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乾いた言葉

夢風


春風が吹く晴れた昼過ぎ

時計を見るともうすぐ約束の時

人通りが多いから 君を見つける自信がないから

僕は電話ボックスの横に佇み 君の来る方向を見ている

喋るのが大好きで せっかく頼んだケーキセットも

暖かなコーヒーも冷めてしまうから はやく飲んだら?

そんな会話がいつものはじまりだったね

いつしか何回目の夏を迎えて たくさんのすれ違いを経験して

別れの時を迎える

風景はそんなに変わっていないのに 見つめる方向がずれていて

永遠を信じない僕達は その時を秒読みしていた

最後の言葉が ない別れ

最後の会話が ない別れ

便利な世の中は 僕達に便利な別れを演出してくれる

プッシュ一押しで はい終了

いままでの悲しみも切なさも悔しさも 君はプッシュ一押し

便利だね 削除キィーさえ押せばいい 

涙の跡さえ 乾かないのに 

うそつきの言葉だけが 胸の中のハードディスクに記憶される

消しゴムが 見つかるまで

新しいソフトを 見つけるまで それも 乾く言葉だね