ゆっくりと八戒と過ごすことが出来る。
そんな鼻歌交じりな俺の目に飛び込んできたのは、商店のこんな煽り文句。
『お前を喜ばすクリスマスプレゼント』
『貴方と過ごす最高のChristmas』
思わず立ち止まった俺は、クリスマス定番色の赤と緑に俺とお前をかさねてしまった。

去年までのクリスマスは、どーでも良かった。
皆でどんちゃん騒ぎしてよ、唯単にそれで良かった。
しかし、今年は違う。お前に逢って、伴侶になって訪れた初めてのクリスマス。
お前が喜ぶような事をしたい。喜ぶものを贈りたいんだ。
しかしお前のように俺は器用じゃない。何を贈ったら喜ばれるのかが分からない。

お前の笑った顔が見たいんだ。俺は。

この一年間、いろんな事があった。
雨の日、少し憂い顔なのに一生懸命何でもないような顔をしているお前がいた。
そんなお前に、俺はソファでお前と他愛の無い話をした。
窓を全部閉じて雨の音を最小限にして抱き寄せ、震えるお前の手を俺の服へと導き握らせ
雨の音を消すように囁き続けた。
お前の強ばった顔が少し柔らかくなるのを見るのが、なによりのお前から俺へのご褒美だ
ったんだ。

また俺が悪夢に魘されていた時には、お前は優しく起こしてくれて抱き締めてくれた。
何も聞かず、一定のリズムで子供をあやすように背中をさすってくれた。
俺は初めて胸の内にある義母さんの事を話す事が出来た。
お前は目尻にキスをくれたよな。
「僕は悟浄の紅が、この世で一番好きです」
この言葉、すごく嬉しくて湧き上がるものを押さえることが出来なかった。

この義母さんを苦しめた紅が、お前にとって安心できる紅であるように祈る。
俺にはお前だけなんだ。お前に笑って欲しい。喜んで欲しい。
お前が欲しい物は何なんだ?
クリスマスまであと三週間。神経を研ぎ澄まし、しっかりとお前を見ていよう。
何かヒントがあるはずだから。

「ただいま〜」
家に帰るとシャーというシャワーの音。
洗面所を覗き込むと、ローブが二枚用意されていた。お前のOKのサイン。
俺が明日休みという事を見越しての誘い。
俺は服を脱ぎ捨てるとお前が入っている風呂へと飛び込んだ。
「ただいま〜。うー寒い。一緒に入ろうぜ」
シャワーもそこそこに湯船へと飛び込みお前を後ろから抱き締める。
綺麗なお前の手が俺の手を包み込み温めてくれる。
俺は嬉しくて後ろから項に、首筋にキスをする。少しキツク吸い紅い花を散らすと、やんわ
りと手を外して胸の果実を摘んで揉み上げた。
「ご…じょ…んぁ…、く…ん…っ」
「八戒…愛してる…」
「ごじょ…ぅんっ、僕も、愛してます…あんぁ…っ」

お前の全身に雨の様にキスを降らしながら、腕の中のお前を抱き締めた。





*END*







ひとりでも平気だと思っていたのは強がりだと解っていて。
だからこそ、今自分を包んでくれる人が一番大事なのだという事を
ちゃんと知ってる悟浄がいいですよねvv《結花》


このお話は、八戒視点と対になっております。

「八戒Ver.」





《言の葉あそび》