Last update Oct.13,2001

chromaticity / Tony Macalpine

テクニック面に於いては、スウィープピッキング+タッピングというヘヴィメタル・リードギター史上重要なアイディアを発明し、音使いという点ではクラシックやフュージョンをしっかり学んだバックグラウンドからJ.S.バッハ直系ドマイナー・バロック野郎Yngwieとは異なるメジャーの響きをネオクラシックスタイルの中に導入する(ランディ・ローズもその先駆けであったが完成を見ぬままに他界)というヘヴィメタルリードギター史に多大な功績をあげながらも最近マジで冷遇されている俺の心の師匠Tony Macalpine。 しかも単純にプレイヤーとしてもギターと鍵盤を超一級の腕でこなすという奇跡の存在である。 ヘヴィメタルの主役は間違いなくギターにあるので優れたギタープレイヤーがたくさんいるのは当然のことだがそれに見合うだけの鍵盤の弾き手というものは本当に稀有な存在である。

Macalpineがメタルミュージックとその主役たるメタルギターというものを完全に理解したうえで奏でる鍵盤の旋律はそこらの単なる鍵盤弾きとはまったく次元の違うもので、キーボード演奏のテクニックだけならMacalpineを超えてるっぽい(だって俺門外漢だし)ミュージシャンはヴィタリ・クープリやイェンス・ヨハンソンなど数人いると思うのだがヘヴィメタルリードとしての鍵盤プレイという意味ではセンス的にMacalpineに及ばないのが実情だ。 ネオクラシック最高峰のギタープレイヤーであると同時にDream Theaterに加入したジョーダン・ルーデスが現れるまではメタル鍵盤弾きとしても至上の地位を占めていたのである。その底知れぬ音楽的才能はまさに現代の奇跡。(ていうか実際は誰にも負けない努力なんだろうけど)どれか一つの楽器ですらワールドクラスの名声を得るのは並大抵のことではないのに二つの楽器で世界最高峰の実力を誇るのである。

と彼自身の紹介はこのくらいにしておいてchromaticityの話しに移りましょうか。 2nd以降もろなネオクラシックスタイルからの脱却を図った結果、初期ネオクラシックスタイルに邪魔にならない程度のフュージョン要素を織り交ぜた中期の傑作アルバム:Premonition以外はその実力に見合ったアルバムを発表できていなかった彼ですがその新たな音楽性獲得のための放浪も一段落ついたようでファンとしては一安心です。 未だ初期ネオクラシック時代の煌く華麗な旋律をプログレッシブなメタルの中に組み込むことに完全な成功はみていないですけど初めてそれを採った前作、master of paradiseからは飛躍的な成長が見られ、Macalpineが持つ「高度な音楽理論とテクニックを駆使しながらあくまでも奏でるメロディは華麗」という彼の持ち味がソロパートだけではなく曲全体に見出せる久々の良作となっています。彼独自のメロディーを変拍子に乗せることに完全に成功しているとは言い難いのでメロディとしてつまらないパートも見受けられますがちゃんとハマったときには凄いことになっています。 Burrnじゃ何も音楽わかっていないアホ前田が相変わらずいい加減なことぶっこいてますが音楽のどこを聞いているんでしょうかって感じですわい。 しかしどうしてBurrnのレビューではMacalpineにいつも前田が充てられるのでしょうか? まだしも藤木氏のほうがマシだと思うのですが、まぁBurrnは平野氏が抜けてからは終わっているのですけど。

それはともかく、Tr09 : eye of the soul は驚愕です。 ボリューム奏法とフィードバックをによるメロウな浮遊感を持った静であるイントロのなかに切り込んでくるスリリングな刻みとそれを受けて始まるプログレッシブなリズムセクション、実に刺激的です。 リードギターはその後メロウな雰囲気をさらに増したツインリードになりきっとスリリングになるであろう次章への予兆が高まったところに低音で轟きわたるピアノめちゃカッコいいです。 非常に激しくアクセントの位置が入れ替わる曲で情景に応じてめまぐるしくリズムパターンが変わります。その上で鍵盤とギターを持ち替えて縦横無尽に駆け巡るマカパイン節、絶品ですわ。おまけにベースも主旋律の合間を縫って細かい刻みでスリリングなメロディを弾きまくってます。 このぱっと聞きには変拍子だけど実際は凝った四拍子というのが一番凄いですわ。 並みのセンスじゃ出来ませんって。 メロディとして成立していない安易な変・拍子に頼る似非プログレバンドにつめの垢でも煎じて飲ましてやりたいところです。 しっかしこの曲、ベースがいい仕事してるなぁ。

しかもこのソロはどうですか? スウィープが飛び道具としてではなく一連のメロディの流れの中に彼以外には成し得ない領域で非常に巧みに取り込まれているのでぱっと聞きにはスウィープで弾いているとは気付きません・・・ 音使いも相変わらずバッキングに対して音階的にもリズム的にも凄いところを縫ってくるのでわたし如きではもう転調してるのかモードなのかさっぱり把握できません・・・それでいて決してトーナリティを失わずにどこまでも華麗で流麗、なんなんでしょうこの人??恐ろしすぎです。いつかはこの境地に辿り着きたいものですが。

そんな感じにこれ一曲でお釣りが来るアルバムです。 これを聞いて退屈とかいうBurrnの前田、なんなんでしょう・・・ オマエ絶対にバッキングギターとベース聞こえてねぇし小節線も見失ってるだろ・・・ マジでどこに何を聞いてそう判断したのか純粋に興味がある。 確かに相変わらずミックスはお世辞にもいいとはいえないのでソロ弾いてるときにはなおさらバッキング聞こえ辛いけどさぁ。 あと今までとは違って訳分らん音源の音だけではなく要所でピアノの音を採用しているところも好感度高いです。

と、いちいち書いていたら切りがないのでこのくらいにしますが他にも素晴らしい音世界が満載ですよ。 最近Macalpineをお見限りな人も是非聞いてみてください。 未体験な人は2nd : maximum securityからどうぞ。 最近はCABとPlanet Xで精力的にコラボレーションしているのでそこでの成長を取り入れてこの音楽性をさらに推し進めて高度なものにしてくるであろう次のアルバムがいまから楽しみでしょうがありません。 次こそは本当に凄いアルバムを作ってくれるに違いない! そう予感させる力作です。 って、このレビュー妙に気合入ってんな、我ながら・・・ま、なんせ俺にプレイスタイルの啓示を与えてくれた偉大な心の師匠だからな。