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祝いの詩

かみすぎしょうへい


あたしは見つけた

僕は見つけた

あたしは眠れる森の美女ではない

僕は携帯電話の赤井秀和ではない

大阪の 南の森の中で

出会った 知り合った

君達が この日 この時間

結婚する

朝早く 誰もいない 事務所の中で

ひそかに約束していた 契りを結んでいた

君達が 朝もやの中から 浮かび上がる

ひとすじの 赤い糸が 見知らぬ天使の手によって

綱引きをさせられたのかもしれない

だが 赤い綱は

太くなったり 細くなったり

ガラスの糸になったり ピアノ線になったり
するかもしれない

君達が酒を飲むのが好きだとか

君達が一緒に陽気になれるとか

夫婦になる 契りを結ぶ

きっかけになり得るものは いくらでもある

知っていて欲しい

でも 夫婦の絆になり得るものは

そんなに多くあるものではない

君達は 共通項が多くあると思っているかもしれない

趣味が同じだとか

気が合うとか

話が合うとか

確かに君達は 日本で生まれた

でも 君達は 広い宇宙で 知り合った

火星人と 土星人であるかもしれない

味噌汁の味が違うからと

整頓の仕方が違うからと

些細なことから

争いが始まるかもしれない

男である 女である

九州である 関西である

違う性別で

異なる文化で

違う環境で育った

君達の間にフリクションが起きて当然なのだ

だからこそ 君達は

この日から 愛し合わなければならない

お互いの違いを認めよう

同意するだけでは足りない

好きになるだけでは足りない

お互いの違いを受け入れよう

そして 心を摺り寄せよう

君達の家庭を育てるために

男は仕事に夢中になるかもしれない

女は子育てに懸命になるかもしれない

そしてそれぞれの人生が始まるかもしれない

でも 君達は 誓った 約束した

ともに生きていこうと

ともに歩んでいこうと

忘れないで欲しい

僕達は 信じるであろう

愛し合うことを

二十一世紀の未来に向かって

君達のユニークな家庭が花開くことを

僕達は 祝福するであろう

この日の旅立ちを



作者紹介/かみすぎしょうへい。1957年大阪市生まれ。高校時代から詩を作っています。1997年に自作の詩集「言葉を刻む」を新風舎から出版しました。よろしくお願いします。