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冷蔵庫

猫目石


冷蔵庫の中身を全部だして

電源を切って

拭いていると

『御遺体をきれいにさせて頂きます』

そんな言葉が浮かんできた


しょうゆのしみ

こぼれたぎゅうにゅう

こびりついたみどりいろのかび

ねばねばしたものやどろどろしたもの


冷たさを失い

気温に侵食されていく様を

僕は掌に感じながらも冷蔵庫を一心に拭いている


ひとはしぬとつめたくなるのに

れいぞうこはぬくもってゆくのです。


きれいになった冷蔵庫に電源をいれて

冷えるまでの待ち時間

僕は冷蔵庫の扉に額をつけて

短いお祈りをする



作者紹介/猫目石。息をするように、詩を書くことは必然で当たり前で無意識で、時として苦しい。作者はそんな猫目石です。