不幸?幸福?(英雄との出逢い)

 ..光の球体を抜けると、そこは何処とも知れぬ深い森の中であった。間もなく光りも消えた。そこには人の影もなく、私はただ一人そこに佇んでいた。
 黙っていても仕方がないので、歩き出すことにした。とはいえここは右も左も分からない森の中。街の方向など知る由も無かった。前方に人の姿が見えた。「(助かった、彼に道を聞こう)」と歩み寄る。彼も私に気付いたらしく近づいて来た。何故か彼の姿は灰色に染まっていた。
 全身に鈍い痛みが広がる。切られたのだ、目の前の男に。慌てて距離を置き、彼の名を確認する。”Orc Lord”。「(おお、初モンスター)」なんて感動してる内にヤツはみるみる迫ってきてもう一撃。「(野郎本気だ。本気で殺す気だ!)」そうと分かれば話は早い。逃げる、逃げる、ひたすら逃げる。
 ふふふ。オークロードはかろうじて振り切ったようだ。だが、今目の前にいるあれは何だろう?デカイ、デカすぎる。蜘蛛ってあんなに大きかったか?私の倍はありそうだ。しかも既にその身はグレーに染まっている。怒ってらっしゃる様だ。あ、来た。スタミナ無いよ、今。が、まだ私は諦めてはいなかった。私とてただ無闇にオークロードから逃げていた訳では無い。そのルートに小さな集落があったのは確認済みだ。その一軒に逃げ込めば万事オーケー、あの図体では扉をくぐることは叶うまい。これで我が身も安泰って訳だ。素晴らしい、なんてクールなんだ!俺!
 ..死にました。しかも二連荘。なんであのサイズで扉をくぐれるわけ?しかも荷物回収の為にその場復活したら、体力ないでやんの。きびしー
 どうやら今日は徹底的にダメな日の様だ。大蜘蛛をなんとか家からおびき出し、荷物を回収。で、家を出てヤツから逃げていると。来ました、先程のオークロードが。しかも彼は私を殺害しただけでは飽きたらず、何やら死体のまわりでゴソゴソやっていやがる(今、思うとルートですな)。近づけネェ。とウロウロしてるとまた蜘蛛が灰色に染まった。チクショウ!何のために苦労して荷物を回収したかわからーん!怒りに震えながらも私は逃げた。
 そして彼等は現れた。私がどうにか蜘蛛を振り切り、その後に現れた”エティン”と言う巨人に追われ、ある砦に閉じこもっているときだった。何やら、砦の表で話し声がしたので、覗いて見ると。同じく私と同じように魔物に殺されたとおぼしき幽霊とそれにあれこれと話しかける三人の男達の姿があった。そしてその中の一人が呪文を唱えると、幽霊だった彼は見る間に蘇ったでは無いか!「(彼等ならあの邪魔な巨人を倒してくれるかも)」藁にもすがる思いで、頼んでみると。快く応じてくれ、あっと言う間に”エティン”を倒してしまった。更に私が魔物に荷物を奪われ、街の方角も分からず難儀していると言うと、街まで送ろうと申し出てくれたのだ。彼等はそれぞれ、”
Kanta”、”Ryuji”、”Tomo”と名乗り、馬に乗っていてもっと早く移動出来るにも関わらず、歩きで足の遅い私に約2時間程も付き合ってくれ。私を無事”ヴェスパー”と言われる街まで送り届けてくれた。しかも、魔物に装備を奪われた私の為に(重量オーバーで動けなくなるほどの)お金まで渡してくれたのだった。
 この日記を書いたのは、もうこの日から何ヶ月も経っているのだが、私はこの”ウルティマ・オンライン”と言うゲームを続ける限り、この日を忘れることは無いだろう。そしてこの時出逢った三人の英雄”
Kanta”、”Ryuji”、”Tomo”の名も忘れることは無いだろう。(って言うか今でも良く助けてもらってる^^;)
 ”犯罪王”を夢見ていた男。Trigの中で何かが変わった一日であった。


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