理科室
猫目石
水色の教科書に描かれた
逆さまのまぼろし
三角翡翠のプリズム
円形琥珀の羽虫の孤独
反射した水道の蛇口に映る
歪んだ世界を覗き見る
水滴が音を立てて
陶製のシンクに落ちるので
僕の鼓膜は微かに震えた
塩素のにおいがつんとした
プールあがりのような気がした
ここは理科室なので
遺伝と化石が波音をたてて
そこらじゅう転がっている
水槽ごしに
ヤモリの心臓が動いているのがわかる
水色の教科書を丸めて
僕は世界を覗き込む