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縦の時間

猫目石


時計の数字が変わる瞬間を不意に見た私は

数字と数字の間にすとんとはまり込んでしまって

出ようにも出られず

切り刻まれた時間の裂け目の赤い色や

柔らかな軟骨をぼんやりと手で押してみたりしていた

時間の流れに出来るだけ細かい単位や名前をつけて

安心していたから罰が当たったんだ


砂時計のように不正確に

重力に従う縦方向の時間の流れ

あの砂の一粒は私

重力に飲まれて上から下へ下から上へ

繰り返すのは誰

ひっくり返してくれる人の手は

疲れて腱鞘炎になっていて

いつも湿布臭かった


傷口を覆うように私は時間の狭間に取り込まれて

時計の数字はどんどん次へと進んで行って

私はここに取り残されて

日めくりのカレンダーが焼け落ちるのを見ているけれど


縦方向の時間の流れ

重力だけは感じています



作者紹介/猫目石。したたかな感性でありたい今日このごろ。冬はきんきん空気が澄むので、いっぱい作品創ります。