Last update Sep.25,2001

未来にキスを / otherwise

一見萌えゲーを装っていますが凡百とはまったく違います、 レンアイを通して仕掛け満載に形而上学まで語っていて、とにかく最後まで見てほしい作品です。 全てが語られた本当の最後の最後に全ての集約である主題歌 kiss the futureのフルコーラスが導くクライマックスはまさに圧巻で、新しい真の人の誕生を詠う神話にまで昇華されています。

マジで凄いです元長柾木、これだけの大風呂敷を広げながら終わってみるとまさに「未来にキスを」これ以外に言いようのないものになっています。これは大変なことです、きっちりと最後まで書き切っているそのガッツに本気で敬服します。超エネルギー感じました、何かを生み出そうとする人間の一人としてキッチリ決着をつけるまで情熱を保ったことに隠しようもない嫉妬を覚えます。

いくつか斬新な仕掛けのあるこのゲームですが本当に良く出来たシナリオ構成です。 普通のゲームではフラグ確定して個別ルートに入って以降は舞台と登場人物が同じなだけで独立した話になっているものがほとんどですが、このゲームでは決してメインヒロイン+オマケではなく、四人のヒロインすべての話に明確な主題と意味があり互いに関連をもっています。 適当に流行のキャラクター設定で頭数だけ揃えたそこいらの十把一絡げとは違います。

       → 悠歌
霞 → 式子     
       → 椎奈

という構成になっていて、キャラクター毎に託されたテーマが異なっており、上図の関係の通りに主題も展開していくのです。明確な流れと理由が存在しているのです。

って、う〜んどうしよう。あんまり書くとプレイしたときに興が醒めるし・・・

解く順番なのですがおまけモードのエンディング番号の通りに解くのが一番よろしいかと。霞、式子、椎奈、悠歌の順です。椎奈と悠歌はまだしも逆もありですが、最初の二人は固定が絶対推奨です。

上図の様に式子エンドは霞ルートをある程度通過してから入るのですが、霞ルートの結論の先にあるテーマを語るので霞をまず最後まで解いてから式子を解いたほうが良いかと。 また椎奈と悠歌は同列に書いていますが実際は式子バッドからの二択ではなく、式子バッドからいけるのは悠歌だけと思われます。いや椎奈にも行けるかもしれないのですが、それだと多分椎奈の途中のイベント見れないかもです。ま、なんにしても独立した話ではなくテーマの展開が存在する以上順番に追っていったほうが楽しめるって話です。

しかしメインとオマケという差別がないのに各キャラへのフラグが並列ではなく直列な部分があるというのは斬新だと思います。 あんまり書くとアレなのでこのあたりにしておきますがとにかくよく出来てます。 やってる最中には細かい部分で言いたいことが色々とあったのですが、最後の最後にこんなものを用意されていては俺ごときが語るべきものなど何も無いです。もう何も言えない、ただ受け入れるのみ。

と、扱われているテーマに対するコメントはプレイした各人に委ねるとしてそれ以外の点について思いついたことを一応ダラダラと。 しかしこのゲーム何が凄いってここまでシナリオに力を入れたノット陵辱なエロゲーでありながらエロも充実しているってことです。 キャラ差はありますが予想を大幅に上回るボリュームで、各ヒロイン毎のシナリオにエンドエピソードに入るまでの概ね二週間にはほぼ毎日エッチあります、しかも一回のエッチの中で任意で二回戦まで出来ます。 最初はたしか正常位しかないのですが速攻でバック、フェラ、騎乗位、野外、が加わり、これらの中から前述のように二回選択できます。

そしてこれらの項目の一つ一つに段階があり、選択するたびにプレイの内容が微妙に進化します。最初はバックからハメるだけだったのに二回目はアヌスも弄って、三回目はアナルセックスになるとかそんな感じ。 さらにそれとは別にイベントによるエッチシーンもあるので一日に四発やるなんてこともあったりします。

しかしこのエッチシーン内で調教シミュレーションでもないアドベンチャーでプレイ内容を選択できるというのは有りそうでめったに無いですよね。しかも同じ項目を選択しても興醒めしないようにちゃんとプレイ内容が進化するし。 要するに調教シミュレーションからパラメーターなどの面倒な一切を廃し、プレイ内容を選択出来、回数によってプレイ内容が進化する、というエッセンスだけをデジタル紙芝居に導入したハイブリッドタイプです。 誰が考えたのか知りませんがいいアイディアです。

で、ここまでくると気取ってもしょうがないですね。 使い物になるかということですが、 テキストの描写はシナリオのクオリティがクオリティなので当然のごとくしっかりしています。イベントだけではなく、前述の日常エッチでも前戯も含めてけっこう濃厚で挿入後も会話や軽い言葉責めを絡めていろいろとやってくれているので嗜好に合えば全てが実用に耐えるでしょう。ボイスもまずますで喘ぎと悶えはなかなかそそります、分っていらっしゃる。なおグラフィックは日常のエッチでは各体位毎に使い回しです、イベントは別グラフィック。

とまあこんな具合に陵辱系ではないシナリオ重視の中ではエロはかなり上質です。 とはいえここまでのシナリオ書けるんですからこの程度ならちょっとその気になればいくらでも書けるってところなんでしょうが、全部終わった後になんとなくそんな感じを受けました。

ていうか、闘病ものとか禁断の関係とかでチャンスがそうそう無くてSEXする回数が少なければしょうがないですが、普通のシチュエーションたとえば学園物とかだと普通に回数こなせるんですからエッチは濃厚になると思うんですけどね。純愛物だからエッチが薄いってのはおかしいですよ。むしろ純愛だからこそ体を重ねることを知った以上エッチも濃厚になると思うのですが、だってSEX気持ちいいもん。最初はサルの様にやりまくるっての。

ていうか、純愛物で単にSEXするという言い方は好きじゃないです。陵辱系ならともかく、ただSEXがしたいんじゃなくて愛し合いたくて体重ねるんでしょ?純愛で結果的にやりまくる、普通じゃん? だって相手にも喜んでもらいたいじゃん、それでお互いにがんばってたら回数重ねてるうちに自然に濃厚になるじゃん。 マジで上記のような理由が無い限り純愛物だからエロが薄いって言い訳、俺は認めねぇ。 つーか、そういったチャンスが少ない状況に置かれた中だと精神的な盛り上がりはそりゃ凄いものになるんだからそこら辺りをキッチリ描写したらやっぱり凄いものになる。やっぱり言い訳にならない。と、これは蛇足か・・・

グラフィックに関しては結構バラツキがあります。そもそも不自然なデザインが多かったりもするのですが、ここぞというときは素晴らしい出来なのでまぁ文句はないです。もともとこの原画家のファンですし。

テキストについてですが最初は頭弱い系の痛いしゃべりの中にそういうキャラクターは使わないであろう熟語や言い回し(そうでなくとも日常会話に文語は使わない)が頻繁に出てくることに違和感あって馴染めませんでしたが、話が進むにつれてそうすることの意味が受け入れられまったく気にならなくなりました。 基本的にテンポと不条理さが売りなぶっ飛び系学園ものエロゲーの日常会話でまずまずのクオリティです。

ただ、萌えを狙っているのかどうか知らないですが意味不明な決め言葉だけは最後までダメでした。笑い声が「くきゅ、くきゅ」とかはさすがに・・・このあたりの意味不明な擬音も絡めたテキストのクオリティは突如現れたダークホース、maronの「秋桜の空に」には及ばないところです。まぁこれだけのシナリオの中では些細なことなんですけど。

前述のエンドロールで流れる主題歌は最近のI've(というか高瀬一矢)の曲の中でも主色の出来でしょう、あいかわらず言葉をリズムに乗せるの上手いです。 日本語ってノリがいいのは七五調なので基本的に四の倍数でカウントするポップスに歌詞乗せるのむずかしいんですよね、しかも高速詠唱できないですし・・・英詩ならぶっちゃけるとどこでどう切ってもいいし、相当な早口に詰め込めるので何も考えなくてもとりあえず聞けるように出来るんですけど。って、またグチっちゃいました。とにかく自分で一度知っているメロディに日本語の歌詞と英詩を乗せ比べれば実感できるでしょう、日本語で歌作るのすっげー大変です。泣けてきます・・・

それはともかくこの主題歌、ゲーム内容にとって必然性があるというエロゲーにしては非っ常に珍しいものになっています。(最近無意味なのはエロゲーに限らないが) しかしフルコーラスの間中(三番まである)エンディングが作りこまれていて意味があるものになっているなんて久しぶりに見た気がする。大作の大団円にまさにふさわしい出来。

その他のBGMは基本的に邪魔にならないのでOKでしょう。って、貶してるわけじゃないですよ、もともと感動の嵐、涙腺絞りまくり、みたいなドラマチックなものではないのでこれが正解。

この作曲者、BGM作曲者としての素養は高いと思います。 雰囲気を捉えてメロディに変換するの上手いです。 スクリプト組んだ人間のせいで曲が不適切としか思えないところで使用されている場合もありますが、基本的に自然に場面の雰囲気を補助しています。

また後半で使用される曲の中には単体の音楽としても聞けないこともない曲もあります。 が、いまひとつ微妙。主旋律自体はかなり良いのですがアレンジが・・・ パート毎の分担がいまいちというか隙間の埋め方が良くないというかメロディの散らし方が単純というか。微妙に痒いところに手が届かない。同時発音数の少ない曲では気にならないんですけどね(当然か・・・)

って、スンマセン意味不明ですね。自分で曲考えるときに上手くいかない部分であり、まだ理解できていない手法なのでいまいち上手く説明できません。とにかく微妙なさじ加減でぐっと良くなると思うのですが。

システムは一通り揃ってます。 ただバックログ機能はpage up/downだけではなく、ホイールにも対応してほしかったですが。 ついでに読み返し部分で音声も出せるとさらに良し。 そのほかには特に気になる部分はないです、スキップも軽快ですし、未読/既読判別ありますし。

ここまでなんですけど、コンプリートしていない状態でシナリオについて書いた部分があるので以下ついでに載せときます。




読み物として興味深いのはCool系にしてKoolな眼鏡っ娘、式子のシナリオ。 話している内容に意味はないが、語り合っていることに意味がある、そんな恋人たちの語らいがたのしめる。 日常での中でさえ二人だけの世界丸出しでこうだからピロートークは推して知るべし、実に素敵に無意味な会話が繰り広げられます。 ここで重要なのは無意味だけど下らなくはないということ。

そしてラストで彼女が無意味な会話(彼女はこれを「ポエム」という)の中にちりばめられていたヒントの解答が与えられます。 かなり好き好きがありそうな内容ですがまぎれもなくこれも一つの男女の形であり、自分が知っている範囲ではエロゲーでこれは初の試みだと思われ体験する価値ありです。俺はかなり共感できました。

しかし、説明するには字数がいるし、ネタバレは避けたいし・・・本文からの要約ですが、 「会話や舞台設定に意味があるのではなく、ただ互いの存在を詩として理解しようとした」 これに何かピンと来るものがあればってところでしょうか。 言葉を遊び道具に。弄することは単なる手段、目的はアナタとワタシ。 迂遠で青臭い方法ですがKoolであることには違いない、ていうか俺が好きなんですよこれ。チンコとマンコで語り合うのも良いですけどね。

久しぶりにレビューを書き上げたが・・・しかし、長い! んで書き上げてからよそのレビューも見たのですがいまいち宜しくない評価。やっぱ俺おかしいのかなぁ? ま、一般的な萌野郎じゃないし、最高の抜きメディアは官能小説だと思ってる活字ジャンキーだし、ただでさえTVというメディアが嫌いな上にお笑い番組が反吐が出るほど嫌いでもう何年もTVを見ない生活してるしな。